ざまぁの後の、罪滅ぼし。
※ギャグがかなり強いです。
君は「ざまぁ」という言葉が好きだろうか。
――俺は嫌いだ。何故なら、今まで散々言われてきた言葉だから。
「リサ、君はもうパーティを抜けろ。どうやら他国のパーティから執拗に勧誘され気を良くしてるらしいじゃないか!どおりで最近仕事が雑なわけだ。」
これは、俺がパーティメンバーに放った言葉。
「リサ」は、ブルネットの短髪を掻き分けながら「……うん、分かった。ここを出ていく。」とだけ答える。
「……ん?いやいやいや……それでいいのか!?よく考えろ!国が認めた勇者パーティなんだぞ!?しかもギルド貢献度2位の!」
別に引き止めたいわけではなかったが、俺はこの女っ気のない幼なじみの未来を案じていた。
わざわざ安定した収入を捨てるのはリスキーだ。今「すみません、これから気を付けます!」と言って戻って来るのが彼女にとって最善の選択に思う。
「……兄様が要らないと言うのなら……僕は、ここにいられない。」
そう告げて、リサは身を翻した。自然と右手がその背中に伸びたが……出ていけと言った手前、なんと声をかけたらいいか分からない。
そもそも体が先に動いてしまったが、あの時俺は、リサに何と言いたかったんだろう?
「後悔するぞ」、なのか「せいせいした」なのか――
――
「……ああ、くそ……またリサのこと思い出しちまった。」
――魔法国家「ウラ・ギラレッタ」。俺はこの国で魔王討伐の使命を与えられた勇者である。
今日は国王陛下の号令により、この国でたった3名しかいない勇者たちが一堂に会する日だ。
俺は自分が持っている中で1番上等な洋服を纏い城に赴く。
ここに来るのも何年ぶりになるだろうか。長い廊下を抜けると、煌めく大きなシャンデリアが最初に目に入る。
そして少し目線を下に落とすと、金色の玉座に負けない程の威厳を放つ男の姿。
彼こそが我が国の国王、「ジークフリート」陛下である。
「勇者アッシュ、馳せ参じました。」
陛下の前に跪くと、彼は低い声で「ご苦労」と労いの言葉をかけてくれた。どうやら俺が一番乗りのようだ。
程なくして、「お父様!勇者シュルク、馳せ参じました!」と声がして、金細工のような髪と赤いマントを靡かせながら、高身長の美形がこちらに歩いてくる。
彼は勇者「シュルク」……シュルク殿下と言った方がいいか。経緯はよく知らないが、第3王子という身分にも関わらず勇者の称号を持っている方だ。
続いて謁見の間にやってきたのは、ガーネットのような赤い髪の少女「勇者アン」。
彼女は聖堂服に身を包み、小さな体に似つかわしくない大きな杖を携えている。
アンは「……馳せ参じました。」と挨拶をしてから、凛とした表情で歩いてくると国王陛下の前に跪いた。
流石は選ばれし勇者たち、若くして貫禄があり、見ただけで強者の風格を感じさせる。
「……我が国が認める勇者諸君、この度はお集まりいただき感謝する。本日は貴殿らに伝えたいことがあって号令をかけた。……」
陛下はそこまで口にすると、何かを言い淀むように黙り込んでしまう。そして重そうに口を開くと――
「君たちさあ……全員パーティから闇堕ちした人出してるって、マジ?」そう尋ねてきた。
俺を含め、勇者たちの足元に汗が滴る。
他2人のことはよく知らないが、俺がパーティを追放したリサは、今や魔王軍幹部となっていた。
この2人が汗ダラダラで何も言わない所を見ると、どうやら図星らしい。
(良かったー……俺だけじゃないんだ。)
「アッシュ君……」
「えっ……えっ!?」
俺は突然名指しされ、動揺の声を漏らす。
陛下は瞼にくっつきそうな程に眉を下げ「パーティメンバーのタレコミによると、他国のイケメン勇者にリサちゃんがスカウトされてるの見て『やる気ないなら辞めていいんだよ〜?』みたいな詰め方したらリサちゃん闇堕ちしちゃったって、ほんと……?」と質問してきた。
「…………はい。」
俺のやらかしを耳にしたことで、シュルク殿下とアンは「こいつのやらかしよりはマシだわ」と言わんばかりに小声で俺をバカにし始める。
「え、マジ?ダサすぎー……王宮で流行ってる小説で見たことあるわ、追放ものに出てくる無能勇者じゃね?」
「しかもパーティメンバーにチクられてるのがより不憫ですよね、人望なかったのかしら……」
(ダサいって言われた……!こいつらっ……!いつか切る!絶対切る!)
