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第18話 初めての補助魔法 その2

「それでは『高速移動(クロックアップ)』について勉強していきましょう。先ほどの筋力強化とは少しイメージが異なりますよ」


先生は自身の足をパンパンと叩きながら説明する。


「筋力強化は魔力を一点に集めるイメージでしたが、高速移動は魔力を全身に巡らせるイメージです。魔力を全身に絶えず高速で巡らせ、神経の伝達速度と筋肉の収縮速度を引き上げるのです」


なるほど。

一点集中のパワー重視ではなく、全身に魔力を分散させるスピード重視って感じか。


「まずは私が手本を見せましょう。あそこに目印の旗があるのでここからあそこまで高速で移動してみますね。」


目印の旗までの距離は50メートルくらいか?

普通なら全力疾走しても7、8秒くらいかかるんじゃないか?


「いきますよ」


トンッ


軽い足音と共に、先生の姿がブレた。

風を切る音すらほとんどしない。

瞬きする間もなくあっという間に目印の旗までたどり着いていた。


「――はい、到着です」


涼しい顔で振り返る先生。

速い。しかも静かだ。

あっという間にあんな遠くまで移動してしまうなんて。

これが洗練された魔力制御による高速移動か。


「おおーっ! すごーい!」

「速すぎて見えなかった……」


生徒たちから感嘆の声が上がる。

そしてあっという間に元いた場所に戻ってくる。

なに食わぬ顔してやっているがそんな簡単にできるものでもないだろう。

体力の消費も激しそうだ。


「コツは魔力を滞らせないこと。流れる水のようにスムーズに循環させてください。」


説明を聞きなんとなくイメージをしていると、

「しかし」と先生は人差し指を立て、続けて説明する。


「皆さんは初心者なので長い時間高速移動を維持することはできないでしょう。

肉体自体の体力もありますしね。

もしあの旗までたどり着けなくても、あまり落ち込まないでくださいね。

では、皆さんも実際にやってみましょうか」


先生と生徒たちでは魔力の量や使い方にどうしても差があるんだろう。

それに移動速度を上げるだけで、移動自体は体力依存だろうしな。

先生みたいにあっという間に遠くまで行くなんていきなりできないんだろう。


「それでは、どなたかやってみたい方はいますか?」

「はい!はい!先生、私にやらせてください!」


ミーナが勢いよく手を挙げる。

さすがだな、積極的だ


「それではミーナさん、こちらに来てください」

「はい!」


ミーナが前に出て、目印の旗を見つめる。


「あそこかぁ……いけるかなぁ……?」

「ではミーナさん、高速移動(クロックアップ)をやってみてください。タイミングはお任せしますよ」

「はい!いきます!」


ドォン!

地面を蹴る爆音と共にミーナが弾丸のように飛び出した!

速い!

しかしミーナは目印の半分くらいの距離で止まり、息切れしていた。


「はぁ……はぁ……もう限界……」


息を整えながら俺たちのところに戻ってくる。


「おつかれさまです、ミーナさん!初心者でここまでの距離を高速移動できるのはすごいことなんですよ!」

「あ、ありがとうございます……!」


先生は目をキラキラと輝かせ、ミーナを褒め称える。

ミーナは力強いし体力もありそうだしな。

光属性ってだけじゃなくて補助魔法もかなり使いこなせるんじゃないか?


「次は……そうですねぇ……リリィさん!

お願いします」

「は、はい……!が、がんばります……!」


リリィがおずおずと前に出る。

見るからに運動が苦手そうだ。


「い、いきます……!」


リリィが旗に向かってスタートする。

しかしすぐにバテてしまった。

速度はミーナよりも遅いし、ほんの少ししか進めていない。

やはり運動系は苦手なようだ。


「はぁ……はぁ……もう……限界です……」


そう言ってへたり込むリリィ。

可愛い。


「だ、大丈夫ですかリリィさん!?」

「は……はい……なんとか……」


心配したアルノート先生がリリィのもとに駆け寄り肩を貸して一緒に俺たちの元に戻ってきた。


「リリィちゃん、大丈夫?これ結構しんどいよね……」

「ありがとうございます……大丈夫です……」


ミーナに背中をさすられ、リリィが申し訳なさそうに身を縮こませている。

そんなふたりの様子を眺めていると背後からエリスがポンポンと俺の肩を叩いてきた。

彼女は俺の耳元で楽しそうに囁く。


「おやぁ?ボサッとしていていいんですかぁ? セレスティアさん♪」

「なんなんですの?」

「見てくださいよあの光景♪ミーナさんがすっかり『頼れる彼氏』のポジションに収まってますよ? このままだと『愛し』のリリィさんを奪われてしまいますねぇ」

「なっ……!?」


エリスの言葉に、俺はハッとした。

しまった!

確かにエリスの言うとおりだ。

高速移動のことで頭がいっぱいになってしまった。

こういうときリリィを支えるのは本来なら俺じゃなきゃいけないのに!

リリィの恋人としてここで何もしないわけにはいかない!

俺はふたりの元へ歩み寄り、声をかける。


「お疲れ様、リリィ。よく頑張ったわね」

「あ……セ、セレスティア様……?」

「誰よりも一生懸命なあなたの姿、とても素敵でしたわ。……でも、無理はしないで? あなたが倒れたらわたくしが悲しいもの」

「はうっ……!?」


リリィの顔が、茹でダコのように真っ赤になった。

瞳が潤み、口をパクパクさせている。


「さあ、わたくしの手につかまって」

「は、はいぃ……」


俺が手を差し伸べると、リリィはふらつきながらも俺の腕にしがみついてきた。

可愛い。


「あっそっか!ごめんねふたりとも!」


ミーナも気を遣ってくれたのかそそくさと離れていった。


「…………ギギギ」


その時、地獄の底から響くような歯ぎしりの音が聞こえた。


「お、お姉様……!? 私の手は取ってはくれないのですか!?私も魔法を使ってヘトヘトになっているのですが!リリィよりも長い距離移動できたんですが!?」


見ると、カノンがギリギリと怨念のこもった瞳でこちらを見ていた。


「なぜリリィだけ……! 私は!?」

「カノンは元気そうだから大丈夫ですわね」

「そんなああああ!!」


カノンの絶叫が演習場に木霊する。


「そこ、何を騒いでいるのですか?授業中ですよ~」


先生が苦笑しながら手を叩いた。

そして――


「では、次はセレスティアさん。お願いします」


ついに、俺の番がきた。

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