Epilogue
「いててチクショー」
決着が着いて俺たち三人は屋上で座り込んで休んでいた。今は朝の五時くらいか?雲の間から射し込む日の出が眩しい。
「ほら、動かないで」
俺の撃たれた右肩をコーダがハンカチで抑える。困ったように続けて言った。
「帰ったらちゃんとした包帯巻かなきゃ」
「あー、心配いらねーよ。今から治す」
「治すって、どうやるのさ?」
コーダが目を丸くしてる前で俺は立ち上がる。
「多分オメーもさっきのターボでやってんじゃねーかな?その傷を治しただろ?」
コーダの腕の傷跡を指さして言った。
俺は深く深呼吸した。
「んぅっ!」
小さくターボを吹かす。龍眼になり耳からポンッと蒸気のようなオーラが吹き出す。
そして……
「うおおおぉぉぉぉぉ」
仁王立ちで全身に力を込め、オーラを駆け巡らせた。
右肩が「ミシミシ、メキメキ」と軋む音と共にみるみる銃創が塞がっていった。
仰天したコーダとジェニファーは固唾を飲んでその模様を見守っている。
よし、完全に傷は塞がったな?
俺はターボを解除し、全身から湯気を出した。
「ふぅ」
「今のって……」
「「再生」だ。これ結構難しいし、初めてのターボでいきなりやれたなんて相当ヤバい状況だったんだな?」
「あー、確かに死を覚悟したね」
コーダは苦笑いを浮かべて頭をかいた。
再生で疲れたのでまたその場に座り込んだ。
それにしてもヒデー事件だったぜ。
俺とコーダで調べて想像した通りの内容だった。あんな推理が当たっちまうとは…全く狂ってやがる。ジェニファーは力なく俯いている。疲れてるだけではないみてーだ。
ここまでの事はコーダに聞いたが、ジェニファーが一番ツレーだろう。
よりによってあの亡骸がコイツのオヤジさんだったとはな……しかも友達をあんなことにされて……
「あっ!」
「何よ急に?」
「ヤベェ、五階にロッテを放置したままだ!おいキョーダイ!俺なんぞはいいからロッテの手当をしてやってくれ!」
「え?ロッテがいるの?」
ジェニファーの表情が少し明るくなった。
「ああ、さっきのブタ公をぶっ飛ばした時に偶然見つけたんだ。身動き取れねー状況だから置いてきた」
それを聞いたコーダがフラフラと立ち上がった。
「それは大変だ、なにか応急手当はした?」
「まだ現状のまま保護しただけなんだ!」
「分かった、すぐ行こう」
よろけるコーダに肩を貸そうとしたその時だった。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
俺たちは顔を見合せた。だんだんこの建物に近づいてる……
まさか……
俺はこっそりと屋上の縁から地上を覗いた。
案の定だ。さっき建物から落ちて自滅したブタ公の死体に野次馬が数人集まっている。
きっとアイツらがサツ(警察)に通報したんだろう。
地上を覗く俺を怪訝な目で眺めてた二人に俺は言った。
「やべーぞ、手当は中止だ。おいコーダ、ずらかるぜ」
「ええ!?なんで!?」
ジェニファーは信じられないと言わんばかりに驚いている。
「どうして!?あなた達悪いことしてないじゃない!むしろ私達にとって命の恩人なのよ?なんで逃げるの?」
困惑しているジェニファーにコーダが苦笑いしながらそっと耳打ちした。
「ごめんね、僕らのヒーロー活動が目立つのは困るからね。警察には秘密にしといて欲しいんだ」
「ええ……」
思った通りジェニファーはさらに困惑している。しかもコーダの奴、またヒーロー活動って……
「さぁ、ロッテのところに行ってあげて。きっと不安がってるよ」
「で……でも……」
急な話で余計に混乱してるがパトカーが近づいてる。あんまり時間はない。俺は懐からワイヤーを出して隣の建物に投げて引っ掛けた。
「とっとと行くぜ。このワイヤーで屋上を伝って逃げるぞ」
「ああ、今行くよ!」
「待って!」
コーダが俺の元に駆け寄った時にジェニファーが声を上げた。
「……あ……ありがとう……」
哀愁漂う表情を浮かべ、ポツリとお礼を言った。
俺たちはまたしても顔を見合せ、すぐに笑顔が綻んだ。
と、ここでコーダが踵を返してジェニファーの元へ行った。
そして、ジェニファーの手を取り……
「どうか、強く生きて……」
何かを渡している。
駆け戻ったコーダに肩を叩かれて我に返った。
「さ、行こう!」
「お、おお…」
手にハンカチを巻き、両手でワイヤーを滑り行く準備をして、ジェニファーに振り返り一瞥した。
「達者でな!」
しかし、ジェニファーはコーダに渡されたものを凝視してこちらに気づいてない。
いよいよ遠くにパトカーが見えた。俺たちはワイヤーを伝い隣の屋上へ渡った。
————————————————————
二人でそのまま数件の建物屋上を渡る。
こまで来ればサツに見つからねーだろう。
ある程度進んでどっかの建物の屋上で一休みしながらコーダに聞いた。
「そういやジェニファーに何渡したんだ?」
「渡し忘れてたんだ。Drヨークのポケットに入ってたものをね」
「ポケット…?薬以外になんかあったのか?」
コーダはふふっと微笑んで言った。
「彼女とお母さんの写真さ」
「なるほどな」
そんな大事なものがあったのか。道理でこちらに気づかないほど見入ってたわけだ。
「依頼は完了したが、アイツ大丈夫かな?」
ため息を着いて腕を組んだ。
「大丈夫だよ、きっと立ち直る」
隣にコーダが座りながら答えた。
「本当か?あんなヒデー事件だったのに」
「本当さ。彼女、一緒にいたけど相当タフだったよ?」
「ほぅ、おめーが言うんだから大したもんなんだろーな」
「後で話すよ」
そう言ってコーダはスックと立ち上がった。
「さあ帰ろう、オリバーにハンバーガーご馳走してもらうんでしょ?」
「ハンバーガーか…聞いたらすげー腹が減ってきやがったな」
考えてみたら昨日の朝に牛乳を飲んで以来なにも口にいれてねー。
……クヨクヨするなんて俺らしくねーな。俺も切り替えるか。
「待て待て、あそこ事件現場から割と近いんだぜ?ほとぼりが冷めてからだ。夕方に行こうぜ」
「えー、そんなぁ」
そんなくだらない話をしつつ、俺たちは下宿を目指した。




