P11:アーティファクト【03】
『――えっ、こちらが見えてるの?』
「アリア、コクピット、フセゲヨ!」
オリハはカミナの前に出ると、両手のビームシールドを重ねて粒子ビームを受けた。しかし、完全には受けきれず眩い粒子の塊がカミナ機を襲う。しかし、シールドから溢れた粒子をアリアは右手を伸ばしてピンポイントシールドを張ってなんとか受け止めた。
「うひーーっ! ヤバかったー」
『――あ、アリアちゃん……ありがと。今のは……ダメかと思った』
カミナの声から毒気が抜かれて弱気な声色に変わっていた。
「カミナ、イドウスルゾ」
「カミナさん、行けますか?」
二人が声を掛けると、諦めたのか珍しくしおらしい態度に変わっていた。
『――ゴメン。当たったらヤバいから先行させてもらう』
バーニアの壊れた脚部でもどうやら歩行はできるらしい。巨岩とオリハのシールドを使って後退を始める。
そこに二発目の粒子ビームが襲い掛かった。
「またっ!」
今度はアリアが右手を前に出したのでピンポイントバリアに真っ先に当たった。しかし粒子ビームはバラバラになって二機の周辺に降り注いだ。
◆
カミナ機にも粒子は容赦無く降り注いでいる。微小の粒子でも二十ミリ弾よりダメージは大きいようで、カミナ機の警報ランプは瞬く間に赤色へ変わっていった。
「連射出来るのか? 凄い欲しい……けど、無理だ。アリア、オリハ、どうする?」
『――ねぇ、オリハ、どうするの?』
『――ムー……』
カミナとアリアがオリハに問い掛けるが唸るばかりだ。ここはAIに任せるしかない、と応答を待っていると謎なことを言い始めた。
『――カミナ! イッパツ、ウテルカ?』
「何を? 何処に?」
大慌てで尋ねるとオリハから無線越しでも分かる焦った機械音声が聞こえてきた。
『――リュウシビーム! テキニ、ムケテ!』
「アタシのは近距離専用なんだよ! 意味あるのか?」
『――イイカラ、ウテ!』
目眩しに使うとしても無意味に思えたが、悩む時間はなかった。
「えーい、分かったよ! 撃つぜ、ほらよっ!」
カミナはサッと横にズレると右腕を前に伸ばす。砲身に粒子が生成され始めたが刹那に目の前で爆発が起こったように粒子ビームが噴き出た。集束しないので射程は百メートルほど。あたかも散弾のように粒子がばら撒かれるだけで崖上迄は殆ど届かない筈だった。
『――アイヨー!』
その粒子を瞬時にシールドの集束機を使って糸のように束ねるオリハ。方向まで調整して崖上にビームを流した。途中で粒子は散らばり始めたが、近くの敵BM数体を巻き込みながらターゲットのBMに直撃。巻き込まれた五、六体の敵BMがまとめて爆散した。
『――ヨシ、ヤバイヤツ、タオシタヨ』
『――すっご〜い! カミナさん、今のうちに撤退しましょう!』
「…………はっ、私の集束機……は、もう無いか……分かった。撤退しよう」
カミナはあまりの出来事に呆然としていたが、無線から聞こえるオリハとアリアの音声に我に帰った。通常弾は未だ降り注いでいたので、オリハとクーガーの助けを借りて撤退を始めた。
もし、他にアーティファクト持ちが居たら、流石に対応しきれない、ということで急ぎ基地への帰投を決めた。
◆◆ 基地への帰り道
自動運転させながらコクピットでやけ酒をあおるカミナ。
「うぶっ……しかし、だ。オリハ、アンタ凄いな。私のビームまで束ねて敵にぶち当てるなんて」
『――マーネー。マァ、ソノウチ、アーティファクトモ、テニハイルヨ』
『――そうですよ。またチャンスありますよ』
オリハとアリアのカミナを慰める声が無線から聴こえる。ブンブンと顔を左右に振ると、両手で自らの両頬を平手打ちした。
「ありがとう。二人は命の恩人だ。これからもどんな敵でも一緒に戦うよ」
ここでロイドとクーガーが割り込んできた。
『――俺はアーティファクト持ちと戦うなんて二度とゴメンだ!』
『――ははは、ロイド、お前と意見が合うのは珍しいな。俺も二度と会いたくないぜ!』
「そうかい? でもあんたら二人も一緒に居ると色々とヤバいことが多そうだ! 今後ともヨロシクな」
◇
アリアは皆で無事に帰れたので心底安心していた。オリハも結局頑張ってくれた。コクピットの中でニコニコ笑っている。
「んふふ、こんなことが何度も起きたら困りますよ!」
『『――全くだ!』』
ロイドとクーガーが声を合わせた。
◇◇◇ ワイルド・スカンク基地のハンガー
ハンガーから降りるアリア。背後からいつものセリフが聞こえてきた。
「ゴホウビ……」
(そりゃ、忘れてないか……)
柔らかな触手の感触を思い出すと首筋がぽっと熱くなってしまう。慌てて照れ隠しに強気に返事を返す。
