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第8話 二日目と毛皮と飛行と爆発 後編

 爪使いの魔法少女は、孤独だった


 極めて一般的な家庭環境で暮らしていた彼女は、決して裕福ではないものの親からはたくさんの愛情を受け、

常に幸せを感じて暮らしており、それが今後も続くと思っていた。

そして彼女が14歳になる頃、体にとある変化が起きたのだ。

『爪が自在に伸び、ナイフ以上の鋭さになる。』


 彼女の両親は裕福ではないが決して無知ではなかった。これが魔法少女の『魔法』という現象だと理解し、

娘が魔法少女だと知れ渡られれば貴族や豪商の護衛として強制的に雇われ、今までの生活は送れなくなるだろうという事も知っていた。 


「その能力は決して誰にも見せない事」それを娘に徹底させ、彼女もそれを徹底して守った。


それから数月後のある日。農家であった彼女の家庭は農作物を契約している商人に渡す為、いつも暮らしている村ではなく、歩いて三日ほどかかる大きな街に行く事となった。 今までの年は父親だけで行っていたのだが、街に憧れのあった彼女は父親に頼み込んだ。今年は豊作だった為、父親もたまには贅沢させてやろうという気持ちで了承した。


馬を隣人から借り、作物と彼女を荷車に乗せ、彼女とその父親は出発した。


何事もなく街に着いた彼女は父親に小銭を握らされ、街を自由に行動して良いと言われた。彼女は大いに喜び、街中を散策していると一つの占い屋が目に止まった。値段を確認し、自分のお小遣いの範囲でも利用できることを確認した彼女は店の中に入り、中を見る。彼女にとって室内は暗く、良く分からないがおそらく女性だろうと推測する。それもやや派手な服装の

 

「あなたには特別な『力』がある。両親に楽をさせてあげるためにも、うちで働きませんか?」


彼女はそれに頷かなかった。まだ両親も若く、負担を掛けているという自覚も薄かった。


彼女は思う。 ここで頷いておけばどれだけマシな人生となったのだろうかと。


そして父親の下へ戻り、いつもとは違う贅沢な夕食を食べた。次の日の朝には帰り支度をし、何事もなく帰路に就いた。三日後には母親が出迎えてくれ、1週間ぶりに家族3人で食卓を囲んだ。

しかし、変化は次の日から訪れる。


まず、家に謎の嫌がらせがあった。 決して家としての機能に問題が出るほどではなのだが、壁に無数の傷がつけられていた。 両親はそれを不審に思い、村の住民達に聞いたのだが知っているものはいなかった。 両親は近所付き合いも大事にしていたので、村全体からの嫌がらせという訳ではなかったのだろう。


そして数日後、父親が死んだ。 彼女と母親が少し外に出ている間、家が倒壊したのだ。

『まるで誰かが爆発させたように』


母親も父親が死んだ事で精神を病み、彼女は決心する。


数ヶ月後、彼女は貴族の護衛に就いていた。

自分が魔法少女である事を言い、実際に目の前で見せれば大抵の者は護衛として雇う事を歓迎してくれた。

その中でも一番高い給料を払う貴族に彼女は就いた。貴族にとっても親を養うために働いているという理由がある為他の貴族に対しても体面がつく上に魔法少女だ。

魔法少女が護衛しているという事実だけで暗殺者を送ろうと目論む輩もいなくなり、クーデター等の抑止力になる。彼女自身も人付き合いは良く、魔法少女という理由だけで護衛に付いている事を妬む輩も少なかった。また働いている理由の事もあり、彼女は見る見るうちに領内での人気者となっていた。

彼女には恋慕している人物がおり、それは領主の跡継ぎだった。二人は両思いであり、平民出身とはいえ魔法少女でなおかつ人気のある護衛官と領主の息子。釣り合いが取れており、現領主もそれに納得していた。


さらに数ヶ月後、惨劇は起こる

二人が結婚する前夜、彼女は母親の病室にいた。虚ろな返事しかしない母親に結婚相手の事や今の心情を話してゆく。そして領主の屋敷に戻り、信じられない光景を目撃する。領主や仲間の護衛官、そして自身の結婚相手が惨殺されているのだ。 


「お、帰って来まシたか!」


後ろから声を察知し振り向くとそこには、おそらく初めて見る自身の同類、そう魔法少女が一人いた。


「いや〜スンませんねホンマ! まあコッチも仕事でやってますンで! はい」


「ま、コッチはいわゆる『スカウト』しに来とるンですわ!」


「で、『抵抗した後コッチに来まス』か?それとも『抵抗しないでこっちに来まス』か?」


少女は意思を固める


「お生憎様!私はそちらに行くつもりは無いわ」


「つまりは『抵抗した後コッチに来まス』って事でスか? そうこなくちゃでスね!」


そして、戦いのゴングが鳴る

「変身!」


結果から言うと、負けた。それも手加減されて。

そして彼女の意識は落ちてゆく、、、、


「ここは?」

彼女が目覚めるとはそこ地下室だろうか、陽の当らぬ、石造りの壁でできた部屋だった。


「お、目覚めまシたよ、『ボス』」


先ほど彼女と戦った魔法少女が、『ボス』と呼ばれている人物に話しかける

そして『ボス』と呼ばれている人物も彼女に話しかける

「おはよう、寝心地はどうだ?」


「最悪ね、まだ父さんが死んだ日の夜の方がよく眠れたわ」


少女は悪態をつき、『ボス』は笑う


「そうか!!でも『その日は一睡もできていなかった』だろう?」


「なんで私のプライベートを知ってるんですかねぇ、、、」


少女は困惑し、『ボス』は彼女に話を持ちかける


「ものは相談なんだが、お前の母親の命は私たちが握っている。お前が私の配下に就くと言うのなら解放してやろう。

もちろんお前が「母親の命なんかどうでもいい」と言うのならお前を解放してやる。一生両親と結婚相手の墓を見る生活も悪くないだろう? どうする?」


彼女の性格を考えると実質選択肢のない選択をボスは持ちかけ、彼女は答える


「もちろんあなたの下につくわ」


「『言った』な?」


『ボス』は能力を発動させる


「契約は絶対だ。私の『異能』にお前はもう掛かっているのだよ」


そして彼女は魔法少女の団体、『Lovers』に入団する事となった。


そこからさらに数ヶ月後、彼女はとある『能力者』と組んでいた。

『魔法少女』ではなく『能力者』。しかしその少女は自身を魔法少女と信じ込んでおり、常に派手な格好をしながら彼女を『いないもの』として扱っていた。

彼女の『魔法』と少女の『異能』は相性が良く、どんな相手も殺してきた。


またボスから指令が出た。

今回も楽に倒せるだろう、そう思い彼女の回想は終わる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

目の前にグリフォンが迫り、自身が食べられる直前だという事を直感的に察知する。これが走馬灯というやつか。指令に失敗したとなればおそらく利用価値の無くなった母親も殺されるだろう。

そう思うと急に冷静になる


「お父さん、私も今そちらへ行きます。お母さん、私も一足先に父さんと待っています。」


そしてLoversの幹部にして二人組、”アリス”はこの夜敗北を喫し、二人は死んだ。

(救いは)ないです

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