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33.戦争前夜 2

 本日投稿2話目。

 トリス市にある領主の館へ行き、領主であるアレックス・トリス伯爵との面談を申し込んだ。

 その時、手土産として王都の甘味を渡した。

 もちろん、事前にアレックス様は甘味が大丈夫だと確認してある。

 今は色々と忙しくてお疲れだろうから、甘いもので心と体を癒して欲しい。


 しばらくすると、アレックス様の執務室に通された。


「初めまして、私はセト・イツクシマ男爵と申します。以後、お見知りおきをお願い致します」

「アタシはセトの妻で、シェリス・イツクシマと申します」

「うむ、私はアレックス・トリス伯爵だ。セト殿、シェリス夫人、この度はご苦労である」


 アレックス様は、50代と思われる精悍な顔つきの男性だ。

 髪はオールバックでまとめ、髭は綺麗に剃ってある。

 しかし、そんな男前な顔つきも、今は少し疲労の影が見える。

 不作に続きシャピナ共和国が攻めて来ると言うのだから、お疲れなのだろう。


「早速だが人員と物資の輸送について、話がしたい」


 アレックス様は、そう言いながら軍隊の布陣や補給基地について説明し始めた。

 どうやら、軍隊は市外に展開する様だ。

 来た時には気づかなかったが、トリス市の北方には平野が広がっており、そこへ仮設駐屯地を整備すると言うのだ。

 となれば、兵士や物資はトリス市外の駐屯地へ直接輸送すれば効率的だろう。


「承知致しました。それでは、転移門は駐屯地へ開くことと致します」

「ああ、それで頼む」


 これで、兵士と物資の輸送の予定については決まった。


「ところで、トリス市内は見てきたのか?」


 話すべきことは終えたので退室しようと思っていると、アレックス様が声を掛けて来る。

 今さら観光の案内でも無いだろう。

 恐らく、市内の様子について聞きたいのだと思う。


「ここへ来る前に少し市内を散策して参りました」

「して、どうであったか?」

「およそ落ち着いた雰囲気でした。物価も特に上昇してはおらず、流通も機能しているように見えます。ただし、治安は少し悪化していると思われます。何度かスリに狙われました」

「そうか、普段であればスリなんぞ居ないのだがな。よし、すぐに対策を打とう」


 どうやら、アレックス様の仕事を増やしてしまったようだ。

 しかし、放置しておいて状況を悪化させるよりは良いだろう。


 領主の館から出た後、駐屯地の設営予定地へ視察に行った。

 これで、いつでも王都からトリスの駐屯地へ転移門を開くことができる。


◇◇◇


 トリス市から転移門で王都に戻った頃には、もう日が傾いていた。

 報告は明日にしようかと思ったけど、宰相のローレン様が首を長くして待っているだろうから、その日のうちに報告に行く事にした。


 王城でローレン様への面会を求めると、事前に連絡されていたのだろう、すぐにローレン様の執務室へ通される。


「ローレン様、セトです。ただ今トリス市より戻りました」

「セトか、待っておったぞ。して、トリスはどうであった?」


 トリス市内は落ち着きを保っている事、治安の悪化が見られるがアレックス様にて対処がなされている事、兵士の駐屯予定地は市外であり今すぐ受け入れ可能である事を報告する。


