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Night Dream Wonderland  作者: 不眠者
3/3

2.ジェットコースター

登場人物は女の子2人 女性2人 男の子1人

ウサギ1匹

まだ、ホラーじゃないです。

 18時30分


 ミーンミンミンミンミン・・・

 ミーンミンミンミンミン・・


「ねえ、由香ゆかあれ乗ろう!」

「え、あれ?」


 8月●日真夏日の夜。

 普段なら閉園しているはずの遊園地がこの時間から開いている。よくあるナイトバージョンとか、カウントダウンとかそういうイベント形式かと思っていたけど何だか違うみたい。

 でも夏だから外はまだ明るいし、入園した人も結構いるみたいで安心する。

 朝まで出られないというのが難点だけど、遊園地が好きな私や一緒に来てくれた奈津美なつみとは体力で乗り切るというよりノリで乗り切っていこうと謎の決意を固めたのが入園する前のこと。入園した今では、程よい人混みに揉まれ、ついでにアイスを食べながら何乗るかと話していた。

 そして冒頭に戻る。でも始めからジェットコースターかあ。


「いいけど、アイス食べ終わらないと乗れないよ。」

「大丈夫!すぐに食べ終わっちゃうから。」


 奈津美はそういうと、カップのアイスを3口で食べ終えてしまった。なんてやつだ。


「歯が!!歯が!!!頭もキーンてきた!!」

「いやいやいや、それはくるでしょう。」


 おバカな奈津美。まあ外見も小さく小動物を思わせる可愛さで許されるわけで、私が同じことをやったら白い目で見られるからやらないけどね。


「ふう。治った!由香も早く食べちゃいなよー。私先に並んでるよ?」

「あ、私ちょっとトイレに行きたいから先に並んでてくれる?奈津美はトイレいかない?」

「むふふふ。だーいじょうぶ!あ、ついでにこのアイスのゴミも捨てて欲しいなあ~。」

「仕方あるまい、この優しい由香さまが捨ててこようではないか。」

「では、私は列にならんで場所を死守しております。」

「「・・・・っふふふ!!」」


 馬鹿なことを言って、馬鹿みたいに笑ってこれぞ遊園地の不思議パワーでやつよね!

 私は、奈津美からアイスのカップを貰うと、ジェットコースター近くにあったゴミ箱にゴミを捨てトイレへと向かった。

 トイレは思っていた程並んでおらずこれならすぐに奈津美のもとに戻れるだろうと安心をした。

 私の前には2人の女性が並んでおり、私たち同様友達同士で来たのだろう。彼女たちはウサギ耳のカチューシャをしてとても似合っており羨ましかった。ジェットコースター乗り終わったら奈津美とお揃いのグッズを買おうと決心するほどに。そのカチューシャはジェットコースター近くにいたウサギの着ぐるみをモデルにしていたのだろうか、記憶にある耳の形が一致する。あのウサギ着ぐるみってわかってるんだけど生きている感じがして気味が悪いんだよね。中の人が生きているんだから変な例えだけど、なんていううだろう。違和感しか感じなかったんだよねー。

 ・・・・違和感を感じたのはウサギだけじゃないけど。


「ねえ、知っている?閉園した遊園地の話。」

「ちょっと、なんで遊園地に来てまでそんなホラー話聞かなくちゃいけないのよ。」

「別にいいじゃん、ここのことじゃないし。」

「でも気分的に良くはないでしょ。・・・それで?」

「なんだ結局聞きたいんじゃない。そこで終わられても気になるでしょう。」

「そうだね。その閉園した遊園地って子供が度々いなくなるって噂があったの。ただの迷子じゃないのよ。手を繋いでいたはずの子供がすぅっと消えちゃうの!」

「・・・。現実味がなさすぎて、信憑性がないわね。」

「もう!すぐそうやってリアリストになるんだから。じゃあこれは?」

「なによ?」

「その遊園地にあったジェットコースターの話。」


 2人の女性のうち1人がウサギ耳を外しながら、その後ろにいたもう一人にいたずらを思いついたような顔をして話し始めた。

 その話が興味深く、私は聞き耳を立ててしまう。まあこれから、ジェットコースターに乗るのだ、気になるのは仕方がないよね。決して、盗み聞きじゃないんだからね!


