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ドラゴンと卵粥

「ドラゴンが助けを呼ぶなんて、聞いた試しがないんだがな」

「でも助けを求めてますよね」

「うむ……」


 難しい顔で、フィブリアさんはまた魔法で調べる。


「……やはり、瘴気の発生源は、このドラゴンからだな」

「ですね」


 僕もビリビリと感じる。

 これは、本当に危険かも。何があったんだろう。


「おい、不用意に近づくな」

「大丈夫です。僕、ドラゴンの医学知ってるので」

「ドラゴンの……医学?」

「こう、獣医的な」

「獣医的な」


 フィブリアさんは目を点にさせながら繰り返す。あれ、そんなにおかしいかな。

 単純に、以前にあったドラゴンさんから教えてもらっただけなんだけどね。後、医術書を貰ったんだ。どちらかというと、レシピ本だったんだけどね。薬膳料理みたいな感じだ。


 だから、基本的な診察ならできる。


 フィブリアさんが首を傾げている間に、僕はドラゴンの喉元に辿り着く。

 うーん、赤く腫れてる。

 触ってみると、結構熱い。ドラゴンの体温は基本的に六十度くらいなんだけど、これは八十度くらいあるんじゃないかな。かなり高いね。

 だからか、息が荒い。


「お口あけて?」

「ゴォ……」


 素直にあけてくれるドラゴン。意識はまだハッキリしてるみたいだね。

 えーと……。

 ん。扁桃腺腫れてる。これって、もしかして……。

 一応他の病気の可能性もあるから調べてみる。脈拍とか、お腹のはりとか。


「風邪……かな、うん。風邪だね」

「ドラゴンが……風邪?」

「ええ。何か悪いものでも食べちゃったんじゃないですかね」

「……ちょっと待て、こう、色々と理解が追いつかないんだがな?」


 おでこを覆いながら、フィブリアさんは僕に手のひらを向けてくる。本気で悩んでる。


「えっと、だから、このドラゴンさんが悪いものを食べて体調崩して風邪ひいて、それが原因で瘴気が出てるんじゃないですかってことです」

「無茶苦茶すぎないかっ!?」

「ドラゴンって、すごい魔力の塊みたいなものですし、マナも食べますしね」


 だから成熟したドラゴンは呼吸するだけでも生きていけるんだよね。


「それはそうだが……けど、風邪って……」

「免疫力強いから、基本的にはそんなこと起きないんですけどね」


 でも、ドラゴンにだって食べたらいけないものがある。

 ほうれん草とか、ブロッコリーとか。それにアピの実っていう果実はドラゴン殺しと言われてるくらい、ドラゴンには猛毒だ。

 猛毒状態じゃないから、もしかしたら食べちゃいけない野菜を口にしたのかも。


「緊張感がだだ崩れなんだが……?」

「戦いにならなくてよかったじゃないですか」

「気楽すぎないか? 確かにドラゴンと戦いたくはないが」

「ドラゴンは体調を崩すと、マナを循環させて治す自己治癒術を使うんですよね。それが上手く回らなくて、変異しちゃったんじゃないかな」


 瘴気になっちゃったのは驚きだけど。

 たぶん、それで余計に体調を悪く案って、綺麗なマナを循環させるために、周囲のマナをたくさん吸収しちゃったんじゃないかな。

 とはいえ、とんでもない量を使っちゃったみたいだけどね。


「人騒がせにも程があるだろう」

「どれだけマナを循環させても、体調そのものが悪いんじゃあ変異は続きますからね」

「……それって治せるのか?」

「魔力を与えても、今の状態じゃあ無意味ですしね」


 つまり、体調を整えさせてあげないと。

 そのためには、食欲がないとダメなんだけど……。


「タスケ……テ……オナ……カ……スイタ……」


 うん、大丈夫っぽいね。


「どうにかしてやれるのか?」

「そうですね……ストレージ使ってもいいですか? ドラゴンの医学書を確認したいです」

「構わんぞ。誰もいないし」


 よし。

 僕は指を鳴らしてストレージを呼び出す。えっと、どこにしまってたかな。

 現れた異空間に手をつっこんで、分厚い本を取り出す。

 えっと、確か……。

 僕はぺらぺらとページをめくっていく。


「ありました。これならなんとかなると思います。材料もありますし」

「何かしておくことはあるか?」

「瘴気を浄化することってできますか? 影響を防ぎたいですし」

「それなら難しくはないから大丈夫だ。瘴気の扱いは魔族の特権だからな。任せてくれ」

「ありがとうございます」

 

