表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/4

『マイ・フェア・フォークダンス』 運動会の人数合わせで女子の役???

サクッと読めるTS短編。

「可愛い!」「尊い……!」とキュンキュンして、

最後にはニッコリ笑顔になれるような作品をめざしています。


「というわけで、男子の人数が二人余る。誰か女子役でやってくれ」


担任の非情な一言に、教室がざわついた。


秋の運動会、恒例のフォークダンス練習。 女子の人数が足りないという理由で、白羽の矢が立ったのは――


「……なんで僕なのさ」

小柄で華奢、肌だけはムダに白い男子・優輝だった。


周囲の女子たちがキャッキャと盛り上がる中、優輝は不貞腐れたように席を立った。クラスのマドンナであるあの子の近くで、爽やかな男子として踊りたかったというのに、なぜ自分が女子役をやらなければならないのか。


不満と劣等感は、運動場の砂の上に、ぐるぐると音を立てて渦巻いた。


しかも、学校側の妙なこだわりで女子役だと分かるようにと渡されたのは、体操服の下の代わりに穿くピンクのフリル付きミニスカートだった。


「なっ……なんでスカートまで穿かなきゃいけないのさ!?」


半泣きになりながら穿かされたそれは、男子の細い腰元で無様にふくらみ、冷たい秋の空気に晒された膝小僧を頼りなく震わせた。恥ずかしさのあまり、優輝は必首にスカートの裾を下に引っ張り、自分の脚を隠そうとする。



だが、スピーカーから音楽が鳴り響き、運命の歯車が狂い始めた。

フォークダンスの基本フォーメーション。


ペアを組んだのは、少し無骨で背の高い男子――海斗だった。


「じゃあ、よろしく……って、優輝?」

海斗の大きな手が、優輝の右手をそっと包み込む。 その瞬間、電流が走ったように優輝の全身がビクリと跳ねた。


「えっ……!?」

熱い。海斗の手が大きすぎるのか、それとも自分の手が小さすぎるのか。 指先から伝わってきた熱量は、そのまま優輝の骨格を内側から溶かしていくようだった。足元がぐらりと揺れ、視界がわずかに低くなる。背筋をスッと引き伸ばすように、骨盤が、肩幅が、みるみるうちに華奢な形へと組み替わっていく。


「あぁ……」

漏れたのは、男子のものとは思えない、甘く高い声だった。


胸元に違和感が走る。体操服の布地が、内側から押し上げられるようにツッパリ、ふっくらとした豊かな重みが形作られていく。ウエストはキュッと細く締まり、先ほどまで不格好だったはずのピンクのフリルスカートが、丸みを帯びた太もものラインに押し上げられて、ひらりと艶やかに翻った。

スカートの裾が太ももの敏感な皮膚を擦るたびに、ぞくっとするような甘い快感が背中を駆け抜ける。

頬に何かが触れて払いのけると、ライトブラウンのさらさらとした長い髪が指の合間を通り抜けた。



「優輝……お前、その格好……」

目の前にいる海斗の顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。

海斗の目は、もはや同じクラスの男子を見ているものではない。息をのむような、熱を持った男の眼差しだ。「おおっ、綺麗だ。砂漠で蜃気楼でもみているのか……俺は。いや、待て、ここはただの運動場のはず」


その視線を浴びた瞬間、優輝の脳内で何かが音を立てて崩れ去った。

――憧れの女子と踊りたかった? そんなの、もうどうだっていい。


男としてのプライドや不満は、甘美な熱に溶かされて消え失せていた。代わりに胸の奥からせり上がってきたのは、もっと強烈で、もっと本能的な、雌としての飢えだった。


小さな手で、スカートの裾をもう一度ちょんとつまむ。

今度は隠すためではない。目の前の男子を、そして世界を魅了するために。


そこに踊る姿は、ライトブラウンの髪を揺らし、頬を朱色に染めた見知らぬ美少女だった。透き通るような紫の瞳が、熱を帯びて潤んでいる。


音楽はクライマックスへ向海斗、フロア全体が熱狂に包まれる。


もはや、女子役をやらされている男子など、どこにもいない。そこにいたのは、自分の美しさに酔いしれ、愛される悦びを知った一人のヒロインだった。


曲が終わり、静まり返る運動場を茜色の夕光が照らす。


優輝いいや、新しい名前を欲しがる彼女は、軽やかにステップを踏み、自ら海斗の胸元へと身を寄せた。海斗は、ギュッと抱きしめてつぶやく。

「可愛いすぎる。君はもう優輝ではない、……優子、いや、……優子姫」



優子姫と呼ばれるようになった美少女は、上目遣いに男子たちに視線を投げかけ、ふわりと微笑んで、甘い声を響かせる。

「ねぇ……。こんなに可愛い『私』と、次に踊ってくれる素敵な人は、だぁれ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