「そのジェットコースター事故があったらしくて、でもどんな事故か分からないの。」

「どういうこと?」

「事故を知っている人にどんな事故があったの?って聞くと『固定されていた安全ベルトが外れて人が落ちたんだ。』とか言うでしょう。でも他の人は、『隣に乗っていた友人がジェットコースターから降りようとしたときに泡を吹いて倒れてそのまま亡くなった』とか。他にもいろいろ。」

「何それ。一つは整備不順でもう一つは体調面で心肺停止になったんじゃないの?」

「でも事故があったのは1回限り。もしそれらが一度に起こったとしたらおかしいよね?」

「確かおかしいけど、でもそんなに事故が起こったていうならニュースになってるんじゃないの?だから誰かがホラを吹いているのよ。」

「そうかな・・・。でもこの事故最大の謎があってね。」

「はいはい。もうお終い!空いたみたいだからいってらっしゃい!」

「えーー。」


 ウサギ耳を外した女性は、ウサギ耳を着けたままの女性に背を押されトイレへと消える。

 背を押した女性は何か言いたげな目をして友人を見送ったのが印象的であの表情は忘れない。


「・・・実際にあった事故は、シートに覆われたトンネルを抜けたとき乗客全員の首から上がなかったことなんだけどね。一番の謎は。」

「・・・・・・・・・・え?」


 私はついつい反応してしまった。独り言だったのだろう。でも、聞き捨てならない内容だった。

 何そのスプラッター怖すぎる!


「あ、ごめんなさい。怖いこと言っちゃって。」

「いえ、私もさっきの話聞いてしまってすみません。」

「聞かないようにするほうが無理でしょう。こんなに近くで話してるんだもの、聞こえちゃうわよ。私が言ったこともだけど気にしないでね。閉園した遊園地の話なんだから。」

「そ、そうですよね!ここの話じゃないですもんね!」

「そうそう。・・・・でも、ここの遊園地にあるアトラクション、閉園した遊園地にあるアトラクションと同じ種類のものがあるのよね。偶然って怖いわね~。」

「・・・・・本当に。」


 ウサギ耳の女性は、トイレが空いたのを見てそれじゃあと手を振りトイレへと消えていった。

 私はトイレどころの話ではなくなっていた。

 ホラーはだめなのだ。ホラーは受け付けられない!

 トイレはもういいや、奈津美を迎えに行って別のにしようって言わないと。いやな予感がする、なんでだろう?考えすぎかな。そうだといいんだけど。



 私は走った。ジェットコースター乗り場はすぐ近くにあったんだけど、のんびり歩いていくなんて余裕はなかった。

 奈津美は?奈津美はどこ?どこに並んでるの?


「すみまんせん、ちょっと通してもらってもいいですか?友達を探していて。」


 並んでいる列の間を身体を小さくしながら前へ前へと進む。


 ドクドクドクドクドク


 他の人にも聞こえるのではないかと思うほど、心臓が音を立てるように動いている。


 ドクドクドクドクドク ドクドクドクドクドク


 どこにいるの?奈津美?そんなに時間は掛かっていないはず。でもなんでどこにもいないの?

 奈津美、奈津美、奈津美、奈津美、奈津美・・・・。


「うそ。いない。私、見逃したかな?戻ろう。」


 先頭近くまで来たのに奈津美はいなかった。奈津美は背が低いから分からなかったのかもしれない。

 そう思うことにして来た道を今度は一人一人の顔をしっかり確認しながら引き戻っていく。


 ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク


 いない。

 どこにいるの?

 別のトイレに行っちゃったとか?


 ドクドクドクドクドク

 ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク

 ドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドクドク


 このままじゃ心臓が口から出てきそうだよ。

 奈津美、どこにいるの?

