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双面の贄姫 〜身代わり令嬢はどうにかして悪役を回避したい!〜  作者: okazato.
第三章 身代わり令嬢の奮闘

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77 意外な関係性①

 ほどなくして、控え室に医師が訪れる。


 念入りにレオンを診てもらったが、おそらく後遺症は残らないという見立てだった。すぐに毒を抜き出したことが、功を奏したのかもしれない。


「とはいえ、数日間は絶対安静でお過ごしくださいね」


 釘を刺すように、医師は強く言い残していったのだった。


「絶対安静、ね……」


 ソフィアは苦笑いを浮かべる。仕事人間のレオンを休ませるためには、ジラール邸のみんなに、しっかり協力してもらわなくちゃ。


 そんな折に、一人の男性が声をかけてくる。


「モンドヴォール公爵令嬢。少し、お話をさせていただけませんか?」


 遠くからこちらを見つめていたモンドヴォール公爵が、警戒心を強めたのが伝わってきた。

 ソフィアの前にやってきた神官は、にこにこと嬉しそうな笑みをたたえている。


 話は変わって、ジラール子爵邸では使用人たちが、慌ただしく屋敷中を走り回っていた。


 剣術大会での連勝を果たしたばかりの子爵令息は、毒を盛られ、一時は意識を失いかけていたらしい。


「ソフィア様のおかげで、命に別状はないのですよね!?」


 羽毛布団をレオンの私室に運び入れたイザベラは、仲間たちに大きな声で尋ねた。


「そのように聞いています。ソフィア様が魔術を行使し、難を逃れることができたと」


 周囲に細かな指示を出しながら、家令は答える。


 国王は事件を公にしないと決めたようだが、会場では犯人を特定すべく、大会の関係者たちを集め、調査を行っているところらしい。


 怪しい人物が、無事に捕まればいいのだが。仕上げにカーテンを閉じつつ、家令は思案する。


 この数ヶ月の間、トランキルでは異常な出来事が頻発ひんぱつしていた。モンドヴォール公爵令嬢の失踪事件に始まり、誘拐及び監禁騒動。

 それらが未解決の間に、またしても事が起こってしまった。


「命が助かっただけでも、不幸中の幸いと言うべきでしょうか」


 その呟きに、明るい声が応えた。


「じゃあ、ソフィアに魔術を教えた僕が、命の恩人ってことになるのかな?」


 魔導士長は指先に明かりを灯しながら、得意げに胸を張っている。


「それにしても、護衛騎士が自分の身を守れなくてどうするんだよ。まったく」


 小馬鹿にした言い方に、真っ先に反応したのはサラだ。彼女は丸盆を叩きつけるように、サイドテーブルへ置いた。


「魔導士長様! いくらなんでも、主人が倒れたという時に、その言い方は」

「やめなさい、サラ」


 食ってかかろうとした使用人を、家令はやんわりと制止する。


「マーケル魔導士長のおっしゃる通りです。ソフィア様が魔力を扱えなければ、今ごろどうなっていたことか……。あるじに代わりまして、お礼申し上げます」


 頭を下げた老紳士を見て、魔導士長は得意げに鼻を鳴らす。


「じゃあ僕は、ソフィアたちの出迎えにでも行こうかな? あいつの弱った姿なんて、滅多に見れないだろうし」


 マルクスが姿を消すと、部屋の中は一気に暗くなったのだった。


 レオンらを載せた馬車は、日が沈み切ったころに、ようやく屋敷へと戻ってきた。


「やあやあやあ! 今日は大変だったみたいだね!?」


 げっそりとした顔つきのソフィアへ、マルクスは語りかける。


「ええ。魔導士長サマは、まだまだ元気そうね」


「もちろんだよ。それで、死にかけのレオン・ジラールはどこにいるんだい?」


 魔導士長は浮かれた様子で尋ねてきた。


「こら、マルクス。からかうような言い方はやめなさいと、いつも言っているだろう?」


「分かってますよ、お師匠様。でも今日は……ちょっと待って。今の声は、もしかして」


 マルクスは、珍しく慌てた様子で顔を上げる。


 ソフィアに続いて馬車から降りたのは、先ほど声をかけてきた神官で、その名はニコラス・マーケル──なんと、マルクスの父親だった。

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