「もー、せめて夜まで我慢しなさい! 午後からまずは洗ってあげるから、少し休ませてよね」
「ハイーー。ゴホウビ、ワスレナイデネー!」
BMの頭部を睨みつけると、両目のようなメインセンサーが赤く瞬いた。何となくいやらしい目つきで見られているように思えたので舌をべーっと出して威嚇する。
(しかし、このやり取り、周りからはどう思われてるのかね……)
時折不安に思う。まさかオリハにエロいことされてるとは思われていない筈、そう思い直して一人頷く。一人背伸びをしながら部屋に戻ろうと歩いていると背後から声を掛けられた。
「またご褒美か。お前ら仲良いな」
突然のナッシュにびっくりのアリア。
「は、はい! 健全ですよ、プラトニックですよ!」
「なんだそりゃ? 今回はすまんな。正直ああも状況が悪くなるのは予想出来なかった」
「あっ……はい。びっくりしました」
取り敢えずバレてないことが分かり安心。隠れてほっと一息。ナッシュの表情を見ると心底申し訳なさそう。
(ナッシュさん大変ね。あらあら、背後からロイドさんとクーガーさんが大股で近づいてくるわよ)
右腕の損害賠償だ、と声高に息巻いていた二人。正直アリアはロイドが悪いと思っていたがアーティファクト持ちが相手となると相場金額が一桁違うらしい。
「頑張ってくださいね……」
「ん、あぁ。アリアも――」
「――副団ちょー、今回の報酬について意見がありますけどー」
「……面倒な時だけ役職で呼びやがって。修理費はこちら持ちでどうだ?」
(んふふ、面倒ごと担当は伊達じゃないわね)
お金の話は大人同士でたっぷりしてもらいましょう。
「では、お疲れ様でーす」
そそくさと部屋に戻ることにした。
◇◇ 二十分後
PXでサンドイッチを買って部屋に持ち込む。心身共にヘトヘトだ。食堂で食べる気力がないアリアはシャワーだけ浴びると一旦ベッドに倒れ込むことにした。
(今、十二時半……整備二時間は掛かるから……えっと二時くらいに……ハンガーへ……行けば……)
ベッドに倒れ込むとピクリとも動かない。すぐに寝息が聞こえ始めたが、その瞬間。
「アリアちゃーん! 今日はごめんねー。一緒にランチ食べましょー!」
「は、はひーっ!」
ここが何処なのか判断がつかないままに取り敢えず返事だけする。辺りを見回すともちろん自分の部屋だ。一旦そのままの体勢でベッドに倒れ込むと、数秒でまた寝息が聞こえてきた。
「あーりあちゃーん!」
「ふがっ!」
寝入った瞬間に大声が聞こえるのでまた起きてしまった。ここで眠気より安眠を妨害された怒りが優った。
「はーーい!」
大股でドスドス歩いて扉を開ける。そこには既に出来上がっているカミナがいた。ショートパンツにタンクトップ姿。迫力のお胸がタンクトップから漏れ出しそう。
「アリアちゃーん、これお詫びよー!」
真っ赤な顔のカミナはお詫びと称してお酒やら食事を沢山持ってきていた。
(これは……長居しそうだ)
流石に今日は疲れたから断ることにきめた。
「カミナさん、今日はお疲れ様でした。今日はあまりに疲れたから少し寝させて――」
「――はい、お邪魔しまーす」
しかし強引に入ってきた。
「ちょっとちょっと、ホントに疲れて――」
「――少しだけだってー。つれないなぁ……」
(仕方ない。少しだけ付き合うか……)
ため息混じりに机の上に置いてある雑誌を床に片付けた。
「少しだけですよ」
「ありがとね!」
返事は元気で素直な感じだ。持ってきた酒とおつまみを机にドサドサと乱雑に置くとベッドに腰掛けた。
(まぁ、カミナさんもショックだったのかな? 少し話聞いてあげるか)
こういう女同士のパーティーは嫌いじゃない。特に恋愛トークが出来れば最高に楽しい。酔っ払ったカミナに大人の恋愛について教えて貰おう、と横に腰掛けた。
◇◇ アリアの自室で一時間後
アルコールが進むと妙にカミナは距離を詰めてきていた。今はベッドに二人で腰掛けて飲み物を飲んでいるが何故かピタッとくっついてくる。偶に肩を組んでくるし、酒場に居るタチの悪い泥酔客みたいだ。
「カミナさん、酔っ払い過ぎ。水持ってきますね」
距離を空けるため席を立とうとすると、素早く手を握ってきた。カミナは年上だし、筋肉凄いので圧が凄い。それなのに今は目が逝っちゃってるし、息も荒くなってきた。
「はぁはぁ、アリアちゃん」
「ち……ちょっ……」
同級生と戯れ合うのとは迫力が違う。というよりどちらかというとオリハに迫られている時を思い出される。何か貞操の危機を感じるので、まずは宥めながら距離を取ることに全力だ。
「カミナさん、どう――」
「――アリアちゃん、お礼させてー」
「へっ?」
