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長野…純の出会い

こうして立花家は、8月の初めに慌ただしく長野に引っ越すことになった。


長野の住まいは林校長が手配してくれてあり、決して新しいとは言えないが、祖父の剛を含め家族4人が暮らすには充分な広さであった。


勿論、奇跡的に助かったランも一緒である。


長野に越した日の夕方、真由美は純とランを連れて、近くの八百屋に出掛けた。


近所に大きなスーパーも無く、これからは何かと世話になりそうなので挨拶をしたかったこともあった。


真由美が引っ越しの挨拶をすると八百屋長谷川の奥さんあや子は


『あんた、立花さんが引っ越しのご挨拶に見えたよ』


と奥に向かって声をかけた。

中からいかにも人の良さそうな主人の保が現れ


『わざわざ気を使わないでくだせい。

商売柄言葉遣いは悪いが、困ったことがあったら何でも気兼ねなく相談してくだせい』


そこで真由美の後ろに隠れるように立っている純に気づき、


『あ、お嬢さんは何年生だい?』


黙って下を向いてる純に代わって真由美が


『六年生なんです。

早く新しいお友達が出来るといいんですけど…』


すると八百屋の主人保とあや子が声を揃えて


『六年生!』


と言って顔を見合わせ笑った。


あや子が二階に向かって


『健一、ちょっとちょっと!』


と叫んだ。


『いや実は家の息子が六年生なんでさあ』


と保。

『なんだよう』


と言いながら、階段を降りて健一が現れた。


『なんだようじゃねえよ、こちらのお嬢さんが引っ越して来られて六年生なんだってよ』


健一は真由美の横に隠れるように立っている純を見た。

その瞬間、健一は息を飲んで固まってしまった。


最近東京の女子高生の間で『チョー』という言葉が流行っているらしいが絶対こういう時に使うのだろうと健一は思った。


『チョー可愛い!』


『健一お前らしくない、早く挨拶せんか』


『本当にがさつな奴で、この辺のガキ大将みたいなもんだから。

健一じゅんちゃんのことちゃんと面倒みてあげんだぞ』


『ああ、分かってるよ』


ようやくいつもの健一に戻って


『俺健一。

じゅんかぁ、よろしくね。

お、犬もいるのか!

家にも犬がいるんだよ。

ちょっと待ってて』

と言って家の裏に駆けて行った。


『健一お前、なにがじゅんだ、じゅんちゃんと呼べじゅんちゃんと』


八百屋の主人保は申し訳なさそうに真由美に頭を下げた。


ほどなく健一は、一匹の犬を引き連れて戻ってきた。


雑種とおぼしき茶色の犬がランに戯れている。


『ダイって言うんだ』


『ダイ…』


『八百屋だから、だいこんのだい』


思わず純の目元が緩んだ。

真由美は純の柔和な顔を見たのはいつ以来か思いを巡らしていた。

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