 よし、じゃあ僕は調理に集中しよう。

 ストレージを活用して、簡易コンロとお鍋といった調理器具と、材料を取り出す。念のため、ストレージにも分けておいてよかった。キャンプ用具なんだけどね。

 使うのはもち米、乾燥キノコ、ホーンラビットの肉、ネギ、卵。後は塩。

 まずはもち米を水にさらしておく。

 その間に、ホーンラビットの肉と骨を仕分けて、乾燥キノコの戻し汁に骨とネギの青い部分を入れる。圧力鍋で、くつくつとじっくりと煮込む。しっかり出汁が取らないとね。


 もち米が十分水を吸ったら、出汁に肉とキノコを入れて煮込んでいく。この時に塩を少しいれて味を調える。


 くつくつ、くつくつ。

 途中でネギの白い部分を入れて、またくつくつ。

 最後に溶き卵をとろーっと回し入れて、かきまぜながら火を止める。


 これでとろっとろの卵お粥のできあがり!

 うん、いい香り。優しい感じだ。

 たくさん食べそうだから、お鍋ごともっていこう。お皿も用意して、と。


「できましたよ。さぁ召し上がれ」


 僕はお皿にお粥をついで、ドラゴンさんの口へ持っていく。

 ドラゴンさんはべろんと舌を出して一口。ってお皿小さかったかな……全部食べちゃった。


「……オイシイ」

「もっと食べます?」


 うなずくドラゴンさん。よし、と。

 お鍋からお粥を注ごうとしたら、いきなりドラゴンさんがぽんっ、と音を立てて変身した。


 …………へ?


 姿を見せたのは、女の子だった。

 薄いピンクの髪はツインテールで、涼しげな水色の瞳が大きく見える幼い顔立ち。


「ドラゴン……じゃない?」

「ドラゴンだぞ」

「いや、だったらその姿は……」

「こっちの方が美味しく食べられるだろ」


 こともなげに答えられて、僕は首をかしげる。

 え、そうなの?

 確かにドラゴンは変身できるけど……でも、その方が味覚鋭くなるなんて。ドラゴンの医学書には記載がない。


「ドラゴニュートではないのか?」

「ちがう。私は、純血」


 フィブリアさんの質問に、ちょっと不満そうに答えながらも、ドラゴンさんは目線で僕に要求してくる。ああ、お粥が欲しいんだね、うん、分かった。今は風邪を治す方が先だしね。ちゃんとあげるよ。