しかし離れようとしても握った手を引っ張られるだけで、またベッドに座ってしまうアリア。そのままもう片方の手で肩を抑えられてベッドに押し倒されてしまう。
「か、かカミナさーん?」
アリアの上で舌舐めずりするカミナ。シャワーを浴びたばかりなのでタオル地のワンピースを着ているだけだ。残念ながらすぐに寝る予定だったので下着の上はつけておらず防御力はかなり低い。
案の定、裾から手を入れて胸を触ってきた。
「カミナさん! やめてください!」
ここはしっかり強めに言ったが、なんと余計に楽しそうな顔になってしまった。
「大丈夫。お姉さん、思ったより上手なのよ!」
どうやらLな経験も豊富らしい。
◇
「助けてー」
隙を見て何とか脱出したアリア。助けを求めるにも殆どのパイロット達が警護任務に出ているので誰も人を見かけない。PXの方に行こうにも、何故か人通りのない倉庫やハンガーに追いやられてしまう。
「アリアちゃん、お礼したげるわよー」
「ひーーっ! 助けてー!」
「沢山気持ちよくしてあげるからー。うふふ、酔うと可愛い女の子にくっつきたくなるのよー」
「聞いてませーん!」
必死に逃げるが何故か先回りされてしまう。流石はこの傭兵団の中でも一、二を争うエースパイロット。戦略で負けている。
「ついでに集束機、頂戴よ」
「ひっ!」
隠れて様子を物陰から伺っていたが、いきなり背後からの小声でびっくりだ。振り向いた瞬間にワンピースの両脇に手を入れられ両胸の先を的確に摘まれた。
どうやら戦術でも負けている。
「ぎゃーーぁ! 変なとこ触らないで下さい!」
遂にハンガーに追い詰められるアリア。最後の手段としてコクピットの中に逃げ込むが、なんとカミナも強引に入って来てしまう。
「ひぇーー!」
「ほーら、もう逃さないよ〜」
「ナンダ、ナンダ?」
オリハは二人が急に現れて状況が掴めない。座席に座るアリアに覆い被さりながら器用にキャノピーを閉めた。カミナは両手をワキワキさせて何処から触るか品定め中。
「だ、ダメですよ、女の子同士なんて不健全――」
「――い・い・の。うふふ」
安全な場所に逃げ込んだつもりが反対に追い詰められてしまったアリアは恐れ慄くしかない。ここで何でも言うことを聞く相棒がいることに気づいた。
「オリハ……た、助けて!」
「エッ? モシカシテ、フタリデ、イイコトスルノ?」
「そうよ、オリハ。ちょっと静かに見てなさいね! アリア……素敵な身体。いっぱい気持ちよくしてあげる」
「アッ、ハイーー!」
「おまっ……ちょっ……裏切……」
嬉しそうなオリハ。援護要請は失敗だ。
(後でコ○ス!)
絶望感を味わう間も無く丁寧な攻撃が開始された。
「いや、や、やめて、カミナ! あっ、触り方が優しい……んっ、ダメっ! オリハも見るなー!」
「コレハ、コレデ……」
いつも痴態を見られているとはいえ、他の人に悪戯されるところを観察されるのは流石に恥ずい。
「やめてーー!」
♡♡♡
「はぁはぁ……オ……オリハ……助けて……」
「ほら、もっと気持ち良くしてオリハなんか忘れさせちゃうよ! そんでもって集束機を渡しな!」
「ムッムッ、ソウイウノ、ヨクナイ」
マジックハンドを器用に使って裸のままのカミナをコクピットからポイっと放り出す。服もポイポイ投げつけると、パタンとキャノピーを閉じた。素っ裸で突然現れた大女に整備員はギョッとしている。
「ちぇっ、やりすぎたか……」
パンツも履かずに捨てられた服をかき集めると、頭を掻きながら自分の部屋に戻っていった。そんな姿を全天周囲モニター越しに見ていたアリア。ほっとため息。
「スゴク、サンコウニ、ナッタヨ。デハ、ツギ、イイヨネ?」
興奮冷めやらぬオリハ。マジックハンドと触手を出してアリアの前でワキワキさせた。
「ネッ、イイヨネ?」
「ハァハァ……ジェンダー的にLは認める……でも、この現実は要らないわ……」
「ナニイッテンノ?」
慌てて胸までたくし上げられたワンピースを元に戻すとコンソールの中でちびキャラがガッカリしていた。それを見た瞬間に悲しくなってきたアリア。
「何故助けなかったの?」
「エロイノ、ミタイシ〜」
(コレが現実……結局助けてくれたのも身体目当てなの?)
「アリア、コンドハ、コッチノバン――」
「――判決、ご褒美は当分お預け!」
「ンッ? エェーーーーッ!」
Sector:03 End
――アリアと仲直り出来たがお預けは続く。オリハ血涙
――スーパーマシンのオリハ、とはいえ精神年齢は明らかに思春期の中学生だ
――イケ、アリア。百合くらい気にするな。さぁ、オリハを手玉に取るんだ
二人の絆の回数:三十二回
※土日は更新お休みです




