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バンド結成?

 突如決定した卒業ライブ出演。

 先日板谷が思いつきで言ったことだが、どういう風の吹き回しか卒業ライブ当日は景も千代も仕事が入らなかった。

 景と千代は板谷の話を聞いて首を横に振るはずもなく、早速楽器の準備を始めていた。

 当の板谷は先日マネージャーをやると言っていたのにもかかわらず、なぜか自分もギターを弾きたいと言い出し、ベースを担当することになった。

「あとは曲決めだね!」

 友達と映画を見に出かけた景を除く三人は、いつものように家に集まって座談していた。

「卒業に関する歌のほうがいいのかな?」

 千代はテレビのリモコンをマイクに見立てて、朝からずっと歌を歌っている。

 板谷は家から持ってきたというギターや楽譜、ライブ演出に関する本を眺め続けている。

 この前のYaeTubeの時と言い、こいつの家は何でもあるなと感心した。

 そして「初心者でも簡単!ライブでやりたい曲100選」という本の真ん中らへんのページを見ながら板谷は言った。

「そうでもないよ~。毎年みんな自由にやってるし、むしろ卒業ライブなんて言ってるけど卒業に関する要素はゼロだね」

「だよね~」

「千代、お前去年行ったんじゃなかったのか?」

「あ、そういえばそうだった」

 えへへ、と笑う千代。

「でも、人前で歌うのは久しぶりだな~」

 千代はその愛嬌の良さから、モデルでありながらアイドル的な側面も持っている。

 企業PRの臨時的なユニットを組むこともあれば、バラエティ番組に出ることもある。

 実際、とあるお菓子メーカーのCMで歌を歌っているのが放送されていた時期もあった。

「千代ちゃん歌上手いから大丈夫だよ! あと可愛いし」

「もう、先輩いつもそういって~。ちょっとくらい心配されたほうがプレッシャー感じないですよ~」

 おどけたように言い返す千代。

「だってほんとに可愛いし。心配事なんてないよ、ね?日向君」

「いや、心配だ」

「え?」

 板谷と千代が顔を合わせて神妙な顔つきになる。

「お兄ちゃん、何が心配なの?」

「確かに板谷の言った通り、千代は可愛い」

 板谷は首をぶんぶん縦に振る。

「卒業ライブには男も来る。そいつらがうっかり千代を好きになってしまったら困る。いやならないわけがない」

「でたよ、日向君のシスコン」

「ちょっと心配した私が損したよ」

 二人そろってため息をつく。

 俺はいたって真剣に言っているのだが。俺は机に身を乗り出して二人に危険性を説得するが、何一つ信じようとしない。

「完全に千代に魅了された男子どもが、ライブ後押し寄せてくるかもしれない。もしかすると学校で今より人だかりができてしまう。だから俺はライブ中ギターを弾きながら、見物している男子どもにレーザー光線を当て続けないといけないし、最悪の場合、千代にボディーガードを…」

「はいはいわかったから、お兄ちゃんはしっかりギター弾いてくれたらいいの!」

 ついに言葉を途中で千代に遮られ、板谷は呆れたようなため息を漏らす始末だった。

 なんだか腑に落ちないが、仕方なく手元のギターの弦を張る。

 そもそもギターなんて、中学男児ならだれもが経験するあの時期に勢いで買って練習していたくらいで、今引けるとは到底思わない。

 楽曲を選んでいた板谷が、ふと大きな声をあげた。

「これだ!」

 俺と千代は、シンクロしたように同時に身体が反応する。

「びっくりするなー、なにがこれなんだ?」

「これ見てよ!」

 板谷は本のページを広げ、俺の方に向けた。

 千代もどれどれと俺の隣に来る。

「あー、なるほど」

「これか~」

「どう、いいでしょ?」

「ああ、いいんじゃないか」

「うん、これにしよう! これなら歌えそう!」

 こうして突然決まった卒業ライブで演奏する曲もまた、突然決まったのだった。

 

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