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106/106

106.飛び級

 コレットが産んだたまごはカラフルな色合いだった。

 今までで見てきた「たまご」の中で、一番カラフルな物だった。


 しかし、そのカラフル以上に目を惹くものがあった。


「なんか……脈打ってる? こういう物なのかコレット」

『さあ……あたしもたまごを外から見るの初めてだから』


 たまごを産んだ直後だからか、コレットはまだまだちょっとぼんやりとしてて、心ここにあらずって感じで返事をした。


「そりゃそうだ」

『くははははは、ドラゴンに詳しい心友でも、産みたてのたまごをみるのは初めてか?』

「ああ、こんなものなのか」


 今度はクリスの方を向いて、彼女に聞いた。


『うむ、この脈動がいわば心音の様なもの。人間はこれで仔の出来を推し量ったりもするそうだ』

「へえ」

『えっ?』

「どうしたコレット」


 クリスの言葉に何か思うところがあったのか、コレットはびっくりしたような顔でクリスを見た。


『推し量るって……いいとか、ダメとか判断する、ってこと?』

『うむ、我も詳しくは知らんが人間なりの基準があるようだ』

「まあ……そりゃあるだろうな」


 俺は小さく頷いた。

 竜騎士として、ドラゴンの種ごとに特徴があるのなら、その種の特徴を更に測定する基準はあってもおかしくないし――むしろあるべきだ。


『そうなの?』

「ああ、例えばコレットはムシュフシュ種だろ? ムシュフシュ種の胃袋の大きさは積載量そのままだから、それを測る基準は竜騎士にとって大事なものだ」

『……』


 俺の言葉を聞いて、コレットは何故か青ざめた。

 人間の目から見ても一目瞭然な位顔が青ざめて、すすす――とたまごをかばうように体の位置を入れ替えた。


「どうしたんだ?」

『こ、この子は』

「うん?」

『この子を、測らないで』

「……ああ」


 少し考えた後、俺はハッとして、ポンと手を叩いた。

 そうか、


「そういうことか。大丈夫だコレット」

『え?』

「俺が今言ったのは竜騎士にとって(、、、、、、、)の話だ」

『竜騎士にとって?』

「一般論って事だ。大丈夫、その子を間引く(、、、)事はしないさ」


 笑顔のままそう言いきってやると、コレットは見るからにホッとした。

 今の竜騎士ギルドにいるドラゴンたち――レアのような原種以外のドラゴンは、みんな人間の手が入っている。

 人間の手によって「生産」されて、当然、「取捨選択」されている。


 今のところ(、、、、、)それをどうにかする力はないが、少なくとも、俺の手の届く範囲ではそうさせるような事はしない。


『ありがとう……』


 コレットは穏やかな口調で、俺にお礼を言ってきた。

 いつものように「別に感謝してるわけじゃないんだからね!」的なオマケが付いてくるのかと身構えていたが、そうはならなかった。

 コレットは、体を器用に使って、たまごを包み込むようにした。


 人間の俺の目から見て、はっきりと母親の顔になっていた。


     ☆


「やっぱりシリルさんはすごいです!」


 家の中。

 コレットが無事たまごを産んだと言うことで、一連の出来事でくたくたになった俺は、今日はもう休もうと思った。

 リビングでくつろぎ、ジャンヌと向き合っていた。


「本当にマスタードラゴン以外のドラゴンにたまごを産ませてしまうなんて……聞いたことがありません。さすがです!」

「ありがとう。あとはたまごが孵るのを確かめて、コレット以外にも希望があれば産んでもらおう」

「これで『ドラゴン・ファースト』がますます大きくなりますね!」

「そうだな」


 俺はソファーに深く体を沈ませながら、考える。

 もちろん、ドラゴンたちが産みたいっていうのが前提だけど、その上でどういう風に産ませるのかを考えた。


 特に数を増やしたいのは、コレットのムシュフシュ種と、エマのスメイ種だ。

 ムシュフシュ種は運搬、スメイ種は戦闘に特化したいわば「兵」。

 この二種類は特に「数」が重要な種だ。


 コレットはたまごから仔ドラゴンが孵ってもしばらくはそっちに意識がいきっぱなしって可能性もあるから、次はエマになる可能性が大だな。

 なら、今の内にエマに話をしておくか。


 そう思って、ソファーから体を起こし、竜舎の方に行こうと思った、その時。


 コンコンコンコン――玄関のドアがノックされた。

 ドアノッカー特有の重くてよく通る音がリビングにまで伝わってきた。


「あれ? お客さま……ですか?」

「そうみたいだ」

「こんな時間にだれでしょう?」


 ジャンヌは不思議そうに首をかしげた。

 俺も不思議に思いながら、ソファーから立ち上がった。

 リビングから玄関に向かうと、ジャンヌも一緒についてきた。


 移動する間、ドアノッカーはずっとコンコンコンと叩かれっぱなしだ。


「はいはい、今開けますよ」


 そう言いながら、玄関のドアを開けた。

 そこに見知った顔があった。


「ローズ?」


 訪ねてきたのはローズだった。

 彼女はなぜか、息を切らせて、驚いたような、信じられない何かをみたような、そんな顔をしている。


「どうしたんだ? そんな顔をして」

「シリルさん! 何があったんですか?」

「なにが?」

「シリルさんのギルドランクですよ!」

「ギルドランク?」


 俺は首をかしげて、訝しんだ。

 ギルドランクがどうしたっていうんだ?


「えっと……ちょっと待って」


 ローズにそう言って、俺はギルド妖精を呼び出した。


 ギルド妖精は飛び出るなり、いつか見たようなランクアップの動きをした。

 それはなんと、一つだけではなかった。


 一つ、二つ、三つ――。


 なんと、ギルドランクが一気に3つもあがっていた。


「ええ?」

「ほら」


 ローズは、これの事で来たみたいだった。

 ――って、なんで?

皆様のおかげで書籍化が決まりました。

つきましては

・書籍化の詳細

・タイトル変更

・ローズおよびギルド証まわりの変更

について活動報告でご報告いたしますので、そちらを読んでいただければ幸いです。



また。


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