57話 みんな死ねばいいのに。
57話 みんな死ねばいいのに。
(――『みんな死ねばいいのに』は対象がランダムに決まる即死魔法)
(F魔法?)
(ランクがつかない魔法をそう呼ぶ。『異次元砲』とか『センブスアイ』とか『アイテムボックス』とか。高性能な魔法がそろっているF魔法の中でも、『みんな死ねばいいのに』は、異常性と狂気という点でナンバーワンと言っても過言ではない。先ほど、私は『対象がランダムに決まる』と言ったが、周囲にいる者の中からランダムではないぞ。世界中に存在する生命の中からランダムに決まるのだ)
(……名前以上にふざけた効果ね)
(この魔法を使って世界中の人間を殺しまくれ。そうすることで大量の経験値を獲得できる!)
(っ……いいね、それ……最高に面白いっ)
(貴様のプラチナスペシャル『ネメシス・エヴァンジェリン』は本当に最高だ。この局面で、数ある仮面種の特質の中から『みんな死ねばいいのに』を引き当てたのは、確実に、プラチナの効果! 貴様は負けない! その燃えたぎる復讐心が風化しない限り!)
★
『存在値5000兆以上』という狂った存在値を有しているのは、ゼノリカ上層部だけ。
一般民衆は、存在値『30』前後が精々。
そんな一般人が、『存在値3000を超えているユズ』の『みんな死ねばいいのに』の対象になれば、当然……
「うぐっ」
まったくレジストできずに即死してしまう。
――第2アルファ・神帝城の城下町。
世界一安全で清潔で格式高い街と名高いこの場所で、最初の悲劇が巻き起こった。
買い物途中の一般人が、歩いている途中で、急に泡を吹いて亡くなったのだ。
「え? ど、どうしたの?! ねぇ!」
急に倒れた知人を心配しているヒマもなく、あちこちから、次々と悲鳴が上がり始める。
すさまじい速度で、ばたばたと人が死んでいく。
この超異常事態を受けて、ゼノリカ上層部も当然即時対応に乗り出す。
すでに、ゼノリカは、複数の天上人を霊廟に向かわせており、霊廟周囲の封鎖も終わらせていた。
そんな中で巻き起こった、一般人連続殺害騒動。
ゼノリカ上層部は、『霊廟の対象Pを討伐するチーム』と、『一般人の死亡事件を対応するチーム』の二手に分かれた。
戦闘力に優れた者は霊廟に向かい、捜査能力に優れた者は死亡事件の対策に向かう。
そんな中、もちろん、
『センエース神帝陛下は?!』と、王の居場所を探す声も上がり始める。
現状、センエースは『自分の世界』に引きこもり中。
……こうなると、誰も手出しできない。
アダムやシューリやミシャのような、圧倒的な力を誇るPSR部隊の女神たちでも、センエースに本気で引きこもられると何もできない。
……仕方なくセンエース不在のまま事態の対処に動くゼノリカの面々。
その間、ユズのレベルは上がり続けた。
民衆は死につづけ、ユズは膨らみ続ける。
ゼノリカは対応を間違えたわけでも、初動が遅れたわけでもない。
ただ単純に、ユズという大災害が常軌を逸していただけ。
※ゼノリカの面々でもユズを対処できないのは当たり前。なんせ、彼女は、センエースに2垓年も憑りついていた、悪霊の中の悪霊なのだから。




