07 看病
本日二回目の投稿です。
翌日、迎えた朝はいつもよりも少し違和感があった。と言ってもたったの数日過ごしただけ。違和感何てほんの些細なもので、水樹の勘違いなのかもしれない。
そんなかんなで水樹はそんな些細な違和感を気にすることなく、いつものように朝食と弁当の準備に取り掛かる。
そして弁当を作り終えてから、丸テーブルに二人分の朝食を並べ楓を起こしにベッドに歩み寄った時ようやく水樹は違和感の正体を把握した。その違和感はしっかりとした形を帯びていて、 普段よりも明らかに顔を赤くした楓がベッドに寝ていた。
心なしか呼吸も少し荒い。
水樹は自分の手を楓のおでこにそっとあてる。
「熱い」
十中八九それは風邪だった。
季節はもうすぐで六月。季節の変わり目だし体調を崩すことはよくある事だろう。しかし水樹にとって問題はそこではない。
この部屋には当然水樹と楓の二人しかいない。楓が大人しく一人暮らしという奇行に移らなければ看病をしてくれる専属の使用人の一人や二人はいただろう。しかし今、楓の看病をできる身近な存在は水樹ただ一人だった。さらに生活がまともに送れない破綻者を放っておくと先に何が起こるか分からない。
「…………休むか」
結論は意外にもすんなりと出た。
まぁ水樹にとっては学校をさぼれるいい口実だったのかもしれない。
水樹は準備していたリュックを下ろし、制服から私服姿へと格好を変えた。
そして手際よく丸テーブルの上に置いていた朝食にラップを被せ、再びキッチンへと向かう。
(何か体にいいものでも作るか)
それからほんの数分後、水樹がキッチンで作業しているとき後ろから声が聞こえた。
「あれ、私…………」
「ん?起きた、水面さん」
「はい?どうして貴方は私服なんですか?今日は木曜日では…………」
体を起こした勢いで額にのせておいた濡れタオルが布団の上に落ちる。
それを目で追った楓は、
「まさか…………」
「あ~あんまり気にするな。俺も学校をさぼれるいい口実になったから。もう少しでお粥できるから待ってろ」
そんな水樹の言葉に楓のお腹が可愛らしく音を立てた。
時計の針は11時を指していた。朝から何も食べてない楓にとっては空腹のピークだろう。
水樹はお盆に小さな鍋に入ったお粥と取り皿、レンゲを乗せて楓のいるベッドの横に腰を下ろした。
そして取り皿に少量のお粥をよそい楓に渡す。
楓は無言でその取り皿を受け取る。
「いただきます」
「おう」
暫くの無言の時間。楓は静かにお粥を食べ、水樹はそんな楓の様子を頬杖を突きながら眺めていた。
「おいしいです、とても」
「そりゃよかった」
水樹は満面の笑みを返す。
些細な感謝の積み重ねでも、たった一言でも気分はいいものである。
「それで、気分はどうだ?」
「まだ少し、頭が痛いです。でもこれくらいなら寝てれば治ると思います」
「そうか。お粥はキッチンに戻しておくから食べたくなった言ってくれ。温め直すから」
「別にそこまでしなくていいです。貴方も今からなら午後の授業に間に合いますよ?」
これは楓なりの気遣いなのだろうか。それとも自分のせいで水樹も学校を休ませてしまったことに対する罪悪感から来るものか水樹には分からなかった。
「だから気にするなって。病人は大人しく看病されてればいいの」
「で、ですが…………」
そう言って水樹はお盆をキッチンに戻すために立ち上がった。
その時の楓の顔は風邪のせいかそれとも他の感情のせいか真っ赤になっていた。
「それに水面さんを風邪のまま一人でここに放置したらどんなカオスな状況が待ち受けているか想像できないし」
「…………」
一気に楓の目が冷めきった。
「少しでも貴方を見直した私が間違っていました」
「何で!?」
楓はそう言って水樹に背を見せる形で横になって布団にくるまった。
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