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カスはカスなりに!~絶対に負けない男たち~  作者: GANON


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打ち子デビュー

 今日はアカリのデビュー戦。駅前から歩いて約10分のビル街にある過疎店。

 並び順で入場できる店だ。俺は朝10時の10分前に店の整列場所へ着いた。5分前には来いとアカリには連絡しておいたのだが。

 入場2分前、自転車でアカリがようやく来た。


「遅刻だ。今日はまあいい。とりあえず最後尾に並んで入ってこい。俺はスロットコーナーにいる」

「にゃ!」


 屋外駐輪場へ自転車を留めに行ったアカリをよそに、もう入場が始まる。

 後ろの並びは3人。

 パチンコスロット併設店。スロットは地下階だ。


(まあ誰もこないわな)


 店員が自動ドアを手で開けて入場開始。

 俺は階段で地下へ直行する。

 狙い台はパチスロ鉄拳3rd。

 前日390Gで辞められている。

 打つ理由は、リセットでも天井が500Gになる。それに加えて、据え置きでも最大777Gで当たりに当選するうえ、530G程度を越えたあたりから天井の777Gまではフリーズ高確率へ移行する。

 昨今のスマスロなどではほぼ500が選ばれると思う方が大半だと思うが、この台は違う。

 リセットなら500までの各ゾーンでほぼ均等に当たるのだ。


「にゃあはなにすりゃいいにゃ?」

「これを回してくれ。当たって、終わってリザルトの出た終了画面になったら連絡して。その画面の状態で下の皿にタバコの箱入れて、タバコ休憩にでも行っといて」

「了解だにゃ」


 アカリには軍資金として3万円を預けてある。いちいち渡していると目立つので先に渡した。

 据え置き天井までは概ね1万3千円ほど。リセットでも最大で1万8千円。この台だけなら十分回せる金額だ。

 俺は店内を一回りして他に打てそうな台を探して15分ほど見て回る。1階のパチンココーナーもくまなくチェック。

 地下のスロットコーナーに戻ると、アカリの台にフリーズ高確率の黒いモヤが出現していた。

 

(やはり据え置きだ)


 鉄拳はアカリに任せ、俺は他の台を探しに店を変える。

 この駅前だけで、徒歩で向かえる近場に6店舗ほどあるのだ。

 今いるのが過疎店Aとして、まずは通りを挟んだ向かいにある過疎店Bへ。

 横断歩道を渡り、30秒でたどり着き店内へ。入口で店員におじぎされたのでちょっと返す。

 パチンコ屋特有の効きすぎた冷房で身震いし、階段で2階にあるスロットコーナーへ。


(なんかないかな~。全然人いないから据え置きでいいんだけど)


 データランプを見て、ボタンをポチポチ押して出ていないであろう台の前日、前々日などをさかのぼっていく。


(意外としっかりやめられてるな。この店よりA店のほうが勝てそうだ)


 階段で1階のパチンココーナーへ降りる。

 釘を一通り見たが、気になる台はなかった。

 店を出て、繁盛店Cへ向かう。この店もここから徒歩で3分かからない。

 とことこと歩き、C店に到着。店内に入ると600台ある台の前には3割ほど人が座っていた。


(趣味で打ってそうな人とプロっぽいのが半々かな?)


 プロと一般人は打つ挙動が違う。

 同じプロが後ろから数分眺めれば同族なのか判断できる。

 一番わかりやすいのは、演出に一喜一憂しているのかどうかだ。

 プロは出玉に関係しないところは一切無感情で流す。もっとも激レア演出が出た時くらいは写真に収めたりするが、そのくらいだ。


(朝イチは全部打たれてる。打つなら並ばないとだめだ、けど時給1000円くらいじゃあな~。やる気が起きない)


 ざっと店内を2週ほどして、トイレを借りたのちにA店へ戻る。

 そろそろアカリの台は出ているか終わっているかしているだろう。

 ちょうどA店に足を踏み入れた時にスマホがバイブする。


『終わった』


 ちょうどいい。

 アカリの台の下皿にはタバコと400枚ほどのメダルがあった。

 ちょっと当たって終わったみたいだ。

 終了画面は青ですぐやめても問題ない。

 タバコを吸いに行っているアカリを待って、サンドに備え付けの計数機にメダルを流した。

 メダルが計数され、返却ボタンを押すとICカードが出てきた。

 このカードを景品交換カウンターに持っていけば、お金の元になる特殊景品に交換してもらえる。

 交換して帰ってきたのは7千円。まだ使うかもしれないのでそのままアカリに渡す。





「いくら入れた?」

「1万6千円にゃ」

「―本当か? 嘘言ったらタバコ禁止にするからな?」

「ごめんにゃ。1万3千円」

「打ち子と親はお互い信頼が大事だ。俺は仕事をするアカリには絶対に金を払うから信頼して欲しい」

「―そうだにゃ。すでに今まで色々払ってもらってるのに。裏切って申し訳ないにゃ」

「わかればいいよ。キチンとできるようになったら給料増やすから」


 そのあとは特に打つ台がなかったので、ちょっと早いが昼食に和食屋に入った。

 そこで俺はまっすぐ目を見て彼女に伝えた。

 打ち子は大体が金のトラブルで関係が終わるという話だ。

 少なくとも俺から誘っておいて彼女の手を勝手に放すつもりはなかった。

 


・過疎店:全然人の入っていないパチンコ屋。好き嫌いが分かれるが、勝つのには向いていることが多い。


・並び順:並んだのが早いもの順で店に入れる。迷惑なので前日から並ばないように!


・パチンコスロット併設店:パチンコのみ、スロットのみの専門店もあるので。


・パチスロ鉄拳3rd:スロット台の名前。格ゲーのやつ。詳細は検索してね。以降機種名には説明を入れません。


・リセット:設定変更のこと。台の状態が初期状態に戻る。客には有利だったり不利だったり。出荷状態ではないので注意。


・据え置き:台の状態が変わっていないこと。基本的に表面上はわからないが、内部の状態は前日なりのまま。


・フリーズ:ここからいっぱい出るよという演出の一つ。演出で台が壊れたような挙動になるためこう呼ばれる。


・下の皿にタバコを入れて:台をやっているということを示すための私物を入れて置く。忘れ物に注意。財布は絶対にダメだぞ!!


・1万3千円:プロは概ね1000円でどのくらい回るのかを知っている。


・1万6千円:3千円ちょろまかそうとしている。プロには絶対に通用しないので無駄。


・金のトラブル:先述のとおり、親をだますような真似をしようとしたり、給料不払いでいざこざがおきる。



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