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新しい仲間ときつねうどん

「……ついてくる?」


 フィブリアさんがかすれた声をだすと、ドラゴンさんは深く頷いた。

 え、ついてくるって、僕たちに?

 わぁ、なんだか楽しそう!


「っておい。目をキラキラさせるな! 分かってるのか!? 始祖の竜族だぞ!?」

「ええ、分かってますよ? いいじゃないですか、旅のお供が増えて。それにドラゴンさんなんて珍しいし」

「けど、おま、このっ」

「すがたを気にしているのか? ならば、しんぱいするな」


 ドラゴンさんを指差しながら顔を赤くさせるフィブリアさんを見て、ドラゴンさんはあっさりと姿を変化させた。

 さっきの小さくて可愛らしい女の子になった。

 ふわっとツインテールが揺れる。


「いや、あのな……」

「わたし、おいしいもの、食べたい。おまえたちについていく、おいしいもの、食べられそう」

「しかしだな……」

「だめなのか?」


 じわぁ、と涙をためるドラゴンさん。すると、フィブリアさんはいきなり「くぅっ!」と呻いて心臓をおさえた。ぷるぷる細かく震えまでしてる。

 大丈夫かな?


「くっ……そこまでいうなら……仕方ない……」

「おー。かたじけない」

「くふぅっ」


 あ、後ろ向きに倒れた。何に射抜かれたんだろう、今。


「とりあえず戻ろうか。あ、名前きいてもいいですか? 僕はタクト。こちらはフィブリアさん」

「わたしはサナ。よびすてでいいぞ。よろしくな、タクト。フィブリア」

「うん、そっかそっか。よろしくね。サナ。それじゃあいこうか」


 僕が手を差し出すと、サナはきゅっと握った。

 うん、じゃあ集落に戻ろう。

 あ、でもその前にフィブリアさんを起こさないと。


「フィブリアさん、いつまで射抜かれてるんですか?」

「……はっ。すまんかった」

「いこー」

「一応いっておくけど、人間らしく振る舞うようにな。変な魔法は使うなよ、竜魔法は禁止だぞ。それと、ドラゴンに変身もするなよ」

「うん。わかってる。まかせるのだ」


 胸をはりながらサナは宣言した。




 ▲▽▲▽




 ――集落に戻ると、土地はすっかり戻っていた。


 畑も綺麗に戻っていて、作物たちも元気そうだった。さすがドラゴン。

 僕だったらここまで綺麗に戻せてたのかちょっと分からないや。

 なんてのほほんとしてたら、フィブリアさんが顔をしかめ始めた。すっと手をかざして、じっと先の方を見つめる。

 ん、何かあったのかな。


「……なぁ。ふと思うんだが」

「なんでしょう?」

「住人たち、騒いでないか?」


 いわれて、僕もよく見る。うーん、確かにちょっと騒いでるような。


「あれ? 畑が元気に戻ったのに。なんでだろう?」

「むしろ元気になりすぎたからでは……?」

「……その可能性は……否定、できない、かも」


 ぎぎぎ、と顔をブリキ人形みたいに動かして、フィブリアさんはサナを見た。

 すると、サナは舌をぺろっと出した。


「ちょっと、がんばりすぎたかも」

「……がんばりすぎた……!?」

「あははは。でも元気になったのはいいことだしね」

「そういう問題か? そういう問題なのか?」

「でも、しゅうかく、たくさんできる。ひんしつ、こうじょう」


 おお、それはいいことだね。けど、フィブリアさんは沈痛そうだ。


「いや、あのな……」

「しかもずっと」

「ずっとなのか!?」

「ドラゴンはそういうもの。とくにわたし、始祖だから」


 えっへん、と威張るサナ。

 そっかー。と頭を撫でると、フィブリアさんは頭痛を覚えたのか、頭をずっと抱えていた。そんな心配しなくてもいいのに。


「なんか色々と便利な言葉になりつつあるぞ、ドラゴン」

「ちょっとそれは心外」

「便利に使ってる本人がいうな!?」


 フィブリアさん、絶好調だなぁ。

 思いながら歩いていると、住人たちが僕たちに気付いた。しきりに手を振ってくる。反射的に手を振り返すと、最初に僕と話した男の人が走ってきた。すごい勢いで。

