21話 TODO:腰の治療を請け負ってみる
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短編を一つ書き上げました。
勇者のキモチ
良ければこちらもご覧下さい。m(_ _)m
「――という訳で、エリナさんのご自宅にご招待いただきました。」
「? 一体、誰に説明してるんだい、ショースケ?」
ショースケの紹介の通り、別の概念魔法を試してみようと考え、次にやってきたのはエリナの自宅だった。
「まぁ、気にしないで下さい。話の流れってやつですよ。」
「本当にあんたは不思議な子だねぇ……それにしても、バカ旦那の腰を治せるってまた本当かい?
普通、蘇生魔法は怪我とかの傷を塞いだり、痛みは治せても、病気や欠損した四肢とかは回復できないんだよ?」
「えぇ、その程度は勉強したんで理解しています。ただ、これから使う魔法は、そういうのとは別次元というか……まぁ、本当に治せるかどうかは、実際見ていただけないでしょうか?
話を聞く限りだと、ぎっくり腰みたいですから、命に係わるような病気ってわけでもないみたいなんで……ただ、実験みたいな感じで申し訳ないんですけど。」
「あぁ、その程度は気にしなくていいよ。治れば御の字ってもんさ。それに、あんなのでも、流石に半月も寝たきりじゃ可哀想だしねぇ。」
「うふふ、エリナさんは、旦那さんと仲が良いんですねぇ?」
「ばっ、バカ言うんじゃないよっ!? あの、バカが世話ばっかり焼かせるから、それでしょうがなくだねぇ……。」
「おいおい。人の事をバカ、バカ、言ってんじゃねぇよ。
んで、お前等がショースケと、その相棒のユーリかい? お前等の事は、エリナからよーく聞いてるよ。
あのエリナが、やけに期待している新人がいるって言うもんだから、早い所お目に掛かりたかったんだかがなぁ……まったく、年は取りたくないもんだ。」
そう言って、エリナの夫でもあるギルドマスターのカールマンが挨拶をしつつ、痛みで顔を歪めながらも上半身を腕で支えながら起こした。
「大丈夫ですか? 無理しないで寝たままで結構ですよ。」
「はっ、これでもギルドマスターをやってるからな。寝たきりの状態で客を迎えるなんて、プライドが許さねぇよ……って、いてて。」
「そう言って酷くなってるようじゃ、世話無いんだけどねぇ?」
「まぁそう言うんじゃねぇよ、エリナ。
で、ショースケ。これを何とかしてくれるってのは本当か?」
「まぁ、やってみないと分からないんですが……とりあえず、安静にして下さい。」
「あぁ、判った。じゃ、すまねぇが横にならせてもらうぞ……いたたた。
まぁ、可能性があるんだって言うんだろ? とりあえず、やってみてくれよ。」
「はい。それじゃ、失礼して……カールマンさんの状態について【解説】。」
【解説 Start】-----------
カールマン・シュナウザー 65歳 男 人間族
状態:ぎっくり腰(重度)、痛風
-------------【解説 End】
「おや?」
「ん? どうした?」
「カールマンさん、腰をやる前なんですけど、関節……特に、足首とか膝とか、凄く痛みませんでした?」
「おぉ、良く分かったな! そうなんだよ、歩く度に何とも言えない激痛が走ったりしてなぁ。まぁ、根性で何とかなったが、あれは参ったよ。」
(痛風の痛みって、根性で何とかなるもんか? 風が吹くだけで痛いって言われるのが痛風っていう病気じゃなかったっけ?
