3話 子犬じゃねぇんだよ!
3話 子犬じゃねぇんだよ!
「てか、センはんよぉ……おどれが褒められるのを嫌がるんって、救えんかった人の顔や声が脳裏にチラつくからちゃうかったん? 今回の3垓年で、その辺を救い散らかして、過去を清算できたんやから、別に、もう褒められても、ドンと受け止めたらええんとちゃう?」
「この状況になってハッキリしたが、俺はユズの声があるから過剰称賛を忌避していたわけじゃねぇ。そもそもの話、『きちんとウンコできて偉いねぇ』とか言われても、『子犬じゃねぇんだよ!』ってムカつくだけ」
「5垓年かけて全ての弱者に寄り添って世界を病的に救うってのと、ウンコするのを一緒にせんといてもらいたい……という正論を言いたいところやけど、どうせ聞く耳持たんやろうから言わんとくわ」
★
認知の領域外――存在の輪郭すら定義されない虚無の狭間で、
――『狡猾蝉原』と『破壊衝動ソル』は対峙していた。
・世界最強のヤクザである『蝉原勇吾』の『悪意』のみを抽出した巨悪――狡猾蝉原(センの養子である閃朝日(純粋蝉原)は、蝉原勇吾の純粋な部分のみを抽出した存在)。
・コスモゾーンの管理人である『ソル』の『世界を喰らい尽くす衝動』のみを抽出した完全悪――破壊衝動ソル。
――『原初の世界におけるラストボトル』で『コスモゾーン化したセンエース』にぶっ飛ばされたラスボスの二人。
時間も空間も意味を持たないその場所において、
彼らの会話だけが、かろうじて世界の残響のように響いている。
「……蝉原、『葛葉柚子の破壊衝動』は回収できたか?」
「うん、問題なく。センくんの『3垓年の旅路』のおかげで、綺麗に分離できていたから、純度100%で回収できたよ。……しかし、ユズの破壊衝動なんて使えるかな?」
軽い調子で返しながらも、『狡猾蝉原』の瞳の奥では、冷たい知性が絶えず回転していた。
「彼女の悪意は本物だ。『純粋悪化』させた状態であれば、十分使える」
『フラグメント』という概念があるこの世界において、
一人の人格を複数に分割することはそう難しい事ではない。
「バーチャ・ルカーノ・ロッキィが、狂気的な厳選の末に辿り着いた最適解……その精度は伊達ではない」
「? どういうことかな?」
『原初の世界』に封印されていた『完全体のバーチャ・ルカーノ・ロッキィ』。
完全体のバーチャは、かつて『まだ神になっていなかったセン』が戦った『愚神バーチャ』とは別格のスペックを誇っていた。
だが、完全体バーチャはセンエースにアッサリと敗北した上、最終的には蝉原に全てを奪われてしまった。
あまりに無様であっけない結末を迎えたバーチャだが、バーチャは死に際で、センに『極上の嫌がらせ』をぶちかましていた。