 もう、それはどどど、と土煙が舞う程に。


「……住人たちも強化されてないか?」


 ぼそっとフィブリアさんがこぼすと、サナはそっと目を逸らした。

 ……強化、したんだね……。

 たぶん、ほら、その、悪いことしちゃったから、その罪滅ぼしというか、そういうのなんだろうな、きっと。


「お――――いっ! あんたら、もうやってくれただか!」

「あ、はい。これで土地のマナも回復できたはずです」


 さっとフィブリアさんは僕とサナの口を手で封じながら笑顔を浮かべた。

 素早い。

 っていうか、これってあれ? もしかして余計なこというって思われた? そんなことないのになぁ。でも、フィブリアさんに任せておけばオッケーかな。


「すげ、すげぇだ! 作物みーんな戻ったばかりが、余計に元気になっただ!」

「おお、そうですか」

「みんな感謝してるだ! お礼すっぺがら、こっちさこい!」


 すごく興奮した勢いで、住人さんは手をいっぱいに伸ばして喜びを表現していた。


「お礼?」

「そうだ! 大豆いっぺぇあるかんら、いっぺぇもってくといいだ! おめぇらさ、馬車か何が持ってっか?」

「ええ、まぁ……」

「したら入り口までもってきてくんろ! 用意して待ってっかんな!」


 言い残して、住人さんはすさまじい勢いで走っていった。舞い散ってくる土煙を、フィブリアさんは風の魔法で弾く。

 そしてちらりとサナを咎める視線で見下ろす。

 けどサナはさらに顔をそらして、口笛をふいて誤魔化す。


 う、うーん。確かにこれは、ちょっとスゴい、かも。


 でも、特別害はないから、いいよね。きっと。畑仕事って力仕事で重労働だし、うん。住人さんたちの負担が減ると思えば。でも、次からはさせないようにしないとな。

 僕も苦笑を浮かべていると、どこからともなくスレイプニルさんが現れる。僕たちの会話を聞いていたみたいだ。賢いなぁ、本当に。

 顔を寄せてくるスレイプニルさんを撫でながら、僕は頬をすりつける。


「とりあえず、入り口までいってみるか……」


 フィブリアさんの言葉に従って、僕らは集落の入口へ向かう。

 すると、いろんな人たちがいろんなものを持ってきてくれた。みんな、本当にありがとう、と口々に感謝を伝えてくれて、握手までしてくれた。

 もらったのは、たくさんの大豆。もちろんそれだけじゃなくて、いろんなものをもらった。特にありがたかったのは、味噌や豆腐を作る時に必要な材料だよ。

 中々手に入らないんだよね。特に味噌は発酵しないといけないんだけど、そのために菌が必要。これは本当に貴重。大事にしないと。


 これはストレージにいれて、と。


 後はゆっくりしたかったけど、時間になったので帰ることにした。

 洞窟で時間を結構くっちゃったしね。

 住人たちに感謝されながら見送られて、僕らは東の町へ戻っていく。


「いやー、いいのもらいましたね」

「肉も野菜も貰ったからな」

「ごはん、いっぱい」

「あ、でもサナはまだ病み上がりだから、優しいメニューだよ」


 さすがに同じものは嫌だろうから、ちょっとアレンジ加えるけどね


「おいしいならいい」

「うんうん、いい子だね。町に着く前にご飯を済ませちゃいましょう」

「そうだな」


 僕は早速準備にとりかかる。

 えへへ、もらった中には、こういうのがあるんだよね。まずはうどん。しかも麺にしてもらってるヤツ。早い目に使わないとね。

 さらにあるんだよ。


「なんだ、これは」

「カワコンブガエルの皮膚を乾燥させたモノです」


 これからすごく濃厚な出汁がとれるんだ。海沿いで流通してる昆布と同じ感じで、旨味成分に溢れてるんだよね。楽しみだなぁ。

 いつものキノコの戻し水を使って、出汁をとって、と。

 ほわっといい香りがしてきたら、しょうゆ、みりん、砂糖、塩で味を調えてうどんのつゆを作る。同時並行で、お揚げも作っていくよ。


 取り出したのは、お揚げさん。


 これも貰ったんだよね。