テレビとかでも、よく痛くて歩けないとか聞いたりするけど……まぁ、蘇生魔法で痛みを抑える事が出来るみたいだけど、それでも根性って凄ぇな、この人。)
「と、とりあえず、それも含めてイメージを固めてみます。」
「ん? お、おぉ、任せた。」
(えーっと、痛風は尿酸が溜まりすぎて、結晶となって関節を痛めてるんだよな。だから尿酸結晶……って何だ? 分かんないから関節部分に溜まっている結晶体を分解する事と尿酸を分解するイメージと、ぎっくり腰は椎間捻挫か、骨格の歪みが大部分のはずだから、腰辺りの骨格の矯正と筋繊維の治療のイメージを合わせて、っと……。)
「【快癒】(かいゆ)。」
カールマンの腰に手を当て、【力ある言葉】もどきを唱えると、手を当てた部分が仄かに光り輝く。
「……どうでしょうか?」
「あぁ、何か気持ちよかったが……おぉ!? 痛くない! 起き上っても全然痛くないぞ! それに、足も膝も痛くない!」
カールマンは痛みが無くなった事に驚きつつも、バッと素早く身体を起こして、足踏みしたり、駆け足したり、シャドーしたりと身体を動かして、調子を確かめた。
「おぉ……良かったじゃないか、あんた。」
「あぁ。本当にありがとう、ショースケ君! 素晴らしい、まるで若返ったみたいだ! これでまた、魔者の討伐に……。」
「「「それは止め(て下さい)ろ!!」」」
無謀な一言をこぼすカールマンに対して、一同ツッコミを入れつつ、エリナは御礼とばかりにお茶と甘いお茶菓子を用意すると言って、ショースケ達をリビングへ通した。
「それにしても、ショースケ。助けて貰って何なんだけどねぇ……あんた一体何者なんだい? 初めから不思議な子だったけど、成長速度が人間離れしているし、得体の知れない魔法まで使う所まで見ちまうと、ね。
流石に、この街のギルドを預かる身としては、警戒せざるを得ないんだよ。」
そう言って、鋭い目線をショースケに向けるエリナ。
「そうですね。エリナさんにだったら話しても良いかな、と思っていましたし、俺の事について話しますよ。ただ……信じてもらえるかは、分かりませんがね。」
「……そういう風に前置きを置くって事は、突拍子も無いような話って事なんだね?」
「えぇ、まぁ。」
「いいよ、話してごらんな。」
ショースケがこの世界とは別の世界からやってきた事、この世界の魔法とは異なる魔法を使えるようになった事、など、神様との話しについては誤魔化して、話しても問題なさそうなスキルの事などについてもエリナに説明した。
「――という事なんですけど、どうでしょうか?」
「ふむ……確かに、俄かには信じられないような話だね。でも、この世界には存在しない魔法を目の前で使っているんだ、信じない訳にはいかないねぇ。」
「存在しない、って分かるんですか?」
「あぁ、私自身は大して魔法を使う事もできない……と言ってもギルドを取り仕切る以上、無知でいる訳にはいかないからね。この国の中央にある大図書館で、ありとあらゆる魔法については勉強しているんだよ。」
「ほええぇ、全ての魔法を知っているんですかぁ?」
「それは凄い……ちなみに、俺達もその図書館に入れます?」
「まぁ、大図書館自体には入れるだろうさ。でもね、ショースケ達が目的としている物は禁書庫という場所に保管してあって、そこに入れるのは、王族、大公、公爵、ギルドマスター、魔導研究所所長だけなんだよ。」
「そうですよねぇ……ちなみに、さっき俺が使った魔法は、それには載っていなかった、という事ですか?」
「あぁ、そうだよ。」
「ついでに、もう一つ聞いていいですか?」
「あぁ、もう何でも聞いておくれよ。」
「魔法を発動させるのに、無詠唱で発動させた人っていますか?」
「いや、聞いた事も見た事も無いねぇ……あんたは知ってるかい?」
「いいや、俺も知らん。魔法の扱いに長けたエルフ族や、猫人族でも、そんな事が出来るのは居ないはずだ。」
「そうですか……。」
ショースケから聞いた異世界の話、そして魔法についての質問のやり取りから意図を察したようで、エリナは大きく溜息をつきながら頭を振った。
「……ふぅ、そういう事かい。ショースケが使う魔法は、この世界で解明されている魔法とは全く違うもので、更に魔法を使うのであれば常識でもある、【力ある言葉】さえも必要が無いって事かい?」
「なっ!?」
エリナの鋭い指摘に、カールマンは驚愕し、ショースケはバツの悪そうな顔を浮かべた。ちなみにユーリは、我関せずといった具合に一人呆けていた……話についていけていないのだろうか?
「……えぇ、そうなんです。俺の使える魔法は、[概念魔法]というもので、俺が持っている知識を、そのまま実現させる魔法なんです。」
「はぁ、なんて魔法なんだろうね。本当、あんたには驚かされてばっかりだよ。うちの旦那に使った【解説】って魔法についてもそうだ。私も知らなかった症状まで当てちまうなんてねぇ。
解説っていう位だから、ショースケが問う事に答えてくれるようなものなんだろ? ちなみにそれは、相手が考えている事とか、隠し事とかも分かっちまうのかい?」
「いや、これは魔法じゃなくてスキルなんですよ。基準は何とも分からないんですけども、大体の事は分かるんじゃないですかね?
実は昨日、エリナさんのステータスも見させて貰ったんですけど、年齢は見えませんでしたし。」
「ちょっ!? 何、勝手に覗いてんだいっ!」
「わっ!? すいません、エリナさん! 自分の力がどの位かを見る為にっ! 比較したくてっ、アブねっ!? 身近だったエリナさんのを見ただけなんです!
