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いざ、本番

 俺たちにとっては、小さな舞台だった。

 これまで何千何万という人を前にしたり、全国の人に見られるテレビに出たりしていた景と千代にとって、この舞台はあまりにも小さかった。

 なのに、どうしてこんなに緊張するんだろう。



 開場3時間前に集められた出演者たちは、リハーサルを進めていた。

 まだ客が入っていないというのに、そのライブハウスはえらくにぎやかだった。

 どこを歩いてもギターの音、歌声、ドラム、拍手。

 これまでの仕事では味わったことのない現場だった。

「お兄ちゃん、順番決まった?」

 千代が向こうの方から水の入ったペットボトルを片手にやってきた。

「ああ、俺たちは五番目だ」

「五番目か~、割と後の方だね」

 リハーサルの順番はなぜかくじ引きで決まった。

 全8組のバンドが出演する中、本番は7組目に出演する予定だった。

 だからリハーサルもその順番だろうと油断してゆっくり朝の準備をしていた。

 いつものように起きない景を担いで洗面所に連れていき、千代が優雅に朝ごはんを食べる様子を片目に景の着る服を選び、千代が髪をセットしている時、景の口に朝食をぶち込み、千代が化粧をしている時、景のぼさぼさの髪をといでいた。

 これが我が家のゆっくりだった。

 しかし突然板谷から連絡があり、なぜまだライブハウスにいないのだとお怒りを受けた。

 そこで初めてリハーサルシステムのことを知った。

 それから景の扱いが一層雑になる中、何とか到着したのであった。

「絶対本番通り進めたほうがいいだろ」

「まあまあ、間に合ったんだしいいじゃん。それにこれは生徒主催のイベントなんだから、そういうところは勘弁してあげて?」

 可愛い千代に免じて許してあげることにした。

 千代はいつもと違って、ワンサイズ大きめの服を着て、短いズボンを穿いていた。ストリートスタイルだとか何とか言っていたような気がする。

 ゆらゆらと千代の動きに合わせて動く服が、何ともかわいらしかった。

「おーい、日向君!」

 大声で手を振りながら走ってくるのは、板谷だった。

「まったく、遅刻するかと思ったよー」

「すまんすまん。リハーサルの順番がくじだとは思わなくて」

「あら、そうなの?」

「そうなのって、電話したろ?」

「そうだったね! てへ」

 軽く舌を出しておどける板谷。彼女も千代と同じでぶかぶかのTシャツを着ていた。

「それでお兄ちゃんが文句を言っていたところだよ!」

 千代が板谷に説明した。すると板谷は

「あれ、いいと思ったのにな~」と言って眉間にしわを寄せた。

「いいと思った? って、もしかしてこれ・・・」

 俺がそういうと、板谷は自慢げに胸を張って答えた。

「そうよ! 私が今回の卒業ライブの責任者よ!」

 俺と千代は目を合わせた。俺はため息をつき、千代は苦笑いをした。

「え、何よその反応。みんなは私がやるって言ったら喜んで譲ってくれたわ。やっぱり日ごろの行いね」

「いや、みんなは面倒な仕事やりたくないだけだろ」

 でも板谷の自慢げな表情を見ると、それ以上何も文句は言えなかった。

「先輩、さすがだわ」

 まだ少し寝ぼけている景が板谷にそう言った。

「でしょうでしょう!」

 板谷は景を抱きしめて、頭をなでた。

「ま、まあ、今日は頑張るか」

「うん、そうだね」

「ちょっと、なんで日向君と千代ちゃんはそんなテンションなの?!」

 これでもうちのマネージャなんだぜ、なんてとても考えられなかった。

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