2 魔法
アレンとマリエールは、コップ一杯の水を出す水魔法から始めた。この魔法は魔法の基本だ。この魔法が使えるのは貴族で10人に1人だ。
2 魔法
アレンとマリエールは魔導書を読んで、それを試す事を繰り返した。先ず2人は、コップに水を注ぐ事から始めた。充実な魔力がある事は判っていても、魔法使う事は別物だ。魔力と魔法は違う。魔法は魔力がなければ使えないが、魔力があっても魔法が使えるとは限らない。魔法は魔力を身体の中で循環させて使う物だと説明される場合が多いがこれは感覚的なイメージだ。むしろ右手なり左手なり魔力を集中させる事が魔法の基本だ。魔力の大きさと魔力を循環したり集中させたりして自由自在に操ることこそが魔法の真髄だろう。コップに水を注ぐ魔法は初歩的な水魔法だ。魔力を僅かに動かせば出来る。ところがそれが出来るのは貴族の10人の内1人だ。魔法が使えなくても魔力があれば貴族として生きていけるから特に魔法に拘る必要がないと考えられている。
アレンとマリエールが再び会った時には2人共に水魔法が使えるようになっていた。2人はボートが転覆した池で出来るだけ沢山の水を出す訓練をした。そして出来るだけ遠く飛ばす訓練をした。マリエールは、
「こうやって、2人で同じ訓練をやっていけばお互いに励みになるし補え合えるから効果的ね。」
アレンも、
「競争しているようでいいんじゃないか。」
と言った。
水魔法も種類により魔力の扱いが異なる。例えば洗浄魔法は指先に魔力を集め放つ事で洗浄する事で水が消える。熱さも冷たさも感じる事がないので体調が悪い時でも使える。
水魔法の基本的な物が終わると風魔法だ。攻防の基本と言われる風魔法はウィンドウカッターとエアシールドが主体であり基本だ。ウィンドウカッターはやり方により包丁やナイフのように手もとの物も切れるし遠距離の物も切れる。エアシールドは、身体の回りに鎧のように貼り付いて守る事を出来るし、風の盾として使えるし、その範囲全体を守る事も出来る。
4月を迎え、5歳の儀が行われる。貴族にとっては第一関門である。標準的な5歳の貴族の子どもの魔力を50として20以上の者を貴族として認めるという物だ。3月31日までに5歳になった者が対象なので3月終わりの生まれの者は不利である。特例として3月生まれで貴族になれなかった者は翌年改めて5歳の儀を受けられる。
アレン王子とマリエールが参加する5歳の儀は王都の貴族の物である。公爵令嬢であるマリエールは本来なら公爵領で5歳の儀を行うのが通例だが5歳の儀でアレン王子との婚約を発表するため王都での5歳の儀に参加する。
当日の5歳の儀の参加者は8名であった。土地持ちでない男爵や子爵4名と土地持ちであるが土地で5歳の儀をしない2名とアレン王子とマリエールである。全員20以上の魔力のある事は確認済みなのでこの会場で魔力が足りず落とされる事はない。20未満の者は予め排除され貴族の道を絶たれている。形式的な魔力検査の後1番目にマリエールが貴族達の前で挨拶する。
「満開の桜咲くこの良き日に5歳の儀を迎えられた事を心より感謝します。また国王陛下よりアレン王子との婚約についてお申し出があり謹んでお受けしました。貴族の一員となり将来の王族の一員となる事の重大さを鑑み、その責務をまっとうすべく全力で精進していく事を誓い、この国の一層の発展を祈願して5歳の儀の挨拶とさせていただきます。」
先にマリエール側からアレン王子との婚約の申し出がありこれを受けた事が述べられた。予め伝えられていた事とは言えこういった形でしかも5歳の少女が発表するとは些か驚きである。
続いてアレン王子である。
「国の行く末を担う王侯貴族の一員として5歳の儀のこの場に立てた事を嬉しく思う。父、国王の重責の一端を担えるように全力で精進していく事を誓う。国王よりマリエール公爵令嬢との婚約の事を聞きマリエール令嬢とよりこの国のために共につくさんと誓い合ったしだいである。この国の一層の発展を祈願して5歳の儀の挨拶とする。」
アレン王子もマリエール公爵令嬢との婚約について触れた。これは新手の婚約発表なのだろうか。続いて後6人の挨拶があったが先の2人の挨拶で霞んでしまった。
最後に国王からの祝辞だ。
「8名の新しい王侯貴族をここに迎え、新たな門出に幸多からん事を祈願する。既に発表した事であるし、本人達も口にしたことなので改めていう事もないが、アレン王子とマリエール公爵令嬢との婚約をここに発表する。2人が5歳の儀を迎えた本日、正式の発表になる。既にに2人は共に学び、共に遊び仲が良い。きっと良き国王良き王妃になるだろう。2人の明るい未来とこの国の発展を祈願する。」
国王の祝辞で5歳の儀が終わった。
次は側近選びである。まだ5歳という事でお互いそれ程の側近を抱えるわけではない。しかし、アレン王子は次期国王と見なされている。勿論対立候補はいる。それにまだ生を受けぬ対立候補が生まれるかも知れない。側近選びはその試金石だ。誤った選択すれば命取りだ。
王都での王侯貴族は8人だ。マリエールは最初に挨拶した。アレン王子との婚約の事にも触れた。とても5歳とは思えない見事な挨拶だった。