「なるほど、アレックスはうまくやっておる様だな。それでは予定通り、明日から駐屯地設営部隊を派遣するとしよう」


 明日からトリス市へ行く予定だったのか。

 報告を明日に回さなくて良かった。


「ところで、公都レイタルを知っておるか?」

「はい。王都から南東の穀倉地帯にある大都市ですよね」

「その公都レイタルと王都の間に転移門を開いてほしいのだ」


 これは、予定に無い地域への転移門設置になるな。


「私は公都レイタルへ行った事がありませんので、一度公都レイタルへ行く必要があります。今からですと馬車を使っても4日後になるかと思います」

「4日後では間に合わんのだ。明日の朝までに何とかならんか」


 これまた困った無茶振りだ。

 転移先をイメージしなければ、転移門を作ることが出来ない。

 つまり、今すぐに公都レイタルの土地をイメージできる方法があれば、実現できそうだ。


 そこまで考えを整理すると、3つほど方法が思い浮かんだ。

 1つ目は、公都レイタル方面の上空に転移門を作り出し、空から観察する方法だ。

 この方法は、およその方角が分かれば、行った事のない場所でも見ることが出来る。

 しかし、長距離だと何度も転移門を作る必要があるため、魔力の消費が激しすぎる。


 2つ目は、魔導車を借りて公都レイタルへ行く方法だ。

 今から夜通し走れば、明日の朝までには公都レイタルへ着くだろう。

 この方法だと、明日は寝不足になるので、出来れば他の案にしたい。


 そこで、今回は3つ目の方法を使う事にしよう。

 出来るかどうかは未確認だが、何とかなりそうな方法がある。

 そう思い、シェリスの方を見る。


「アタシ? アタシも公都レイタルには行った事が無いわよ」

「うん、それは知っているよ。でもね、シェリスの【マジックサイト】で公都レイタルを見れば、転移門を開けると思う」


 ちなみに、【マジックサイト】は次のような魔法だ。


【空間魔法】Lv7 【マジックサイト】

  【消費魔力】 50

  ・遥か遠くの場所をリアルタイムに見ることができ、音を聞くことも出来る。

  ・対象の場所は任意に移動させることが出来る。


「そっか。イメージさえできれば、行った事が無くても転移門を開けるという訳ね」

「いや、まだその可能性があるだけだよ。空間魔法の【ワープゲート】は、実際に行ったことが無いと転移門を開けないしね」

「あ、そうだったのね」


 ここは、ローレン様に許可を得て、すぐに確認するのが良いだろう。


「ローレン様、そういう事ですので、今ここで確認しても良いでしょうか」

「うむ。時間が掛からないのであれば良いぞ。私も転移門を見てみたいからな」


 仕事人間のローレン様でも、レア魔法には興味津々の様だ。

 ローレン様から許可が得られたので、シェリスに実演してもらおう。


「それじゃ、シェリスお願い」

「わかったわ」


 そう言って、シェリスは目を閉じる。

 恐らく、【マジックサイト】で公都レイタルを探しているのだろう。


「あった、ここね。公都レイタルの郊外へ転移門を開いてみるわ」


 シェリスはそう言いながら転移門を作り出した。

 転移門の中には、大きな都市が見える。

 おそらく、これが公都レイタルなのだろう。


 それにしても、暗黒魔法は随分と制約が少ないな。

 暗黒魔法を作り出した神様は、日常使いされるとは思いもしなかったのだろう。

 おっと、それよりも、今は公都レイタルへの転移門だ。


「ローレン様、都市への転移門が開かれたのですが、公都レイタルで合っているのか確認をお願い致します」


 そう言って、都市の全貌が見える場所をローレン様に譲る。


「うむ、どれどれ。おお、これは確かに公都レイタルだな。これは中に入っても大丈夫なのか?」

「ええ、どうぞお入り下さい」


 ローレン様に続き、私とシェリスも転移門に入る。


 公都レイタルは、平原の中に佇む巨大な都市だ。

 プロイタール王国南方の穀倉地帯の半分を取り仕切る、レイタル公爵の本拠地でもある。

 自然に発達した都市だからだろう、遠くから見ると少し雑多に感じる。

 まあ、整然とした街よりは、少し雑多な方が住みやすいと言うし、悪くは無いと思う。

 観光するのがとても楽しみだ。

 これは、早く戦争が終わる事を祈るしか無いな。


「セトとシェリスよ。行ったことの無い場所に転移門を開ける事は、絶対に誰にも話すなよ。常設転移門どころではなく、セト達を巡って戦争になりかねん」


 それは何となく理解できる。

 敵の本拠地へ兵士を送り込んで不意打ちすれば、戦争は百戦百勝になるだろう。

 その気になれば、暗殺もし放題だ。

 うん、どう考えても最終兵器だな。

 ……まあ、暗黒魔法一つ一つが、無慈悲で凶悪なリーサルウェポンだという意見は、この際置いておこう。


「分かりました。シェリスは公都レイタルに行った経験があると言う事にしておきます」

「わかったわ、アタシも秘密にしておくわ」

「うむ、それでよい。それにしても、転移門とは便利なものだな。私が視察に行くとき、ぜひお願いしたい物だ」

「その節は、ぜひ魔導ギルドまでご依頼ください。快く引き受けさせて頂きます」

「ははっ、なかなか商売上手だな」


 それからは、ローレン様の執務室に戻り、軍閥貴族の方々や兵站の士官と簡単な打ち合わせをした。

 私とシェリスのどちらも転移門を作れると知ると、みんな大喜びだったよ。


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