パチンカスの日常
今話、次話に限り、本文に匹敵する文章量の解説があとがきに書いてあります。めちゃくちゃ濃いです。
パチンコを全く知らない人は頑張って世界観を把握してね!
以下わかる人向け。
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(今日も勝った)
午後11時。パチンコ屋の閉店時間。ついさっきまでハナハナというスロットの高設定を朝からぶん回していた。
交換所から出てきた10万円を超える札束を手に取り、ちょろまかされてないかチェック。
数え終わり、札を長財布にしまって、財布をケツポケットにしまい交換所の前を後にする。
しばらく歩いたのちに気づく。
(・・・・・・どこだここ?)
長時間大音量に晒され、さらに朝食もウイダーインゼリー。昼食は抜き、夕食はこれからだ。
そんな万全とはいえない体調でボケっと適当に歩き出したものだから、道に迷った。
今日のホールは駅から少し遠かったのだった。
スマホを取り出したが、
(・・・・・・ついに死んだか)
昼の時点から怪しいと思っていた。台横のUSBに繋いで充電していたはずなのに夕方見たら電池が激減りしていた。
点かなくなったスマホをズボン左のポケットへ戻す。
道の先から獣人の女性が歩いてきた。丸い耳が特徴的だ。時間が時間とはいえここは日本。夜に女性が歩いていても何ら問題にはならない。
「あの、すみません」
「なんにゃ?」
「駅ってどっちですか?」
「あっちにゃ。にゃあも行くから一緒に行くにゃ」
「あ、どうも」
熊猫獣人は紙タバコを取り出し火を点けて美味そうに吸い始めた。
最後の1本だったのか空き容器はポイ捨てしたが。
「じゃあ、にゃあはこっちにゃ」
「ありがとうございました」
熊猫獣人と別れ、俺は電車に乗って帰路に着いた。
数日後。俺はまたそのホールに並んでいた。
月1の強い日らしい。
(抽選は308。微妙だ)
凱旋、ハーデス、絆、メイン機種に、少なくとも6の割が119%の機種には座れないだろう。
(朝イチ刈ってからにするか? 流石に厳しいか?)
スロットの設置台数は500台、パチンコも300台ある郊外の大型店舗。
そしてスロットには朝イチの稼働を付けるため、当たりやすかったり、天井と呼ばれる救済機能が早い回転数で発動するようになっている機械があるのだ。
しかし、そういう台は朝だけ打たれてあとは放置される傾向にある。店舗によっては設定を入れる店もあるのだが、そういう店なのかは現状の手持ちデータではわからない。
(マイジャグラーにしよう)
そうこうしてるうちに俺の入場順が迫る。
番号が後ろでも確実に取れる台を選択することにした。
入場し、台番号の末尾を気にしながら台を探す。
狙いは8と0。本命の9番はおそらく取れないので並びで見られるこの2つ。
(昨日、一昨日は出ていない、これにしよう!)
データランプで当たり回数と総回転数をチェックして万札を投入。貸し出しを押してメダル50枚を握って台へ入れる。そして打ち始めて数時間後、
(投資が4本。浮くには浮いたけども、ブドウも悪いし単独レギュラーも足りてない)
出玉は1箱、約1000枚、金額にすると1万7千円分くらいあったが、どうにも挙動がよくない。
(やめよう。たぶん設定2、3、4のどれか。客を滞留させるための遊ばせる設定だ。勝ってるうちに帰ろう)
ジェットカウンターへドル箱に詰めたメダルを持っていく。
「にゃああああぁあぁあ!! 終わったにゃああああああああ!!!」
アイムジャグラーの島の角台から叫び声が聞こえた。
ちょうどジェットで呼び出しを押したとき、叫び声をあげた人と目が合った。
この前、道案内してもらった獣人女性だった。
「にゃああ? 勝ってる?」
「まあ、ちょっと」
「この前、道案内したにゃね? お礼が欲しいにゃ!」
「まあ、いいですけど」
「にゃ!? じゃあタバコワンカートンにゃ!」
「・・・・・・いいですよ、じゃあ買いに行きましょうか。俺じゃあ銘柄わからないんで」
交換所までついてきた熊猫獣人。
暑く照り付ける日差しの中、とぼとぼ歩いて―なんてことはない。
目の前にあったパチンコ屋併設のコンビニへ。
「キャビンの8ミリ、カートンにゃ」
店員は番号で伝えずとも後ろのロッカーから煙草を取りだした。
「はい。支払いはスイカで」
「やったにゃ!! 負けがなくなったにゃ! どころか実質プラスにゃ!」
コンビニ横の喫煙所で彼女と会話する。
「獣人さん、」
「アカリ、にゃ」
「アカリさん。使っちゃいけないお金いれてたんですか?」
「・・・・・・まあ家賃にゃ」
「仕事は?」
「・・・・・・現在無職にゃ」
「そうかぁ・・・・・・」
(よし! これも運命だと思おう)
「・・・・・・俺に雇われてみる気ありません?」
「なんにゃ? 平日の昼間っからパチンコしてるアンタ、もしかして社長とかなんにゃ?」
「俺も無職みたいなものですけど、稼ぎはあります。・・・・・・パチンコでの"」
「―考えさせてほしいにゃ」
ひとまずこの前買い替えた新品のスマホで連絡先を交換して別れた。
幸いにもアカリはスマホを持っていて、連絡は取れるようだった。
OKの連絡が夜にあり、翌日、駅前のマクドナルドで待ち合わせた。
「アカリさん、パチンコどのくらいできます?」
「7が揃ったら5千円くらいになるにゃ。黒いのいらんにゃ。それしか知らないにゃあ。ところでアンタ何歳にゃ? たぶんにゃあのが下にゃよ?」
