お姉ちゃんのリップ、私(?)の魔法
鏡の前の自分に、思わず吐息が漏れた。
ほんのり桃色の、うるうるした唇。
フリルが揺れる、姉のピンクのフレアスカート。
(……可愛い。僕、いま……すごく『女の子』だ……!)
鏡に映っているのは、華奢な身体に可愛い洋服を纏った、自分であって自分じゃない「女の子」。
胸の奥が熱くなる。変身願望が満たされていく、甘くて禁断の快感。
「――ねえ、それ、私の新作リップなんだけど?」
ガチャリ。
背後でドアが開く音がした。
固まる僕。鏡越しに目が合ったのは、我が家が誇る完璧美少女
――実の姉だった。
「ひ、ひぇ……っ! お、お姉ちゃん!?」
「……へぇ」
パニックを起こしてスカートの裾を掴む僕。チラリと覗くピンクのレース。
お姉ちゃんは腕を組み、じーっと僕を頭からつま先まで観察すると、くすりと妖しく微笑んだ。
「あんた、そういう『趣味』あったんだ?」
「違っ……! これは、その、好奇心というか……っ!」
「ふーん。でもさ」
お姉ちゃんがツカツカと歩み寄り、僕のあごをクイッと持ち上げた。
鼻先に、甘いローズの香りがふわりと漂う。
「似合ってるよ。私より素質あるんじゃない?」
「え……?」
「決めた。今日からあんたは、私の『妹』ね」
「は、はいぃぃぃ!?」
それからというもの、僕の日常は一変した。
弱みを握られた僕は、お姉ちゃんの完全な「着せ替え人形」
――いや、専属モデル兼・弟子に任命されてしまったのだ。
「はい、今日はロリータ系! 立ち方! つま先は内股!」
「うぅ……お姉ちゃん、スカートのフリルが重いよ……」
「甘えないの! ほら、チーク入れるからじっとして!」
最初は脅されて始まった『女の子』生活。
だけど……お姉ちゃんの手でメイクされて、可愛いコスメやコスチュームに包まれるたび、胸のワクワクは大きくなっていった。
(可愛い……。スカートが似合っているし……。僕、どんどん可愛くなってる……!)
「よし、完成! 見てごらん?」
渡された手鏡を見ると、そこには完璧な萌え系美少女がいた。
「どう? 自分のこと、もっと好きになったでしょ?」
「……うん! お姉ちゃん、僕……ううん、わ・た・し、すっごく嬉しい……!」
「ふふ、可愛い妹ちゃん。じゃ、ご褒美にパフェ食べに行こ! もちろん、その格好でね♪」
「えぇぇぇー! 外は聞いてないよ~!?」
文句を言いながらも、お姉ちゃんと手を繋いで歩く街角。
風に揺れるスカートの感覚が、なんだか無性に愛おしかった。
完




