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第二話


 大石は、俺の隣に座ってから、やたら接近して見つめてくる。

 いや、どういう事⁉


「ねぇ」

「な、なに」


 美少女の上目遣い破壊力やべぇ!

 そりゃ陽介も惚れるわけだよ!

わかってた!

わかってたからこそ、悔しい。

 俺がこんな仕草しても可愛さのかけらもないもんな!


「入れ替わってみたいんよね、私」

「は、はい?」

「あんたと、入れ替わってみたいんよ」


 大石は今何を言ったんだろう?

 上手く理解が出来ない。

 しかし、大石はずっと意味深な笑みを浮かべて俺を見つめている。


「俺、になりたいって、なんで?」

「明石って、日野よりあからさまな女子人気はないけど、女の子にモテるし、何より女子に優しくしててもキモくなくて嫌味がないから」


 余計に訳が分からなくなってしまった。

 つまり、大石は女子にモテたいん?と俺が聞いたら彼女は今日イチの愛らしい笑顔で力強く頷いた。


「ねぇ、どうやったらあんたになれると思う?」


 大石はどうやら真剣らしい。

 胸の位置で腕を組んで方法を考えているのか「う~ん」と唸っている。


「ってか、私が明石になっちゃったら、明石が私になるんかな?」


 それは俺としては願ったり叶ったりだが、それの動機はどうも話しにくい。

 大石の『俺(明石春樹)になりたい理由』も中々癖があるが、俺が『大石水希になりたい理由』も中々だ。なんせ、同性の親友と恋愛をしたいからなのだ。


「……それ、癖なの?」

「え?」

「なんか言おうとして辞めるやつ」


 それは、よく陽介にも指摘される俺の癖だ。陽介には「はっきりしろよ~!」と冗談交じりに笑われている。

 俺の陰鬱とした癖も笑い飛ばしてくれる陽介は俺の太陽だ。

 そんな俺の太陽と、恋人になれるなら。

 ええい、どうにでもなれ。

「俺、好きな奴がいて……」

「ふむ」


 大石は先程注文して提供してもらった揚げたてのポテトを豪快に四本ほど掴み取り、意外に大きく開く口にそれを放り込んだ。その姿はみんなと一緒に来た時にはそんなに見てないのでなんだかそんな豪快なとこもあるのかと関心してしまった。


「俺の好きな奴が大石を好きなんよ」

「うん?」


 そんな彼女は、俺が独白を続ける間も絶え間なく揚げたてのスナックを放り込んでいく。いや、俺の分も残しておいてね?

 大石はその俺の独白を咀嚼するように口の中に放り込んだスナックを頬張る。

 そして、俺の恋が『異常』であることに気付く。


「それはさ、明石が男の子を好きなん?私を好きな子が女の子なん?」

「……俺が好きなのは日野陽介」

「へぇ、面白いね、明石」


 何が面白いもんか。こちとら真剣なんだぞ。って思ってたら、大石は「揶揄ってごめん」って謝ってくれた。

 不満が顔に出てたのかもしれない。ちょっと申し訳なくなった。


「俺は」

「うん」

「陽介と恋人になりたい」


 陽介に愛されるためなら、他人にだってなる。

 大石はその俺の宣言を聞くと、いひひ!と愉快そうに笑い、カラオケのデンモクを弄り始めた。俺はその大石をただ見つめる。

 イントロが流れ出す。数年前に流行った男女入れ替わりアニメ映画の主題歌だった。

 大石は一曲まるまる歌いきると(いつも思うけど、歌が超絶上手い)、マイクを自分に向けたまま「私たち、入れ替わろう!」と叫んだ。

 キーン!とマイクが反響する。俺は思わず顔を顰めた。耳が痛かったのだ。


「え?入れ替わらない?」


 いや、問題はそこじゃないんだよ、大石。


「問題はどう入れ替わるか、やで、大石」


 彼女は「あーね!」と言ってまた腕を組んで唸り出した。

 と言うか、隣に座るのやめてほしい。


「階段から落ちる、は危ないしな?」

「いや、それは下手したら死ぬて」


 俺たちは「「う~ん」」と揃って唸る。

 現実的に起こることのない事なのになんでこんなに真剣なんだ?俺らは。

 そんな時だった。俺たちのスマホが一通のラインを着信した。


「「何だこれ」」


 そのラインには『おめでとうございます。貴方がたは当入れ替わりアプリのβ版プレイヤー第一号に決まりました!』と怪しいメッセージが書いてあった。

 怪しいが、ラインの画面を開くと何かのアプリのインストールが始まってしまった。


「ヤバいヤバい!」

「これ、あかんやつ!」


 俺たちは突如始まった謎のアプリのインストールに慌てるが、いくらキャンセルを押してもアンインストールできない。


「え、怖……」


 俺はそんな謎アプリに恐れをなして絶句していたが、始めは慌てていた大石だったが、俺とは逆でアプリを開く気なのかキラキラした目で俺を見ていた。


「開くん?辞めた方がよくない?」

「え、だって入れ替われるかもしれんやん!やろうよ!」


 大石にそう言われても二の足踏んでいる俺を彼女は鼻で笑った。


「いくじなし」

「うっ」

「日野とアバンチュールしたいんやないん?」

「あーあーあー!わかった!やればええんやろ⁉」


 大石に責め立てられて、俺は再びスマホのアプリに視線を戻す。

『入れ替わりアプリ イレカワリ―ノ』

 いや、アプリの名前何とかならんかったんか。という疑問は大石も思ったみたいで、隣で「アプリの名前おもしろ~!」とか言ってたな。


「で、起動すんの?」

「怖いの?」

「怖ないわ」


いや、正直めっちゃ怖いけど虚勢張ったわ。

 しかし、そんな俺の気持ちなんかつゆ知らず。

 大石はニコッと可憐な笑みを浮かべ、「せーの!」とアプリ起動を促した。

 ええい、どうにでもなれ。

 俺は『入れ替わりアプリ イレカワリ―ノ』を起動した。




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