「ああ、27歳ですけど」
「にゃあ21にゃ。敬語いらんにゃ」
「・・・・・・じゃあ、アカリ、スロットしかやらないのか?」
「あのジャグラーってやつしか知らないにゃ」
「なら、まずゲーセンに行こうか」
アカリをホールで使おうにも、ジャグラーしかできないのでは話にならない。
まずはART機とAT機の最低限の打ち方を教えなければ。
・交換所:パチンコ店で交換した特殊景品を買い取ってくれる。
・ハナハナ:スロットの機種の名前。シリーズでいっぱい出ている。ハイビスカスランプが光ると当たり。超シンプル。
・昼食は抜き:時間がもったいないので出てる台をやっているときは食べない。1時間で1万円とか稼げるんで。代わりに夕食を豪華にしたり。
・台横のUSB:スマホが増えてからパチンコ台の横に携帯充電用のケーブルがある店が多い。もちろんパチンコをやっていればその間無料で使える。
・獣人:この世界によくいる人とはちょっと違う存在。見た目上の違いは獣耳と尻尾があるくらい。ちなみに熊猫獣人は、丸い耳に短い尻尾。猫獣人と比べてちょっぴりふくよか。
・ホール:パチンコ屋のこと。
・強い日:集客のため、様々な催しがされることがある。店が還元してくれそうな勝てそうな日。
・抽選は308、微妙だ:抽選番号が小さい順に店の中に入って台を選べる。パチンコ屋の前にめっちゃ並んでるのはこれ。
・凱旋、ハーデス、絆:スロット台の名前。順にミリオンゴッド~神々の凱旋~、アナザーゴッドハーデス、バジリスク甲賀忍法帖~絆~。
・メイン機種、119%の機種:店にいっぱい置いてある機種、でる台だったときめっちゃ出やすい機種。
・朝イチ:まだ誰もやってない状態。誰も触っていない0回転の台を処女台という。
・刈って:ちょっとだけ台をやること。ここでは当たりが早そうな1回だけ当ててすぐ捨てることをさす。逆に長くやることを腰を据えるという。
・天井:一定期間当たらなかったら、その天井の回転数で当たりが貰える機能。
・放置される:客もバカばかりではないので、あまりに当たらなそうな台は捨てられて誰もやらない。
・手持ちデータ:前日分とか1か月、1年とかの単位で、どの台が出ているのかどうかを頭に入れたりスマホに記録したりする。
・マイジャグラー:スロットの機種の名前。おそらくマイジャグラー4か3。画期的な位置に当たりをお知らせするランプがついている。
・番号が後ろでも取れる台:ジャグラーシリーズやいっぱい置いてないやつとか不人気台。大体がいっぱい出にくいやつは後ろでも取れる。
・台番号の末尾を気にしながら:台には番号が振られている。ホテルの部屋番号のようなもの。7がつく日は7の末尾の台番が当たり台、なんてことが起きてたりする。
・狙いは8と0、9番が本命:上の理論から9番が本命ということは9日だった可能性が高い。当たりを並べている店だと横の台もチャンスな気がする。そんな単純な理由。
・万札を投入:台の横にお金を入れるサンドという機械があるのでそこにお金を入れる。小銭不可。
・メダル50枚:20円スロットだと1000円分のメダルは50枚になる。店から借りている扱いなので、持って店から出ると怒られる、というか違法。
・投資が4本:4千円使ったということ。本ではなくKと表記されることもある。Kは1000のこと。
・浮くには浮いた:プラスになったということ。プラマイゼロのラインから浮上している状態。
・ブドウも悪いし、単独レギュラーが足りていない:ジャグラーでちょっとメダルを増やすやつがあんまり当たってないということ。ジャグラーはこれがよく当たる台がいっぱい出る。
・出玉は1箱、約千枚:台の上にある1つのドル箱に入るメダルが大体千枚くらい。大きい千両箱だといっぱい入る。
・設定:基本的にスロットには1~6の出玉に影響する設定というものがあり、それを店はいじって出る台と出ない台を作る。客からすると1とか2がダメで一番6が良い。基本的に設定を客が知ることはできないので推定である。
・設定2、3、4:一日やっても最終的に大体プラスマイナスゼロくらいで終わる台。粘ってもいっぱい勝てない。大きく負けもしないけどね。
・ジェットカウンター:出たメダルを計算し、清算してレシートにしてくれる。基本、台をやめるときに使う。この機械までメダルを持って行って、店員さんを呼んで清算してもらおう。
・アイムジャグラー:スロット台の名前。ジャグラーシリーズで一番王道の台。そんなにいっぱいはでない。代わりにそんなに負けない(当社比)
・パチンコ屋併設のコンビニ:パチンコ屋が不便な場所にあることも多いので、コンビニが併設されていたり、ご飯屋さんがあることがある。田舎ではキッチンカーや屋台が来たりする。
・俺に雇われてみる:打ち子になる誘い。打ち子に関しては後述。
・7が揃ったら5千円くらい:ジャグラーは7が3つ横か斜めに揃ったら大当たり。当たりが終わるまで回すと300枚ほど出玉が出るので、等価交換なら一枚20円なので20×300で6千円。交換率や手数料で少し減っているのだろう。
・黒いの:BAR絵柄のこと。ジャグラーは基本77BARの揃いでREGボーナス。REGボーナスは大当たりとは言えない、100枚ほど貰える当たりのこと。残念賞。でも2000円は大きくない?
・ART機、AT機。台の種類。大概ジャグラーより波が荒い。詳細は後述。




