Miso soup Episodeー001
久しぶりに実家へ帰った、玄関のドアを開けた瞬間、懐かしい匂いがした。
「おかえり」台所から母が言った。
「ただいまぁ~」
荷物を置き、食卓へ向かう。テーブルの上には夕食が並んでいた。
「今日は、あんたの、好きなものばっかを作ったわよ」
「ありがとう!!!」
椅子に座ると、みそ汁の湯気が、ふわっと漂った。私は思わずお椀を覗き込んだ。
「あっ、麩の味噌汁じゃんっ」
「そう、昔から、好物だったでしょーっ」
「わぁ、懐かしいよ」
[何が・・・・・・っ?」
「小学生の時、『恐怖の味噌汁』って、なぞナゾというか言葉遊び、あったからさぁ、それ思い出したぁーっ」
母は笑った。
「あーーーっ、あったね、あったね、流行ったわ、思い出したぁー」
「恐怖の味噌汁、"今日 麩の 味噌汁"ね」
二人で大笑いした。
何十年も前の、くだらない、言葉遊。文節を切るところを変えると意味が変わる。
けど、胸の奥が少しだけ熱くなった。
「そぅ言えば、あの頃よく友達とそんななぞナゾで遊んだ、他にもあったけど、忘れちゃったよ・・・」
「そうね、こっちまで楽しませてもらったわ」
「えっ、そうなのぉーーーっ」
私は笑った。
その時他人の笑い声も重ねて聞こえた気がした。
「今、誰か笑った?」
「えっ・・・っ」
「・・・・何でもない、気のせい、気のせい」
母は不思議そうな顔をした。
残りの味噌汁を飲み、この味噌汁が記憶を覚ますことになるなんて、その時の美有は、知らなかった。




