シロイの村、襲撃される(8)
「渡さないつもりだな。村人をなるべく殺さないように言われているが、しかたがない。」そういって、ローブの男はふたりに手のひらを向けた。そして、ぽつりとなにかをつぶやいた。魔法の呪文を唱えたのである。しかし、何も起こらなかった。
「あれ。」ローブの男は自分でも何が起こったのかわからなかった。使えるはずの魔法が使えなくなっていた。「魔法が使えないだと。」
その瞬間、すると、村人の一人はものすごい勢いで槍を持ちながら、大きく叫びながら、ローブの男に突進していった。そして、持っていた槍をローブの男めがけて、突き出し、背中から押し込んだ。刺したのではない。押し込んだのである。まるで、槍はローブの男の身体を通りぬけるかのように、背中から身体の中に入っていった。
ローブの男は自分が刺されたことに気がつく前に、全身から力が抜けていった。そして、地面が自分に向かってくるのを感じた。それが最後だった。
そのまま、ローブの男は、気を失うかのように、スイッチが切れたかのように、地面に前のめりに倒れた。少しだけ呻き声をあげたが、そのあとは、もうピクリとも動かなかった。
「倒した。」誰かがそう言った。