 私は列の最後尾まで戻り、列の中に奈津美が居 な い こ と を 確認 し た 。



 ど こ に も い ない の 。



 ど こ に も ・ ・ ・ ・ ・ 。






「あのすみません。」

「っひ!!」

「え、あ、ごめんなさい。驚かすつもりはなくて、本当にすみません。大丈夫ですか?」

「は、はい。すみません。大丈夫です。あの、それでどうかしましたか?」


 ジェットコースター入り口で立ち尽くすしていた私は声を掛けられ文字通り飛び上がった。

 心臓が止まるかと思った!!でも声を掛けてもらわなかったらあのまま銅像になっていたかも。

 ふうと、一呼吸置き私は声を掛けてきた人物を改めて確認するとどうやら私と同い年くらいに思われる。 ふむ。背は高い、黒髪短髪、眼鏡の印象的で、とても優しそうな人でも気の弱そうな人だなー。と大変室れないことを考えた。


「あなたはご友人の方を探しているんですよね?」

「え?なんで分かるんですか?」


 黒髪眼鏡の青年は一呼吸置くが、ここでは話せないので場所を移しましょうと私をテントの張っている休憩スペースまで連れていく。

 ここでは話せないって何だろう。新手のナンパ・・・なわけないか。

 休憩スペースには椅子があり、そこに2人で座るとお互いに肩の力を抜くように呼吸を整えた。

 ちょっと落ち着いたかも。座れてよかった。ついでに奈津美がどこにいるか知っているといいんだけどね。淡い期待を持ちながら私は彼が話すのを待った。


「実は僕の友人達が、あなたのご友人の後ろに並んでいたんですよね。それで知っていたんです。」

「じゃあ!奈津美がどこいるか知っているんですか?」

「・・・・。」

「あの?」


 彼は難しそうな顔をして私を見た。


「僕はあなたのご友人と僕の友人達がジェットコースターに乗ったのを見ました。僕は絶叫系は無理だから並ばずに待っていたんですけど。でも帰ってこないんですよね。」

「どういうこと?」

「僕の友人や、あなたのご友人だけではないんです。あのジェットコースターに乗った人たちが戻ってこないんです。」

「・・・。」

「あなたも入り口は見たと思いますが、では出口はどこにあると思いますか?降りる人達を見ましたか?僕は疑問に思い、別の場所に出口があるのかと思い近場を探してみたんです。でも・・・。」

「なかったんですか。」

「建物の中にあるかもしれませんが、それを考えても余りにも帰ってくるのが遅すぎる。連絡すら取れない。」

「じゃあ、どこに。奈津美はどこに行ったっていうんですか?」

「ジェットコースターに乗れば分かるかも知れませんが、おすすめはしません。僕は他の場所を探してみようと思いますが、あなたはどうしますか?」


 彼は手にした折り畳み式ケータイをショルダーバッグから取り出しながら聞いてきた。

 彼の友人は奈津美の後ろに並んでいたという。だったら、一緒の場所に降りているはずだ。それに一人より二人の方が私自身安心できる。

 一人は心細いから。


「一緒に。一緒に探してもいいですか?」

「・・・・。もちろん。僕もそのほうが心強いです。」

「そうですよね。そうですよね!一人より二人の方が動けますよね!」


 私がそういうと彼ははにかむ様に笑い手を差し出した。


「僕は渡辺徹わたなべとおると言います。真実を探しましょう。そして見つけましょう。」

「私は井上由香いのうえゆかです。絶対に見つけましょうね!」


 私は彼の手を取り握った。

 一人より二人の方が、心強い。

 待っててね、奈津美。絶対に見つけるから。そして帰ろう、朝まで待たなくていい、帰ろう。




 ここにいちゃいけない。








 19時30分

 現在数 873人

 

                                 すたっふ:ウサギ

 















次回、ホラーを書きたいですね。奈津美ちゃんside

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