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第26話 カミングアウト

「朝ですよ~! 起きてくださ~い!」


バサッ! と勢いよくカーテンが開けられ、強烈な朝陽が顔面を直撃する。


「う、うぅん……眩しい……」

「いつまで寝てるんですか。遅刻しますよ?」


目を開けるとエリスが仁王立ちしていた。

女神スマイルだが有無を言わせぬ圧がある。


「ふわぁ~おはようエリス……もう少し優しく起こしてくれよ……」

「優しく揺すっても起きないから実力行使に出たんですよ♪ さあ、着替えますよ!」


俺はフラフラとベッドから起き上がる。

前世なら全部自分で着替えるのだが、今の俺は悪役令嬢だ。

慣れない身体で慣れない制服を着るのは一人では到底無理だ。


「はい、バンザイしてください」

「ん……」

「次は背中を締めますよ。息を吸って!」

「ぐ、苦しい……!」


エリスが手際よく服を着せてくれる。

あっという間に髪を整え、化粧を施し、完璧な悪役令嬢セレスティアを作り上げていく。

こういうところは本当に頼りになる。

性格はアレだけど。


「はい、完成です♪ 今日もお美しいですよ♪」

「ありがとう……あっという間だった……」


こうして身支度を終えた俺たちは、寮の食堂へと向かった。

昨日の夕食もエリスに案内されてここで食べたが、豪華な食事だ。

朝から焼きたてのパンに、新鮮なサラダ、ふわふわのオムレツ。


「おいしい……!」

「しっかり食べてくださいね♪今日の授業もハードそうですから」


優雅な朝食を堪能し、俺たちは演習場へと向かった。

今日の午前は属性魔法の授業らしい。


「それでは、授業を始めましょうか」


前に立っているのは、昨日の基礎魔法でお世話になったアルノート先生だ。

他にも先生らしき人が何人かいる。


「前回はみなさんで基礎を学びましたが、今日からは専門的な訓練に入りますよ。各自、自分の属性ごとに分かれてくださいね」


先生の指示でクラスメイトたちがざわざわと移動を始める。

アルノート先生は昨日水属性だと言っていたが、各属性担当の先生がいるようだった。

クレアは迷わず火属性グループへ、リリィは風属性のグループへ向かっている。

土属性のほうは……見ないでおこう……

ミーナのほうを見てみると、彼女は光属性なのでひとり寂しそうだ。

そういえば、この学園に闇属性の生徒はいるんだろうか。

そんなことを考えていてふと気づく。


「…………」


えーっと、俺はどうすれば?

俺はその場に立ち尽くしていた。


「あら? セレスティアさん、どうしました? 自分の属性の場所へ行ってくださいね?」


動かない俺を見て、先生が不思議そうに声をかけてきた。

周りの視線が集まる。

俺全属性じゃん!

そういえばクレアとリリィにしか言ってないんだった!

いずれバレることだしもう言っちゃうか。

今後こういうことがあったら困るしな。


「あの、先生。質問よろしいでしょうか」

「はい、何でしょう?」

「わたくしのように、全ての属性を使える場合はどこに行けばよろしくて?」


その瞬間、演習場が静まり返った。


「……はい?」


先生がキョトンとした顔をする。


「ですから、火も水も風も土も、ついでに光も闇も適性があるのですけれど……どこに混ざればいいのでしょうか?」


当然、周囲も騒ぎ始める。


「ぜ、全属性……!?」

「嘘でしょ? 2属性持ちですら珍しいのに、全属性なんて聞いたことない!」

「ありえない……」


クラスメイトたちが驚愕の表情でこちらを見ている。

なんか気持ちいいな。

やはり悪役令嬢としてはこうして目立たないとな。


「セ、セレスティアさん……それは本当ですか? 全ての属性を?」

「え、ええ……制御はまだ下手ですけれど、出すだけなら」

「す、すごい……! そんな人がまさか実在するなんて……!」


先生が興奮した様子でブツブツと呟き始めた。

あ、これまた変なスイッチが入ったんじゃ……


「素晴らしいですねぇ! 全属性への適性……これは研究しがいがありますよ! 魔力回路はどうなっているんでしょうか、やはり虹色に輝いて……」

「せ、先生? わたくしはどうすれば……?」


キリがなさそうなので恐る恐る声をかけると、先生はハッと我に返った。


「コホン。失礼、取り乱しました。そうですねぇ、どうしましょうか……とりあえず好きな属性を選んでください」

「わかりましたわ」


好きな属性かぁ。

そうだ!昨日学べなかった水属性のところに行こう!

使い方がわからなかったせいでクエストでも大変なことになったし覚えておきたい。

俺が歩き出すと、生徒たちからの様々な視線を感じる。

畏怖や尊敬などの視線を感じながら、俺は水属性グループへと向かった。

特に土属性グループのほうからは熱い視線を感じたが無視だ。


「さすがだセレスティア……やはりいい……」

「お姉様……同じ属性、同じ運命ではなかったのは残念ですが流石です!」


そんな声が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。


「あんたねぇ……また目立つようなことして」

「仕方ないでしょう? 本当のことなんだから」


向かう途中クレアとすれ違い、彼女は呆れたようにため息をついた。

そしてリリィに声をかけにいく。


「ごめんなさいリリィ、二人だけの秘密を話してしまいましたわ」

「いえ……セレスティア様がそれほどの能力をお持ちなら……隠し通すのは無理ですから……」


さすがリリィ。なんて優しい子なんだろう。

こうして俺が『全属性』だということは、瞬く間に学園中に広まることになったのだった。

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