「アンちゃん……」
シュルク殿下と小声で盛り上がっていたアンは、名指しされてから体をビクリと揺らし「はい!?」と大きな声をあげた。
「君のパーティに関しては事情聞いてもいまいち分からなかったんだけど……なんか、僧侶の子が『ここにセクシーなお姉さんがいない』って言い出して闇堕ちしたってほんと?ていうかそんなことある??」
陛下の問いに、アンは俯きながら「……はい……いやその、その通り過ぎて私もそれ以上説明できません……」と答える。
「えっ?ちょっとマジー!?自分もチクられてんじゃん!自分もチクられてんじゃん!?人のこと言えなくないー!?」
「しかも……ふふ、そんな理由で抜けられてんのかよ、人望なかったのかしらー!?」
シュルク殿下と俺が囃し立てると、アンは真っ赤な顔でこちらを睨んでいた。
最後に「シュルク……?」陛下が不安そうに名前を呼ぶと、シュルク殿下は静かに「はい、何でしょうかお父様。」と返事をする。
「なんかさ……同じパーティにいた婚約者のレベッカちゃんを一方的に婚約破棄したんだって?私何も聞いてないんだけど……そのせいでレベッカちゃん闇堕ちしたってほんと……?」
またも陛下が問いかけると、シュルクは「…………左様でございます。」とだけ返した。
「あっれー!?もしかして1番やばくないですかぁこの人!人のこと煽っといてそれはないですよねぇー!?」
「お前がいっちゃんやらかしてんじゃねーかボケ!!国王通さず婚約破棄とか小説にも出てこないアホ王子ぶりだな!?」
鬼の首を取ったかのごとく俺とアンがシュルクを煽り倒すと、陛下はこの世の終わりを見たような悲しげな顔で「君たち本当に勇者なんだよね……?」と呟く。
そして咳払い1つしてから「……まあ、皆よく正直に答えてくれた!これから貴殿らに国王ジークフリートが命を下す。『闇堕ちしたパーティメンバーを奪還してくること!』」と大きな声で告げる。
「なっ……はは、冗談よしてくださいお父様!!レベッカはそれはそれは恐ろしい女でして、再度相まみえるなど……!」
縋るシュルク殿下に、陛下は冷たく「お前の事情は知らん、闇堕ちした者……略して闇人が勇者パーティから出まくったせいで私めちゃくちゃ国民から嫌われとるんだ、責任取れ。」と切り捨てる。
「闇人……」
シュルク殿下はそのネーミングに意見したそうにしていたが、陛下の言葉が正論すぎて何も言い返せないようだった。
「で、では早速、パーティメンバーと共に僧侶を取り返して参ります!」とアンが意欲を見せると、陛下は眉をひそめ「それがね、シュルクとアッシュ君はパーティメンバー全員抜けちゃって1人なんだ。可哀想だろ?」と言って俺たちを見る。
「えっ……ああ……はは、確かにまあ。」アンは震えた声で言いながらにやけた口元を手のひらで覆った。陛下は余裕そうな態度のアンに「そうだよね、じゃあこの3人でパーティ組んでよ。全員連れ帰るまで帰ってこないでね。」と言い捨てる。
「……え?」
それまでにやけていたアンの顔が青ざめ、次第に俺とシュルクの口角が上がった。
「アンちゃーん、なんか余裕そうにしてたけど大丈夫ぅ〜?なんか『こいつら捨てられてやんの!』みたいな顔してたよねぇ?」と言いながらシュルクがアンの肩に手を置き、
「楽しい楽しい旅の始まりだなぁ……?俺たちとパーティ組めて幸せかい?」と俺が嫌味を吐く。
アンは頭を抱え、「私も闇堕ちしようかしら」と力なく呟いたのだった。
この小説は以前書いた短編をもとに再編成した連載です。
明るい話が書きたくなった為執筆しました。




