第50話 新しい魔導銃
「ここを右に曲がれば、入り口まで直ぐっスね」
泉のあった休息場から出て二時間かけ、ようやく第三階層の入り口近くまで来た。
ここまでに、色々な魔物がいたが『気配ゴーグル』のおかげで先手を打つことができ、みんな無事にたどり着くことができている。
後は、このまままっすぐに続く通路を進むと隠し通路のある壁に突き当たるはずだ。
つまり、第三階層に来てから最初にあった曲がり角に着く、ということになる。
長谷川大輝を先頭に、通路を進んでいると後ろから何かが走ってくる音が聞こえた。そして、音が聞こえたと感じたと同時に、長谷川大輝が声をかける。
「後方から魔物が近づいてきてるっス!
数は七、結構速いスピードで迫ってきてるっス!」
パーティーメンバー全員が、自動小銃型の魔導銃を構える中、俺は自分の無限鞄から散弾銃型の魔導銃を取りだした。
せっかく購入したのに、試してみないなんてもったいない。
自動小銃型の魔導銃を無限鞄にしまい、散弾銃型の魔導銃を折ると、無限鞄から薬莢型の魔力タンクを二つ取り出し、魔導銃にセット。
散弾銃型の魔導銃を元に戻し、こちらに向かってくる魔物に向けて構えた。
「本田はん、それ何が出るんや?」
「これは範囲系魔法の『バースト系統の魔法』が使えますから、今は『ファイアーバースト』ですね」
「……それ、威力ありすぎやないの?」
「大宮さんの『エクスプロージョン』よりは落ちますよ」
「……とりあえず、俺らは援護に回るわ」
「お願いします」
俺の魔導銃の威力を試すということで、みんなは援護に回ってくれた。
魔物の足音が、どんどん近づいてくる……。
「この足音は、魔物の『ウリボア』だね。
猪のウリボウみたいな見た目なのに、成体並みの大きさが特徴よね」
ウリボア狩りを経験した、杉本美月が説明をする。
でも、俺たち全員が第二階層で『ウリボア』狩りは経験したんだけどね。遠目にはかわいいから騙されちゃって、目の前に近づくまで大きさが分からなかったんだよな。
それで、杉本美月が逃げ遅れて足にケガ。
幸い一匹だけのハグレだったようで、すぐに討伐できたけどいい経験だったよな。
所詮魔物は魔物っていう……。
「来たわ!」
「よく狙って……」
真っ先に、ウリボアの姿を確認したのは中川明日香だ。
相変わらず、目が良いよな……。
俺はウリボア七匹の中心を狙い、引き金を引いた。
――――――パシンッ!
乾いた衝突音とともに、魔導銃の先から魔法が発動する。
するとすぐに、魔物のウリボアたち七匹の中心で大きな爆発が起きた!
『ピギャッ!』
周りに吹き飛ばされるウリボアたち。
そして、七匹すべてが通路や壁に叩きつけられた後、光とともに魔石へとその姿を変えた。
「「「「………」」」」
「………すごい」
女性たちの中で、唯一言葉が出たのは中川明日香だけだった。
他の女性たちは、言葉もなくただただ驚いて固まっている。もちろん、それは男性陣にも言えることで、こちらは言葉もなく驚いていた。
かくいう俺も、その威力に開いた口がふさがらなかったほどだ。
「……『バースト系統の魔法』って、爆発系なんだな……」
「……にしても、威力あるなぁ。こっちが驚いてしもうたわ」
俺がゆっくり爆発地点に近づくと、高橋健太と伊藤拓也がウリボアの魔石を集めながら感想を言ってくれる。
「一発でこの威力って………ん?」
そこへ、俺たちの方へ近づく足音と声が聞こえてきた。
近づいてきたのは、女性のようだ。
「……ああ~、はぁ、はぁ、た、倒されちゃったか~。
せ、せっかく、集めた、ウリボアだったのに……」
急いで来たらしく、息も絶え絶えにガックリと肩を落としている。
この女性が、さっきのウリボアの魔物を集めていたのか。
猫獣人らしく、猫耳と長い尻尾が付いていて、背中に二本のナイフを装備している。短いズボンと動きやすい服を着ていて、たぶん斥候というのだろう。
「あ~、ゴメンね獣人のお嬢さん。襲われたから、倒してしまうしかなかったんだよ」
伊藤拓也が、倒してしまったことを謝っている。
さも自分が倒したかのように。
「いえ、こちらも釣りきれなかったのがいけないんですから、謝らないでください。
それより、ケガをされた方はいませんでしたか?」
「ああ、それは大丈夫だよ。
君こそ、斥候だろ?ケガはしてないかい?」
「あ、はい、私は慣れてますから……」
何か、二人だけで話が始まった。
どうやら、伊藤拓也の好みの獣人だったらしい。元市役所職員だったようだが、ファンタジー系の趣味でもあったのかな?
「なあ、アレ誰や?」
「……ナンパ野郎です。
どうやら、獣人の彼女が伊藤さんの好みの相手だったようですね」
「あの、いいんスか?田辺さんたち女性陣が、引いてるんスけど……」
長谷川大輝が指さす方向には、汚物を見るような目で伊藤拓也を見ている女性たちがいた。ダンジョンのこんな通路の真ん中で、女性を口説いているのが信じられないのだろうか?
それから二十分ほど、伊藤拓也と猫獣人の会話は続いている。
「……それじゃあ、町に着いたら連絡してね?」
「ありがとう、必ず連絡するよ」
そう言いながら、お互いの『ステータスデバイス』で連絡先を交換し、手を振って別れていった。
足取りも軽く、唖然としながら待っていた俺たちに近づく伊藤拓也。
「お、ま、た、せ~♪」
「……嬉しそうやな、伊藤はん」
呆れ顔の高橋健太に、ニコニコ顔の伊藤拓也。嬉しそうだ……。




