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女優 日向景

 文化祭、体育祭も過ぎ、季節は少し肌寒くなってきた。

 あっという間に過ぎた祭りは、一気に生徒たちを現実に引き戻す。

 そして俺、日向京介もそうだった。

「おい景! 早く起きろ!」

 土曜日の朝、俺は妹の部屋で、妹の寝る布団を引っ張っていた。

「う~~~ん」

 布団をはがされた景は小さく丸まり、唸っている。

「お前今日収録日だろ、遅刻するぞ!」

 しつこく声を掛け続けるが、一向に起きる気配がしない。

 景は普段はクールでかっこいいのだが、苦手なことが二つある。

 早起きと勉強だ。

 そして毎朝、景を起こすのも俺の仕事だ。

 部屋のあちこちに散らかった服やバッグ。

 机の上には、最後にいつ勉強したのかわからないほど置いてある雑誌や小物たち。

 よくもまあこんな部屋で生活しているな。

「って、いい加減起きてくれよ~」

 俺まで唸り始めたところで、誰かがこっちにやってきた。

「お姉ちゃん、まだ起きないの?」

 まだパジャマ姿の千代が、顔の大きさほどある大きなフレームの眼鏡をかけ、マグカップを片手にやってきた。

「そうなんだ! 何とかしてくれ!」

「う~~~ん」

 千代はマグカップを置いて、景のすぐ隣まで来て座り込んだ。

 そして景の頭をなでながら言った。

「お姉ちゃん、起きないの?」

「・・・・・・・」 

 当然返事のない景。

「今日の撮影、環ちゃんも来るんでしょ?」

 瞬間、景の体がピクっと動いた。

「遅刻したら恥ずかしいよ~」

 最後のとどめといわんばかりに千代が景の耳元でそうささやく。

 ゆっくり上半身を起こす景。

 長い髪が顔を隠し、表情は見えないが俺にはわかる。

「お兄ちゃん、早く」

「ああ!」

 そういって俺は景を肩で担ぎ、洗面所まで走っていく。

「お姉ちゃんはほんとに手がかかるな~」

 千代がクスっと笑いながらそう言っているのが聞こえた。


 

 波乱の起床タイムを終え、いよいよ出発前だった。

「兄さん、環ちゃん何時に来るのかな?」

「さあな、スケジュール的には俺らが行って、1時間後くらいかな」

 環ちゃんとは、今絶大な人気を誇っている子役の女の子だ。

 以前、起きたばっかりの景に目を覚ましてもらおうと、とりあえずテレビをつけ、子供向け番組を見せていた。

 そこで初めて環ちゃんを見た景は急に興奮しだし、

「ねえ兄さん、この子誰!?」

 と言い、その日から景は環ちゃんのファンなのである。

 その後、一度だけドラマの撮影で共演したことがあったが、緊張して話せなかったという。

「私、今度こそ話しかけて、サインもらおうと思うの」

 いつ持ってきたのかわからないが、景の手には色紙とマジックペンが握られている。

「まあ、テレビ歴はあっちのが長いしな」

「!!  ってことは先輩って呼んだほうがいいのかしら?」

「知らんがとりあえず出発するから早くしてくれ」

 景は色紙とペンを、すでにパンパンのバッグに詰め込み、玄関を出た。

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