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婚約破棄したので愛なんていらない!と義理の弟を可愛がっていたらなぜか私が愛されたんですが!?  作者: あまNatu


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ご報告

 心労が限界突破したパーティーだったなと、アリーシャは青ざめた顔で歩む。

 とんでもなく疲れたパーティーを、無事終わらせられたことだけは感謝するより他にない。

 それもこれもあのブラウン•ウィット公爵のおかげだと思うと、なおさら胃が痛くなってくる。

 本当にあのイケメンが自分の婚約者なのだろうか?

 実は全て夢で、明日惨めなパーティーに挑むことになるのでは……?

 と不安に思いながらも、アリーシャはラルフが眠る部屋へとやってきた。


「――ラルフ? 起きてる?」


「…………ねえさま?」


 少しだけ熱が出てしまい、しぶしぶパーティーを欠席したであろうラルフ。

 お見舞いと称して癒されに行ったアリーシャは、大人しくベッドで寝ているラルフの元へと向かった。


「大丈夫? 熱があったって……」


「もうだいじょうぶです」


 そうは言っても心配だとおでこに手を当てるが、確かに熱さは感じなかった。

 子どもによくある突発的に出る熱だったようで、重病ではなかったようだと安堵のため息をつく。


「――あら? お風呂に入ったの?」


 髪が濡れていることに気づき問えば、ラルフはぴくりと肩を震わせた。


「あ、はい……。汗をかいたのでねつもさがったし、いいかなと」


「――そうね。熱が下がると汗かいちゃうものね?」


 ラルフは綺麗好きなのだ。

 だから汗をかいたままでいることが許せなかったのだろう。

 アリーシャもどちらかといえばそのタイプなので、気持ちはわかると頷いた。


「熱が下がってよかったけれど、パーティーに出られなくて残念だったわね……」


「はい。でもしかたないです」


 その通りだが、この幼さにしてこの物わかりのよさはいい子すぎると抱きしめた。

 もっとわがままを言って欲しい気もするが、うちの弟は素晴らしいでしょうと世間に大声で叫びたい気もする。

 とはいえさすがにパーティーに出れず悔しかっただろうなと頭を撫でていると、ラルフが不意に口を開けた。


「――ねえさまは、パーティーたのしかったですか?」


「え? ……ああ、うん……」


 ラルフに夢を持って欲しいから、楽しかったと力説したかったが、残念ながら疲労困憊の体ではできそうになかった。


「……そのぉ、ね? 姉様、婚約したのよ……」


 姉好きだと勝手に思っているラルフが、どんな反応をするかわからなかったから恐る恐る聞いたのだが、彼は何事もなさそうに頷いた。


「しってます。ねえさまのこんやくパーティーですよね? どうでしたか?」


「どうって……」


 どう説明するのが正解だろうか?

 悩むアリーシャに、ラルフはどこか前のめりで質問してきた。


「ねえさまはあいてのことをどう思いましたか?」


「――そ、そうね……」


 ラルフに聞かれて、忘れようとしていたブランの顔を思い出してしまった。

 恥ずかしながらこれは一目惚れというやつなのだろう。

 好みど真ん中を猛スピードでやってきた彼を、どうして否定できようか。

 しかもあんな窮地を助けてくれたのだ。

 気分はもう、運命の相手に出会ったような気分だ。

 好感度は明らかに高い。

 だからこそ慎重に動かなくてはならないのだ。

 またしても夢見がちな女だと、呆れられたくはない……。


「……と、とっても素敵な人よ」


 とはいえ、だ。

 ラルフにくらいは話してもいいだろうと、アリーシャは口を動かす。


「とにかくかっこいいの。もちろん見た目が全てでないことはわかってるわ。そこはあの最悪な状況で助けてくれたっていうところも大きいと思うの」


 ああ、止まらないと、まるで油を塗ったかのように言葉がツルツル溢れでた。


「でもなにより見た目がとっても好みで……。とにかくかっこいい人で、こんな人が私の婚約者なんて本当に? としか思えないの」


 釣り合わないのではとかいろいろ考えてしまうのだと、アリーシャは軽く頭を振る。

 一度男性に裏切られているからか、自分でも情けないくらい臆病になってしまっているのだ。

 だからこそ、ブランから親睦を深めようと言ってくれたのは嬉しかった。

 少しでも彼を信じられるきっかけが欲しい。


「…………ラルフ? 大丈夫?」


 あれこれ語ったけれど、聞きたがっていたはずのラルフからの反応がない。

 どうしたのかと覗き込めば、なぜかラルフの頰がほんのり赤くなっていたのだ。


「――熱!? もしかしてぶり返したの……!?」


「……そ、そうかもです。僕はねます……」


「ごめんね! 私が無理させたからかも……!」


 これはいけないと、アリーシャはラルフをベッドに寝かせる。

 無理をさせてしまったかと慌てるアリーシャに、ラルフは寝転がりながらも微笑んだ。


「ねえさまのせいじゃありません。……おはなし、きかせてくれてうれしかったです」


「――ラルフ……」


 つらいだろうに、気をつかってくれるなんて本当に優しい子だ。

 ありがとうの意味を込めて頭を撫でてあげれば、ラルフは体から力を抜く。

 眠いのだろう。

 瞼がゆるゆると落ちていく中、ラルフはぼそりとつぶやいた。


「よろこんでもらえて……よかった……」


「ラルフ……?」


 なんだか少しだけ不思議な呟きをした気がしたのだが、アリーシャが聞き返した時には、ラルフはもうぐっすりと眠っていた。

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