 まずは湯引きでしっかり油を落として、しょうゆ、お砂糖と水でくたくたっと煮込んでいく。落とし蓋をしてじっくりと味を染み込ませるのがコツだよ。


 出来上がったら、ちょっと冷ます。


 冷める間にもきゅうっと味が染み込むんだ。

 これで甘じょっぱくて、でじゅわーっとしたお揚げさんになるんだ。食べる前にちょっと温めなおすとふっくらするんだよね。

 後はネギを切って、少しだけうどんつゆで炊いて、と。


 うどんを湯がいてから、出汁をかけて、お揚げさんをのせて、と。


 うん、いい香り!

 できたーっ。

 僕は人数分用意して、テーブルに並べる。ほっかほかの湯気がすごくいい感じ。


「どうぞ、召し上がれ」

「いただくー」

「いただきます。美味しそうだ」


 サナはお箸に使い慣れてないのでフォークで。フィブリアさんはどこかで覚えてきたのか、しっかりと使えた。僕も使える。

 まずはレンゲでおつゆをすくって。

 琥珀をもう少し濃くしたような、好き通ったおつゆ。僅かに浮いているキラキラは、お揚げさんから出た油分かな。綺麗。


 じゅるっ。


 ふわふわぁぁ。

 広がったのは、美味しさのコラボ。キノコの奥ゆかしい味に、昆布のしっとりした旨味。ここに重なるのは、溶けきった甘さと、醤油の風味とコク。

 こくっと飲み込んだら、後味はすっきり。


「いいですねぇ、このおつゆ」

「これは、とんでもなく美味しいな」


 フィブリアさんはお揚げさんをはくっとかじる。ぷちゅっと出汁がしみだしてくる。


「んん、ふっくらジューシーで、すごく甘じょっぱいな。ちょっと甘さが強めなのもいいな、噛めば噛む程、味が出てくる」

「油で一度揚げてあるものなので、すごくジューシーですよ」

「うどん。すごくつるつるー」


 サナはフォークを上手く使って、ちゅるちゅるっとすする。

 そうそう、麺も大事だよね。

 はぁはぁふうふう、と湯気のあがる麺を冷まして、一気にすする。


「つるつる! もっちもち! ですね」

「こう、すすれば出汁が一緒に入ってくるのが乙だな、箸が止まらない」

「ネギもいい感じ」


 うんうん。シャキシャキだよね。お出汁も吸って、甘さがでてるのも美味しい。ちょっとだけ辛味があるのもアクセントになってるし。

 僕らはあっという間に食べ終わった。

 うん、お腹もこころもほっこり温かくなったね。うどんは色々バリエーションあるから、これからも作ってみよっと。うどんのレシピもあるし。


「よし、それじゃあお風呂に入って寝るか。サナ、入るぞ」

「おふろ?」

「温かくて気持ちいいんだ。さっぱりもするしな。タクト、先に入るぞ」

「はい、どうぞー」


 フィブリアさんはサナの肩を抱きながらお風呂場へ向かった。ちなみに寝る場所はフィブリアさんの隣になった。なんだかんだで気にかけてくれてるなぁ。ありがたい。


 しばらくする、お風呂場できゃいきゃいやり取りする声が聞こえてきた。


 ふふ、幸せそう。

 あ、そうだ。お手紙書かなきゃ。後片付けは自動でやってくれるのですごく助かるよ。

 えっと、兄さんへ、と……。



 そして翌朝。


 ――フィブリアさんが、いきなり姿を消した。


きつねうどんのお揚げさんは簡単に作れるので、ぜひやってみてください。油を抜くのがしみしみじゅわーになるコツですよ!

そして、物語はいきなり急変……!? いったい何が待っているのか、次回をお楽しみにしてください!


皆様の支援が活力源です、ありがとうございます。

どうか応援をお願いします。

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お読みいただき有難うございます
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新連載はじめました! 追放ものです! ぜひ読んでお楽しみください!
料亭をクビになったけど、料理人スキルが最強すぎたので傭兵やることになりました。
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