……っとぉっ!? 悪気は無かったんですっ!」
羞恥の為か、顔を赤らめたエリナが殴る、蹴る、と襲い掛かってくるのを、何とか躱しながら宥めるショースケ。
「ちっ。まぁ、そういう事なら仕方ないかねぇ……。」
「本当にすいませんでした。」
その場に綺麗な形で土下座するショースケを見て、エリナは苦笑いする。
「まぁ、いいさ。別に黙ってれば分からない事だったんだしねぇ、それをバカ正直に言うなんて、人が良すぎるんじゃないかいショースケ?」
「こちらの世界に来て、何も知らない俺に親切に色々と教えてくれた恩ある人達に、仇で返す事なんてできませんからね。」
「それだったら、人のステータスを勝手に覗くんじゃないよ!」
「ごもっともですっ!!」
「……ちなみに今更で悪いんだが、儂も一緒にショースケの話を聞いてしまったが、それは問題無いのかね? 儂が言うのも何だが、今まで一切関わりの無かった人間だぞ?」
「カールマンさんは、恩あるエリナさんの旦那さんじゃないですか。エリナさんが認めている人なんだから、問題無いと思って話したつもりですが?」
カールマンはショースケの一言に対して、一瞬、目を見開いて呆けた顔をするが、自分の膝を叩きながら笑い出した。
「……ハッハッハ! 確かに、これ程までに見所のある新人は滅多に見ないな。エリナが目を掛けるだけの事はあるな。
今後は、エリナの薦める通り、黒ランクの冒険者としてやってもらえないか?」
「はぁっ!? 確かにランクを上げるとは言ってましたけど、そんなに一気に上がって問題無いんですか?」
「あぁ、問題ないよ。私とカールマンはランク付与の責任者でもあるからね。一応、中央の人間にお伺いは立てるけれども……私等が推薦するから、ほぼ問題無く通っちまうだろうねぇ。」
「ほええぇぇぇ、やっぱりご主人様は凄いですねぇ。」
「そうだねぇ。こんな短期間でランクが跳ね上がる奴は……私等の代になってから、いたかねぇ?」
「いやいやいや、そうそう出てきてたまるかよ。ここ最近で言ったら……俺達が最後なんじゃねぇか?」
「えっ!?」
「ほえぇっ!? エリナさん達も、ランクが一気に上がったんですかぁ?」
「あぁ、そういえばそうだったねぇ。昔の事だったから忘れたよ。」
「ハッハッハ! 一応、俺達はエリートだったんだぞ。俺達はパーティを組んでいてなぁ、この2人の他にもう1人いたんだ。今じゃあ、防具屋をやってて……。」
「あ、知ってます! パイクさんですよね?」
「おぉ、知ってたのか?」
「あぁ、私が紹介したんだよ。」
「そうか、パイクを紹介するとはねぇ……本当に、エリナの見る目ってぇのは大したもんだなぁ。」
「フフッ、あたりまえじゃないか。」
「でも、ここまで見越してたわけじゃないだろう?」
「そんなもん、当たり前じゃないか! 誰が、ショースケが異世界からやって来た、なんて判別できるっていうんだいっ!」
「そりゃそうだ……って、悪いな。話がずれちまった。
まぁ、その3人が、今の所の最後の急成長パーティだった、ってわけさ。」
「ほえぇ……それじゃあ、ご主人様で4人目っていう事ですかぁ?」
「あぁ、そうなる。」
「ほえぇ……。」
「……まぁ、どれだけやれるか分かりません。だけど、それなりに覚悟を持って冒険者になったつもりです。やれるだけ頑張ってみたいと思います。」
「あんたなら、そう言ってくれると思っていたよ。まぁ、困った事があったら、いつでも相談に来な。先輩として、アドバイスぐらいはしてあげるよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「……さて、すっかり話し込んじまったから、いい時間になっちまったね。2人共、夕飯を食べていきなよ。」
「「はい! ご馳走になります(ぅ)!」」
意外にも、エリナの作る料理はとても美味しく、用意してくれた夕食や酒精にショースケ達は舌鼓を打ち、穏やかな一時を過ごした。
「ご主人さまぁー、飲んでますかぁー? 私はですねぇ、始めてお会いした時からですねぇ、本当に素敵な方だと……聞いてますぅ?」
「……めんどくせぇ。」
ユーリに酒を飲ませるのは、出来る限り控えようと思ったショースケだった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
ちなみに、カールマンのステータスも考えてみました。
【解説 Start】-----------
カールマン・シュナウザー 65歳 男 人間族
筋力:452
体力:415
敏捷:183
知覚:285
魔力:18
技能:両手剣術(特級)、体術(特級)、片手剣術(上級)、盾術(上級)、槍術(上級)、弓術(上級)、気配察知、カリスマ、筋力強化、【愛妻家】
-------------【解説 End】




