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第9話 戦後と誤解と宴

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 市長視点


 市民が爆発音で目覚め、その爆発音の元へと大勢が駆け寄る。

 起きた赤ん坊を必死に寝かしつける者も居るが、ほぼ全市民が


「大丈夫ですか音自衛さま!!!」


 市長は必死に民衆の列をかき分け音の発信源へと駆け寄る。市長は爆発が起きた場所にグリフォンの契約者がいる事を知っているのだ。

 そこには血まみれで半裸のまま立ち尽くす青年と一人のグリフォン、そして3つの死体が有った。

 死体はどれも壮絶な物であった。切り傷だらけで下半身が破裂している中年の男、体の大部分が何かに食べられたかのような姿の死体(性別はわからない)、そして倒壊した一軒家に潰されている少女。一軒家の主が観衆の中にいる所を見ると、無事に避難はできたようだ。誰かが呟く


「おい…あの死体ナン=Jじゃないか?」


 本当だ、市長は破裂死体を見て気づく。彼は長年ホテルの清掃をやっている男で、嫁には恵まれなかったが真面目でいい奴だった。しかし彼はこんな現場で戦うような男では無い。大方爆発に紛れこまれたのであろう。しかし市民はそんなところまで深く考えない。誰かが呟く、確証の無い疑念を


「あいつがやったんじゃ無いのか…?グリフォンの飼い主が…」


 また他の誰かが呟く


「そうだ…グリフォンなら音を出さずに殺す事もできる筈だ…」


 誰かが呟く、後押しの一言を


「…! グリフォンの嘴が血まみれだ」


 そこには気づくのになぜナン=Jの死体の破片があちこちに散らばっている事に気がつかないのか、市長は思うが声には出さない。グリフォンの迷信に従うより市民の心情の方が大事だと思っている市長は、声に出さない。 あくまでグリフォンの飼い主を歓迎したのは市民がグリフォンの迷信を心から信じている為であって、市長がグリフォンの迷信を信じているからでは無かった。


 青年は悲しそうな顔をするが、声には出さない。何か言えばまだ間に合うかもしれないのにだ。


「ま、待ってください!」


 そんなグリフォンに対する疑念が渦巻く中、一人の男が飼い主の元へ寄る。先ほど家を壊された奴だ。


「私は飼い主の方がしていた事を全て見ました!」


 民衆が騒ぎ、誰かが声を張り上げる


「そうか! これでナン=Jがどうやってグリフォンに食われたのかがはっきりするな!」


 一軒家の主もそれに負けじと声を張る


「いえ!彼がしていた事はまさに英雄…いや神話的と言ってもいいでしょう!」


 そして家の主は饒舌に喋り出した


「まず…私の家の前でホテルが爆破されました。私はその音で起きたのですが、外では伝説の『魔法少女』が二人いました! 一人はホテルを爆破した犯人、そしてもう一人はなんとグリフォンの飼い主さまだったのです!」


 周囲から驚いたような声が上がる。それほどまでに魔法少女とは希少かつ圧倒的な存在なのだ。


「私が慌てて家から出て、路地の裏から様子を伺おうとしましたが、その時には飼い主さまは既に相手の『物を自在に爆破する魔法』で追い詰められていました!」


「そして相手は卑劣極まる行動に出たのです! なんと奴は人を操り屋上から真っ逆さまに人を落としました…その被害者がそう!我々の知っている通り「ナン=J」氏!その人なのです!」


 そして一気に喋る速度が加速する


「勝つためには手段を選ばない卑劣な相手! 信じられないことに奴は『人を爆破』させたのです! その我々と同じ人間とは思えないような行為に対し、とうとう飼い主さまの怒りは爆発しました! 

 本気になった飼い主さまはなんと相手の魔法を押し返し『逆に相手を爆破』してしまいました!」


 民衆が息を飲み、彼の言葉を聞いていく


「しかし安心もつかの間、そこにはなんと『3人目の魔法少女』が現れたのです! 既に飼い主さまは満身創痍! 敵は『爪を自在に操る魔法』で飼い主さまに迫りますが、なんと飼い主さまは伝説の『瞬間移動』で相手を倒してしまったのです!」


「そしてグリフォンさまが駆けつけ、一気に『3人目』の大部分を食べてしまったのです!」


 事の端末を聞いた民衆は感嘆の息を漏らす


「凄い…」


 家主の発言と状況に矛盾する点は無かった。圧倒的な「力」ただそれが大勢の人間を圧倒し、心を掴むのだろう。


     「「「「「「「「うおおおおおおおおおお!」」」」」」」」


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音自衛視点


(どうしてこうなった、、、、)

魔法少女2人(正確には一人だが)を倒し、少しぼんやりしていたらこの街の市民が周りに集まっており、何かとてつもなく盛り上がっている。この感覚はあれだ。

「クラス全体がなんか大笑いしてるけど自分だけ聞いてなかった時の気まずい雰囲気」そのものだ。誰しも一回はあるだろう。 しかし今回の盛り上がりっぷりは尋常でない、もはや涙を流したり祈るようなポーズをしている者までいる。 場の雰囲気は少し盛り下がるかもしれないが仕方がない。聞いてみよう。


「あの…一体何かありました?」


こっそり前の列にいる人に聞いてみる


「このような修羅場をなんとも思っていない…? それほどの強さとは…」


あ、この人市長だ。めっちゃ驚いてるらしいけどそうか、この戦いについて話してたのか。

そりゃ魔法少女の少ない世界で2人も同時に同じ場所に揃うのは珍しいからな


なにやら市長が大勢に呼びかけている。どうやら宴を開催するそうだ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夜が明け、宴も終わる。早朝に細い路地を一人歩く俺は、前に人がいることに気付く。女性だ


「ちょっと前通るぞ」


道が細いため、体を横に向けながら歩こうとする。が、女性は真ん中を陣取り動かない。


「おい、おま「あなた、音自衛って人ですよね?」


いきなり言葉を遮られたが、俺は答える


「そうだが…宴に来てた奴か?とりあえず道を譲ってくれないか?」



「やっぱりそうでシたか!あなたを『スカウトしに来ました』♡」


「変身♡」


この戦いで、音自衛の運命の歯車は大きく動き出す

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