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全ての終わりと全ての始まり

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 世界は崩壊《ほうかい》してしまった。


 たった一つの隕石《いんせき》によって。


 一九六〇年九月十四日。


 直径約五キロメートルほどの隕石が日本近海の太平洋に落ちた。

 死傷者《ししょうしゃ》は二百三十万人以上。

 被害総額《ひがいそうがく》は、日本円にして一兆円を下らないと推定《すいてい》されている。


 衝突に伴い発生した巨大津波は沿岸部《えんがんぶ》を襲い、複数の都市が壊滅的《かいめつてき》被害を受けた。


 その結果、その衝撃で巻き上げられた膨大な粉塵《ふんじん》は空を覆《おお》い、太陽の光を遮《さえぎ》る。

 地球は急速に冷え込み、世界は氷河期へと突入した。


 ――だが、人類の絶望はそこでは終わらない。


 その約三ヶ月後の十二月十七日に、正体不明の生物がヨーロッパを中心に出現する。


 それらは、現存する生物の姿を持つもの。

 あるいは過去に存在したとされる生物に酷似《こくじ》したもの。

 さらには、神話や伝承の中でしか語られないはずの怪物《かいぶつ》まで――。


 それはいつの間にか姿を現し、人々を喰らい、踏み潰し、どこかへと姿を消した。


 国連はこの生物群を英語圏ではヴォイド・ビーストと呼称し、日本では霊獣《れいじゅう》と呼称することになる。


 人々は霊獣の脅威《きょうい》に怯えるしかなかった。


 銃も、ミサイルも、戦車も通じない。

 最終兵器である核兵器でさえ、霊獣に致命傷《ちめいしょう》を与えることはできなかった。


 その結果、霊獣が現れて人口は半分近くまで減ってしまう。


 しかしそれから、二十五年後の一九九五年。

 絶望の中で、人類を救う者たちが現れる。


 異能の力を宿した者たち――

 超(・)能(・)力(・)者(・)。


 彼らの使う超能力は弾丸や爆薬が通じなかった霊獣の肉体を裂き、砕き、滅ぼしたのだ。


 そうして、能力者たちと霊獣による戦争が始まる。


*****


 超能力者《ちょうのうりょくしゃ》とは、人類が進化した新たな種族である。

 人間は霊獣《れいじゅう》に対抗する為に能力者として進化した。

 学者たちは、そう結論づける。


 実際、隕石《いんせき》衝突後に生まれた世代が超能力者となって生まれたのだ。

 彼らは生まれた時からその力を認識《にんしき》していたと語った。

 そして、二十年以上の歳月《さいげつ》をかけ、能力者たちは少しずつ集い、親のために、兄弟のために、そして能力を持たない友のために。

 霊獣と戦うことを、自らの意思で選び取る。


 こうして始まった。

 霊獣と能力者――

 二つの種の生存を懸《か》けた戦争は、

 実に三十年もの長きにわたって続いた。


 多くの出会いと別れがあり、たくさんの人が笑い悲しんだ。


 そして――

 能力者たちの勝利によって、その戦争は幕を閉じる。


 確認されていた霊獣の九十パーセントを討伐《とうばつ》したと、当時の代表者が発表した。


 『人(・)類(・)は(・)救(・)わ(・)れ(・)た(・)』。


 だが、能力者たちが戦い続けた三十年のあいだにも、新たな能力者は生まれ続けている。


 調査研究の結果、霊獣出現から十年間において出生《しゅっしょう》した子供のうち、約一〇パーセントが能力者であることが確認された。

 さらに継続的な調査により、当該割合《とうがいわりあい》は約五年ごとに二〇パーセント、三〇パーセントと増加傾向を示している。


 つまり能力者が中心となっている世界となっていった。


 人類は、超能力というあまりにも強力な武器《ちから》を手に入れてしまったのだ。


 そして、その力を戦場で有利に使おうとする者たち。

 私腹《しふく》を肥やすために利用しようとする、一部の権力者たち。

 表向きは平和で安寧《あんねい》のある世界。

 だが戦争以降、裏社会はより深く、より暗く沈んでいった。


 ――そして。

 霊獣との戦争が終わって、二十年後。


 物語は、そこから始まる。


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