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1.Wellcome !!

入り口でだらだらしているだけです。

今回の登場人物は3人。しかし、入園したのは2人だけ。1人盛大に遅刻中。

 

 ミーンミンミンミン・・・

 ミーンミンミンミンミン・・・


「あちい。・・・おせえ。」


 7月も終わり8月に入ったばかりだが、猛暑であることには変わりない。学生のほとんどが夏休みという長期休暇を満喫していると大人は思うだろうが、実際は夏期講習だ補修だのと全くもって楽しくないお休み期間が続いている。かく言う俺も本日の講習と補修というひと仕事を終わらせた可愛そうな学生だ。

 そんな俺が、何が楽しくて夕方から開園する遊園地なんぞに行かなければいけないんだ。そもそも言い出しっぺのアイツはまだ来ないのか!もう1時間は待ってるぞ!!俺の怒りが爆発する前に来ないとマジでガチでブッコロだぞ!と俺は腕を組みさも怒っていますという顔で集合場所に待機していた。


「あ!勇気ゆうきじゃん!今日の夏期講習もご苦労さま。大変だね、補修もある人って・・・ふふ。」

「笑ってんじゃねー!なんでここにいるんだよ。モテ男くんは、本日一人様ですか~?」

「本当は女の子たちと一緒に来たかったんだけど、夜遅くまで連れ出すのは失礼だろう?それに危ないからね。ここにいるのは勇気と一緒の理由だと思うけど・・・。」

「あ?」

智春ともはるに誘われたんだろう?生きては帰れない遊園地に行こうって。」

「お前もかよ。」


 俺に声を掛けてきたのは、俺を待たせている智春ではなく文武両道のイケメンモテ男の立花たちばな 雪弥ゆきやだった。俺が持ち合わせていない高身長に染めていない茶髪、瞳の色もハーフかクォーターだか知らないが青い。これで頭も良いと来たから女子がほっとくことがない。そんな俺と立花の間には友情なんて素晴らしいものは存在せず、ただのクラスメイトだ。

 そんなイケている立花がまさか誘われてくるとは思わなかった。そもそも、なんで智春は立花を呼んだのかが分からん。そしてそれよりもなんで俺が補修も受けていたことを知ってんだ。怪訝な目を向けていたせいか立花と目が合った。


「何?俺、男はちょっと勘弁したい。やっぱり女の子に見つめられたいよね。」

「お前、叩き潰されてえの?」

「暴力反対―。冗談だよ。なんで誘われてきたのか知りたいんでしょう?」


 立花は俺が握りしめた拳をみて、肩をすくめため息をついた。

 何故立花にため息をつかれないといけないのだろうか。そのため息は、誘っておいて未だに来ていない智春に向けてほしい。あいつのせいで俺の怒りは収まりを知らないのだからな。


「僕がここに来たのはね、別に誘われたからってわけではないんだよ。とある情報をくれたから、ここに来る必要があったわけで。せっかくだし一緒に用事を済ませてしまおうと思ったわけ。」

「あっそ。」

「勇気って僕のこと嫌いだよねー。なんで?」

「うっせー。」

「はいはい。」


 やはり立花とは話が合わないようだ。いや、俺が話をしたくないだけなんだが。だいたい俺より背が高いやつなんぞ全員這いつくばればいいのだ。そうしたら俺がこいつも含め見下ろしてやるのだ。


「あ。」

「なんだよ。」

「智春からメール来たから確認したんだけど、まだ遅れるから先に入って遊んでてって。」

「はあ?」


 立花がスマートフォンをいじりながら智也からのお知らせとやらを教えてくれたが、どう考えてもふざけているとしか言いようがない。何故言い出しっぺが来ず、仲の良くない奴と遊園地に入らないといけないのか。


「んー。電話してみたけど電波繋がらないって。どうしたんだろう。僕は別に入園できればいいから待ってても先に入っててもいいんだけど。」

「電波が悪いのか?ついさっきメールが届いたんだろ?なんですぐに繋がらなくなるんだよ。ケータイってそんなもんなのか。」

「そんなはずないんだけどね。勇気くん、ケータイを持ったことなかったんだね。因みにこれスマートフォンって言うんだけど。」

「ケータイがあろうがなかろうが、俺には関係ない。持っていたとしても邪魔になるだけだ。」


 俺は生まれてこの方、ケータイという種類のものを持ったことはないし持ちたいと思ったこともない。だが、さすがの俺も智春からとの連絡が取れない事には違和感がある。

 何故って、智春は俺と真逆でケータイがないと生きていけない人間だ。そんな奴の電源が切れているのを見たことがなかったのだ。充電器とか持ってないのかよ。


「それもそうだけど。繋がらないことは事実だからね。」


 立花の言う通りだが、何とも言えない妙な感じがするのだ。

 智春が遅れてくるということは、このまま来ないのではないかという式が俺の中で成り立つ。だから俺は帰ることに何とも思わない。もしも、智春が実際に後から来ても俺が集合場所にいなければ帰ったのだと思うだろう。俺が喜んで遊園地なんぞに行くわけないからな。だが、立花はどうだろう。確か用事を済ませると言っていなかったか。智春を置いて帰るとしても何とも思わないが、立花を置いて帰ると思うと後が怖いような気がしていくるのは何故だ。