 僕はお皿にお粥をそそいで、スプーンを添えて渡す。

 ドラゴンさんは小さい両手を伸ばして受け取って、スプーンですくう。


「とろとろ」


 溶き卵を入れてるから、見た目もとろとろふわふわだしね。

 微笑んでから、ドラゴンさんは頬張る。

 もむもむと口を動かしながら、嬉しそうに目を閉じて味わう。


「うん、おいしい」


 なんてほっこりするんだろう。頬が緩んでしまう。

 子供がもつ独特の雰囲気に負けそうになっていると、フィブリアさんも呻いていた。


「か、かわいい……」

「あ、フィブリアさんお疲れ様です。良かったらどうですか」

「うむ。私もいただこう」


 瘴気を浄化させて、フィブイリアさんの魔力はかなり消費されてる。このお粥で魔力回復するわけじゃないけど、ほっとできると思うし。

 フィブリアさんは傍に腰かけながら、お粥にふうふうと息をふきかける。


「ん。これは優しいな」


 一口して、フィブリアさんも微笑んでくれた。


「美味い。とろとろだ。じわーっと旨味がしみだしてくるな。口当たりすごくあっさりしてるのに、旨味がすごい。うん、うん」

「卵が優しいですからね」

「おかわり」

「大丈夫だよ。はい、どうぞ」

「かたじけない」


 ぺこっとお辞儀してから、ドラゴンさんは受け取った。

 うん。大分体調が整ってきてるみたいだ。ドラゴンは吸収率が高くて早いから、後十五分くらいしたら戻るんじゃないかな。


「かたじけない、か。かなり古い言葉を使うんだな」

「……むかし、教えてもらったことば」

「昔、って人間と交流を持っていたのか? ドラゴンが? 珍しいな」


 フィブリアさんは意外そうにした。

 うん。分かる。

 ドラゴンは孤高の種族で、他の種族と交流を持つことはあまりしない。子孫を残す時は容赦ないらしいんだけど、そうじゃない限りはシャットアウトするのが普通。

 でも、そんなドラゴンの中でも上位種となるとちょっとだけ違ってきて、積極的に人間と関わろうとする種もいたりするんだ。


「うん、にんげん、たのしい」

「ドラゴンがいうと不穏な気配しかしないんだがな……」

「あはは、まぁまぁ」


 談笑しながらご飯を済ませる。

 すっかり食べ終わった頃には、ドラゴンさんも体調を整え終えていた。うん。これならマナを吸収しても大丈夫。自然と自分の魔力に変換できるよ。


 問題はそのマナだけどね。


 どうしようかな。と考えた頃、ドラゴンさんはむずむずと全身を震わせてから、ドラゴンの形態に戻った。

 ぎょっとフィブリアさんがのけぞりながら顔を引きつらせる。僕もちょっと驚いた。

 あ、あれー?

 さっき、黒の鱗だと思ってたんだけど、見事なレインボーカラーだ。しかもキラキラしてるし、神々しい。う、うーん。このフォルムも、見たことあるぞ。ええええ。


「こ、これって……」

「始祖の竜族……ですねぇ」

「よくしっているな」


 ええ、そりゃもう。

 かつて世界に恐慌と呼ばれる災厄が接近した時、始祖の竜族が退治したって話はあまりに有名だから。今では滅びたんじゃないかっていわれてるくらい目撃例がないんだけど。

 まさか目にすることができるとはねぇ。ありがたやありがたや。


「いや拝むのかっ!?」

「珍しいなって思って」

「そうだけどな。そうなんだけどな!?」

「たすかったぞ。まぞくとにんげん。それとおいしかった」

「いえ、どういたしまして」


 ぺこりと頭を下げるドラゴンさんに、僕も頭を下げかえす。


「なんなんだ、この空気は……くそっ、眩しいっ!」

「フィブリアさん?」

「いや、なんでもない。とにかく、これで元凶は解決したな。次はマナの補充だ。どうするつもりなんだ?」


 ああ、そうだった。問題の方を解決しなきゃ。


「土地のマナが大分枯れてますからね……魔力を供給してみますか?」

「一時的にしか回復しないぞ。馴染むまで何度も供給しなければならんぞ。それもあれ程広大な土地だ。何日かかるか……」

「いえ、僕ならたぶん、一回で全部賄えると思います」

「……は?」

「結構削られちゃうと思うんですけど……ちょっと休めば大丈夫かなってくらい」

「規格外め」


 でも、何度も供給しなきゃいけないとなると、ちょっと苦労するかもなぁ。


「だいじょうぶ。マナ、かえす」

「返す?」


 フィブリアさんが怪訝に返した直後だった。

 ドラゴンさんがふわっと光り輝いて、あっというまにマナを解放。周囲へ還元させていく。それは光のヴェールのように広がっていった。


 う、うわぁ。キレイだなぁ。


 あ、フィブリアさんが卒倒してる。起こさないと。

 僕は肩を軽くゆする。


「フィブリアさん、フィブリアさん。起きてください」

「う、ううむ……すまん、ちょっとあまりに常識外というか規格外というか、なんというか……現実逃避で気絶してしまった」

「驚きすぎですよ?」

「規格外すぎるんだ! お前らが!」


 あ、あれぇ。そんな説教しなくても。とにかく、これで解決だね。


「それじゃあ、集落に戻って様子を確かめにいきましょう。もしまだ足りなかったら、魔力を供給しないといけませんし」

「うむ、まぁ、そうだな……」


 なんとか持ち直して、フィブリアさんが起き上がる。


「なんだ、かえるのか」

「ええ、そうですよ」

「……じゃあ、ついていく」


 ……うん?

 しれっと言われて、僕とフィブリアさんは同時にきょとん、と目を点にさせた。





たまごのお粥、もち米で作ると本当に美味しいです。ショウガをいれたら身体も温まっていいですよ。

そしてドラゴンが仲間になる!?

次回をお楽しみに!


皆様の支援が活力になります。どうか応援してください。

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新連載はじめました! 追放ものです! ぜひ読んでお楽しみください!
料亭をクビになったけど、料理人スキルが最強すぎたので傭兵やることになりました。
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