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【第一話】剣豪転生

“強い”。それが最も評価された戦国時代。

その時代には最強の男がいた。

男の名は神子上典膳みこがみてんぜん


戦闘能力という点において典膳の右に出るものは居ない。それほど強く、典膳はまさしく天下無敵だったが、その称号を得るまでに典膳は人を殺し過ぎた。


神々は典膳に罰を決めた。

典膳が最も嫌がるであろう罰を。

ーー


ある病院の個室、そこには一人の男が長く入院していた。無気力に放置された肩まで伸びる長い黒髪に、瞳には正気が宿っていない。


「じゃあ蓮也君、ここに薬置いておくから時間守ってちゃんと飲んでね。」


「…どーも。」


蓮也の返事を聞くと若いナースは嬉しそうに扉から出ていった。


「ピッ…ピッ…ピッ…」


自身に取り付けられた機械音のみが静寂の病室に響く。

そんな中、蓮也は置かれた薬を見て考えていた。


(これを飲み続ける事に意味はあるんだろうか…。寝返りを打つだけで体中が軋む。便所に行く事が日に一番の運動。日中は本やパソコンをいじり暇を潰す。…生まれた時からだと17年か?こんなクソみたいな日々を送り続けて。

これ以上生きて何になる?俺の体はもう既に死んでいるのに。そして今後、それが覆る事は絶対に無い。ならば…この死体を長く維持し続ける事に一体何の意味がある?)


「…。」


蓮也の口から意図せず自然に出ていた。


「よし、死ぬか。」


右隣、テーブルの上にある果物ナイフを手に取ろうとした瞬間、ノック音が病室に響き、扉が開いた。


「入るね〜。」


腰まで伸びる茶髪のロング。

黒曜石のように黒い瞳に、赤いワンピースを着た10代後半程度の女。


蓮也は本能的に察していた。

コイツは人間ではないと。


「こんばんは雪宮蓮也。」


そうニコッと笑うと嬉しそうに窓を見た。


「見て、今日はとても月が綺麗だよ。」


人間では無い得体の知れない”何か”が、突如病室に入って来たかと思えば、月を見て嬉しそうにはしゃいでいる。

その不可思議な状況が蓮也にとっては面白くて仕方なかった。予期せぬ”非日常”、それこそが彼唯一の暇つぶしだったからだ。


「何者だ?お前」


そう尋ねると女は軽く笑みを浮かべる。


「少し昔話をしようか。

自由に生き過ぎた悲劇の男の話を。」


「昔話ぃ?」


女は嬉しそうに笑うと、大袈裟にジェスシャーしながら話し始めた。


「世はまさに戦国時代!

身分関係なく、腕っぷし次第で出世できる力が全ての時代!その時代には天下無敵と呼ばれる最強の男が居ました。」


「男は強かった。それはあまりにも強過ぎました。

その強さ故に、己の思うまま生きて自由に死ぬ事が出来ました。

ですがその代償として、男の周りには常に死体が転がっていました。

それに神は怒り、男に罰を与えましたとさ。」


「…え?終わり?」


歯切れの悪い話に蓮也は思わず口を離さんだ


「付け足すと、その罰は今まさに執行中なのです」


女はそう言うと、右手からワープホールの様な謎の亜空間を作り出し、そこから一本の刀を蓮也に投げ渡す。蓮也は何が起きてるか理解する前に、反射的に刀を受け取った。


「!!!」


刀に触れて全てを思い出した。

悲劇の男とは自分の事だと。

そしてこの刀は過去に使っていた愛剣。


「思い出せた?」


全てはお見通しかの様に、女は続ける。


「全く神様達も酷いことするよねー、私だったら耐えられないよ。」


「本当はね、このまま60年くらい無理矢理生かし続けて病死でおしまい。

死んじゃった後は何もありませんって罰なんだけど、そんなのあまりにも酷すぎるよね?」


「…それは辛いな」


「フフン!安心しなさい!

今宵私は貴方を救う為に遠路はるばるここまでやってきたのです!」


軽口を叩きながら自慢げにそう言い張った。


「救うって、そんな事お前に出来んのか?」


「当然!私はこれでも一応一つの生命ある星を任されるほど偉い神様なんだよ!それも知能の高い生命のね!」


神を名乗っているが、蓮也はこの女が例え悪魔だろうが、本当に神だろうがどうでも良かった。

この地獄の様な現状を少しでもいい方向に変えてくれるのならば、どんな相手であろうと拒む事は無い


「頼む。俺を救ってくれ。」


真剣な目で頼む蓮也。

それを見て女は誇らしげに両手を手を広げた


「私の管理している星に招待するよ!

もちろん神様達には内緒でね」


「それは…異世界転生っつーやつか?」


「うん!貴方達の大大大好きな異世界転生物だよ!

剣と魔法入り交じれる天国ってやつだね!」


「頼む!!今すぐにでも!!」


地獄からこれ以上に無い最高の形で抜け出せる。

蓮也にとってこれほどの喜びは無いだろう。


「もちろん!!

だけどその前に、貴方の性別と年齢を決めるよ。

それも完全なランダムでね」


「はぁ!?ランダム!?

好きに選ばせてくれんじゃねーのかよ!」


「ダーメ、これだけは絶対のルールなの。」


そう言うとまた右手から亜空間を作り出し、サイコロを取り出した。

それも表記が1から100まである百面体。


「このサイコロで決めます。

偶数が出れば男、年齢は数字の通りです。」


「さぁ空に投げてみて!

そうすれば勝手に止まるから!」


「…。」


蓮也は不満気な顔で、サイコロを空へ投げた。


「さぁー何が出るかなー♫何が出るかなー♫」


不細工なリズムと共に運命の時を待つ。

そして答えが出た。


「数字は15!!」


「いい数字じゃない!!成長期もまだ感じられて!さすがは地獄を生き抜いた剣豪!持ってるね!」


蓮也の頬から汗が垂れる。


(15…?奇数って事はまさか……。)


「じゃあ早速送っちゃうね!!

ええと…神”アルセーネ”が誓う、雪宮蓮也こと神子上典膳を…」


突如地面に現れた魔法陣の様な物から、青白い光の様が溢れ、病室内を照らす。


「お、おい!ちょっと待て…待ってくれ!」


「ん?」


「奇数って事はもしかして…もしかしてだが…」


「うん、女の子として転生するんだよ。」


蓮也は天国から地獄へ突き落とされる気分を味わっていた。

それもそうだろう、力で全てを解決して来た剣豪が女として生を受けるのだから。


(マジかよ!!俺が…この俺が女?これから女として生きていかなくちゃいけねーのか!?そんなのねーよあんまりだ!)


「%*+=$^’¥&8¥@…」


女神の詠唱が終盤に入り、蓮也の体は半透明へと変わっていく。


「じゃあいってらっしゃい蓮也…いや’典膳ちゃん’」


消える刹那、小馬鹿にされギリっと奥歯を噛む。だが助けて貰った手前文句も言えず怒りをそっと胸にしまった。


ーー人物紹介ーーーーーーーーーーーーーー

神子上典膳(享年76)


肩まで伸びる黒髪に、茶色い瞳。

唯我独尊と言った性格で生粋の戦闘中毒者バトルジャンキー。戦闘の腕も天才的だった為、誰よりも戦国の世を自由に生き抜いた。それ故に神々の怒りを買い、病弱な体に転生させられ生まれてから17年の間、ずっと病院に入院している可哀想な奴。

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