健一の告白
いよいよ明日が運動会という土曜日、学校は午前中準備に追われていた。
万国の旗を飾ったり、来賓のテントを建てたり。
ある者はグラウンドのラインを引いたり。
全ての準備が終わった後で担任の松本は生徒を教室に集めた。
『いよいよ明日だね。
天気もいいみたいだし、思い切ってやろう。
皆も分かっている通り、一番大切なのは自分の出来る限りのことをすることだよ!
自分の力を出し切ることだよ!
風邪を引いたりして体調を崩さないように、今日は早め帰って寝なさい』
健一は家に帰って夕飯を済ますと風呂に入って、早めに寝ることにした。
しかし布団に入っても、明日のことを考えると目が冴えてさっぱり睡魔が襲って来ない。
思い切って布団を抜け出すと、裏庭からダイを連れて散歩に出かけた。
健一の足は、なんとなく純の家に向かっていた。
純の家に着くと2階の純の部屋の明かりが点いていた。
健一は暫くの間、じっと2階の明かりを見つめていたが意を決したように叫んだ。
『じゅん起きてる?
起きてたら、そのままでいいから聞いていて。』
純は起きていた。
『じゅん、明日頑張ろうね!
じゅんは無理して走らなくていいから。
じゅんの分は僕が走るから!
じゅんが歩いてじゅんのことを悪く言う奴がいたら、僕が許さないよ!
僕決めたんだ、僕がじゅんの足になるって。
じゅんにそれだけ言いたくて。
僕、じゅんのことが…ううん、明日お昼一緒に食べようね。
みかんも栗もバナナも持って行くね。
あはは、僕、八百屋だからね。』
そう叫ぶと、健一はダイと一緒に帰って行った。
純は2階の窓から健一の後ろ姿を見えなくなるまでじっと見ていた。
布団の中では、祖父の剛が泣いていた。
真由美も泣いていた。
誠はじっと天井を見つめていた。