 この恐怖はどこからくるのだ。クラスメイトか。女子か。立花のファンからか。


「お前の用事って何?」

「え、何いきなり。」

「仕方ねえから手伝ってやるよ。」

「・・・。」


 決して立花のファンが怖いから手伝うというわけではない事を心の中で言い張り、立花にほら行くぞと声を掛ける。そんな俺に立花は首を傾げた。


「何か悪いものでも食べたの?・・・いったいいつ拾い食いなんてしたの?」

「てめえ、マジでぶっ飛ばすぞ。」

「・・・ふう。素直にありがとうと言っておくよ。流石にここに一人で入る勇気はないからね。」

「あ?そういや生きて帰れない遊園地とか言ってたな。どういう意味だ。」

「なんだ・・・。その言葉、流されたのかと思ったよ。でも知らないほうがいいんじゃない。事実かどうかも分からないし。」

「なんだよそれ。まあいい、さっさと用事終わらせて帰るぞ。」 

「そうだね。もう僕ら以外誰もいないみたいだし。」


 『生きて帰れない遊園地』

 どこかで聞いたようなことがあるのだが、全く思い出せない。もしそれが事実だとしても、やっぱり俺だけ帰るわけには行かないだろう。ファンに俺が潰される。


 俺と立花は辺りを見渡し、俺ら以外に人が居ないことに驚きつつチケット売り場に向うことにした。

 もともと智春との集合場所は遊園地入り口付近にあるチケット売り場の手前であり、俺が来た時間帯ではまだ人が列を作るくらいはいたのだ。時間帯もあるだろうが、一度入園すると朝方まで出られないというこの遊園地は家族連れにはきついものがあり、家族が利用することはまずないと智春が言っていた気がする。


 それにしてもだ。

 人が居なさすぎではないか。


「はい、これ」

 チケット売り場の窓口から戻ってきた立花が、黒い塊を二つ持っていた。

「買えたよ。これ着けてね。じゃないと着ぐるみさんたちに連れていかれるらしいから。」

「着けても連れていかれた場合はどうするよ。」

「捕まる前に全力で逃げる。」

「……そういう認識で遊園地に入るのかよ。」

「まあね。生きて帰りたいし。」

「早まったか……」


 俺は立花からそれを受け取った。

 腕時計型の入園許可証。プラスチックのような、ゴムのような、変に冷たい触り心地だった。

 チケット売り場のガラスの向こうを、ふと見る。

 中に人がいるかと思ったが、違った。

 丸い目をした、ハリネズミの着ぐるみが立っていた。

 ピクリとも動かず、ただじっと、ガラス越しに俺たちを見ている。


「……行くぞ」

 俺は少しだけ早足で、入園ゲートへ向かった。

 左手首に腕時計を巻きつける。


 ぶるっ。


「うおっ」

 手首で、何かが脈打つように震えた。

 見ると、真っ暗だった腕時計の画面に、赤いデジタル文字が浮かび上がっていた。

 時刻ではない。


 来園者


 ただそれだけの文字。

 隣を歩く立花の時計も小さく鳴った。立花はそれを一瞥しただけで、何も言わずにゲートをくぐった。

 俺も後に続く。


 ゲートを抜けた瞬間だった。


 がちゃん!!


 背後で、重たい金属音が響いた。

 振り返る。

 さっきまで開いていた巨大な鉄格子の門が、完全に閉まっていた。鍵が締まる鈍い音が、静かな夜の空気に嫌に響く。


 俺は前を向いた。

 おかしい。

 さっき、確かにチケット売り場には列ができていたはずだ。中にはたくさんの人が入っていったはずだ。

 それなのに。

 目の前に広がる光に溢れた園内には、笑い声ひとつ、足音ひとつ、響いていなかった。


 そして俺は、激しく後悔した。

 取り敢えず、智春を心の中でひたすら罵倒した。




 19時10分


 開門時間終了。

 入園者追加 2名。


 現在数 1050名 

 

 閉門シマス。


 すたっふ:ハリネズミ


次回、別の登場上人物が出てきます。

女の子がいいなー。キャッキャウフフしていてほしいですよね。

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