↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄したので愛なんていらない!と義理の弟を可愛がっていたらなぜか私が愛されたんですが!?  作者: あまNatu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/39

不信感

「――はぁ? なに言ってるの?」


 急にやってきて別れたほうがいいだなんて、なにが言いたいんだとアリーシャは首を傾げた。


「あなたの言うことに私が耳をかすとでも?」


「かさないと後悔するぞ!」


 強気のダニエルに、アリーシャはため息をつく。


「あのね。あなたは私を裏切ったの。そんな男の話を聞けと?」


「――あの男のことをちゃんと調べたか?」


「そんなことするわけ……」


「俺は調べた。そうしたらやっぱり、いろいろ変なところが出てきたんだよ」


 ダニエルはそう言うとなにやら分厚い書類を取り出して、アリーシャの目の前に突きつけた。


「ウィット公爵って確かに一時期有名だったけど、その前は聞いたこともなかっただろう? 国王陛下から直接陞爵されたって話だけれど、その前の爵位はどれくらいだったか知ってるか?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 ウィットという家名を聞いたことはなく、ブランの家が以前どの爵位だったのかまでは知らない。


「……だとしても、国王陛下から陞爵された事実は間違いないわ」


「それも変だろ。その理由が国に貢献、なんて明確でないなんて。――それに……」


 ダニエルは真剣な顔でアリーシャを見つめた。


「そもそもこの国の誰一人として、このことに疑問を抱かなかった。おかしくないか?」


「……それは……そこまでみんは他人に興味がないから」


「最初あんなに追いかけ回してた女たちもか? 調べたやつはいるだろう」


 ダニエルはなにが言いたいのだろうか?

 確かにそうやって並べられると摩訶不思議なことではあるけれど、だからといってアリーシャにブランを疑えと言うのか。


「彼は誠実な人よ。あなたと違って」


「じゃあ聞くが、公爵家には行ったか? あの男の家はどこにある?」


「――…………」


 確かに会うのは外か伯爵家のみで、公爵家には行ったことはない。


「それにあの噂。……ブラン•ウィット公爵がブサイクだなんて話し、どこから湧いてでたんだ?」


「それは――!」


「俺あの男はブラン•ウィットを語る偽物だと思ってる」


 アリーシャはついに黙り込んでしまった。

 そんなはずがないと思う心と、ダニエルが与えてくる情報に頭がバラバラに動き始める。


「アリーシャ。冷静になれ。今ならまだお前は間違いを犯さずにすむんだ」


 アリーシャはダニエルのその言葉に、彼を強く睨みつけていた。


「間違いを犯したのはあなたでしょう!? それがなによ。私のことを思って忠告しにきたって? 馬鹿にしないで!」


「アリーシャ……お前っ」


「ブランはあなたと違って私に嘘なんてついてないわ! 誠実な彼を、あなたの言葉で疑うわけないでしょう!」


 もう帰って、と叫ぶアリーシャに、ダニエルは苦虫を潰したような顔をしたあと、その瞳を彼女が持つカゴへと向けた。


「――それ、あいつに渡すために……?」


「え? ……だったらなによ」


「――貸せ!」


「ちょっと!?」


 ダニエルはアリーシャからカゴを奪うと、マフラーを地面へと落としなんども踏みつけた。


「お前は、黙って、俺の、言うことを、聞いてれば、いいんだよ――!」


 アリーシャはその光景を呆然と眺めた。

 なにが起きてるのか脳の処理が追いついてなかったのだ。

 ただダニエルによって、ブランへのプレゼントが汚されていっているのだけはわかった。

 踏みつけられた白と青のマフラーは、靴底の汚れをつけられ土だらけになっている。

 そう思った時、アリーシャは無意識にも飛び出していた。


「――やめてっ!」


「――なっ!」


 そんなことをすればどうなるか、冷静に考えたらわかるのに、やはり思考はうまく回っていなかったようだ。

 アリーシャは踏みつけられるマフラーを庇うよう手を伸ばし、その指はダニエルによって強く踏みつけられた。

 鋭い痛いが指先を襲ったが、アリーシャは意地でマフラーを掴むと庇うように胸元で抱きしめた。


「――出て行って! 今すぐに!」


「……あ、アリーシャ。怪我は……」


「今すぐ出ていかないと人を呼ぶわよ!?」


 これ以上の騒ぎを起こしたくないのだろう。

 ダニエルは気まずそうにアリーシャの砂だらけの手を見たあと、おずおずと踵を返す。

 だがまだ言いたいことがあるのだろう。

 彼は最後にも振り返った。


「――俺は必ずあいつの正体を暴いてみせるからな」

 

 そう言い捨てて去っていくダニエルの背中が完全に消えてから、アリーシャは止めていた息を吐き出す。


「――はぁ、」


「お嬢様! お手を……!」


 慌ててナナリーがアリーシャの手を見るが、その指は青白く腫れていた。


「――なんてひどい……っ! 誰か、医者を!」


 ドーパミンが落ち着いたのか、指先からドクドクと痛みが脳へ伝わってきた。

 だがアリーシャは自分の指よりもマフラーばかり見つめてしまう。


「……あと少しだったのに」


 もう一日でもやれば、ブランに渡せたのに。

 そうしたらあの、綻ぶような笑みが見れたというのに……。


「…………ごめんなさい、ブラン」


 彼へのプレゼントをこんなふうにしてしまった罪悪感か。

 はたまた指の痛みのせいなのか。

 わけのわからない深い感情が襲ってきて、気づいたらアリーシャはぽろぽろと涙をこぼしていた。

 薄汚れたマフラーを胸に抱いて――。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。