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ブレイカーズ ─大好きなゲームのラスボスに転生したので破滅を回避しつつ続編を生み出します  作者: 七宮ペポポ


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24/28

24話「この時間が、これからもずっと続いてほしいと心から思った」

 インザーの洞窟に一歩足を踏み入れると、地下特有の湿った冷気が肌にまとわりついた。

 天井からは鍾乳石が垂れ下がり、時折、水滴が地面を打つ音が響く。


「アークが前衛、エミルさんが中衛で遊撃、ミーナは中央で魔法支援。俺は最後尾から全体を見る」

「了解だ」

「わかったわ」

「はいっ!」


 三人の返事は力強い。だが、俺の表情が硬いのを見て取ったのか、

 アークが俺の頭を軽く小突く


「背中を頼む」


ニッっと笑い、アークは先へと歩を進めた


「……ああ。任された」


 俺は深く頷き、一行はダンジョンの奥へと進んでいった。


 ◆


 下見で確認した最短ルートを通り、第三層の行き止まりへ到着する。

 そこには、俺が先日物理的に開通させた大穴がそのまま残っていた。


「ここだ。この先に隠しエリアがある」


 俺が先導して穴を潜ると、そこは別世界だった。

 壁一面が魔鉱石で覆われ、虹色の輝きを放っている。その幻想的な空間を、ゼリー状の魔物が多数浮遊していた。

 身体の中に宝石の核を持つスライム、「ジュエルスライム」だ。


「いたぞ! ジュエルスライムの群れだ!」


 アークの声と共に、こちらの気配に気づいたスライムたちが一斉に動き出す。  その速度は異常に速い。


「速っ!? これじゃ狙いが……!」

「焦るなミーナ! 俺が足止めをする! 全員、俺が作る壁の中に敵を追い込んでくれ!」


 俺は両手を広げ、闇魔法を展開する。

 「ダーク・ウェブ!」


 さらに、氷魔法で物理的な壁を生成し、コの字型の「キルゾーン」を作り上げた。


「今だッ! 追い込め!」

「了解!」


 アークが剣の腹でスライムを弾く。逃げようとしたスライムは、俺が展開した見えない結界と氷の壁に阻まれ、逃げ場を失って右往左往し始めた。


「袋の鼠だ、叩け!」

「ヨシッ!」

「逃がさないわよ!」


 アークとエミルの攻撃が炸裂する。  ジュエルスライムは防御力が極端に高いが、逃げ場さえなければサンドバッグだ。

硬質な音が連続して響き、やがてパリンッという音と共に魔物が砕け散る。


「倒した! すげぇ経験値が入ってくるぞ!」

「どんどん来るぞ! このまま狩り続けろ!」


 俺たちは「キルゾーン」戦法を駆使し、効率的に狩りを続けた。  

レベルアップの光が、何度もアークたちを包み込む。 圧倒的な成長速度。  

 ジュエルスライムの戦利品(高価宝石)を回収しつつ

 俺はその光景を見ながら、確かな手応えを感じていた。


 ◆


 数時間の狩りを終え、俺たちは休憩を取ることにした。


「ふぅー、動いた動いた! 腹減ったなぁ! 飯にしようぜ!!!!!!」


 アークが収納魔法ストレージを開くと、そこから折りたたみ式のテーブルと、バスケットが出てきた。

 中から現れたのは、エミル特製のサンドイッチや肉料理の数々だ。


「わぁ! エミ姉のお弁当!」

「わざわざ作ってきてくれたんですか? ありがとうございます」

「さあさあ、たくさん食べて! 魔法使ったからお腹空いてるでしょ?」


 ダンジョンの中とは思えないほど、和やかなランチタイム。

 アークが大きな肉にかぶりつき、ミーナがスープを配り、エミルがそれを見て微笑んでいる。

俺もサンドイッチを受け取り、一口食べる。美味い。


「アスノも遠慮すんなよ。お前のおかげで、俺たちとんでもなく強くなれたんだからな」

「そうですよ! 私、上位回復魔法覚えられましたよ!」

「私も身体が羽みたいに軽いわ。ありがとう、アスノ君」


 三人が俺を見る。その目はとても暖かくて、ただただ嬉しかった。

 俺はこの世界で、アークたちと共に旅をし、様々な物語を共に見届けることが目標だった

 今、俺はその夢の真っ只中にいる。

 この時間が、これからもずっと続いてほしいと心から思った。




 休憩を終え、ステータスを確認する。


 アーク:Lv15 → Lv42  ミーナ:Lv14 → Lv40  エミル:Lv26 → Lv45


 十分な成果だ。ゲームなら中盤後期のレベル体だ。

 俺もレベルが上がってLv66になった。

 崖を崩れ落とした攻撃がスキルとして登録されたが、使う機会がこないことを願う

 

 俺達は警戒を怠らず、気を引き締め直して狩りを続けた


 ◆


 狩りを続けて、俺たちは隠しエリアの最奥部、崖のある場所まで移動していた。

 眼下には底知れない暗闇が広がっている。


「あまり端に行くなよ。危ないからな」

「ああ、わかってる。 ミーナ!皆にライティングをかけ直してくれ」

「わかった!」


 ミーナがパーティ全員に照明魔法をかける。

 あたりが明るくなった



 その時だった。  



 俺の《索敵》スキルが、爆発的な殺気を捉える


「ッ!? 下がれッ!!」


 俺が叫ぶのと同時、頭上の岩棚から巨大な影が三つ、落下してきた。


 ズドォォォォォンッ!!


 凄まじい着地音と共に地面が揺れ、俺たちは体勢を崩した。  

 舞い上がる土煙の中から現れたのは、全身が筋肉の鎧で覆われた、五メートルを超える巨人――『ギガント・オーガ』。

 その瞳は血のように赤く、手には巨大な棍棒が握られている。


 (馬鹿な……!? こいつらは推奨レベル45以上のモンスターだぞ!? なんでこんな序盤のダンジョンに!)


「グルルルルゥ……!!」


 オーガの一体が、一番近くにいたミーナとエミルに狙いを定め、棍棒を振り上げた。

 速い! 巨体に似合わぬ剛速だ


「させねぇッ!!」


 アークが吼える。  彼は瞬時に二人の前に割り込み、剣を構えて防御の姿勢を取る。

素晴らしい反応速度だ。レベル42のステータスがあるからこそ間に合った動きだ。

だが――相手が悪すぎた


 ガギィィィンッ!!


「ぐぉッ……!?」


 アークの剣が、棍棒の一撃を受け止めきれずに悲鳴を上げる。

 圧倒的な質量差。アークの足が地面にめり込む。

オーガはその隙を見逃さなかった。

空いた左手が、アークの胴体を鷲掴みにする。


「がはっ!?」

「アーク!!」


 ミーナの悲鳴が上がる。  

 オーガは捕まえたアークを、邪魔な石ころでも捨てるかのように、背後の崖へと放り投げた。


「しまっ――」


 アークの体が宙を舞い、暗闇へと落ちていく。


「アーク!!」


 俺は即座に魔力を放出する。

 

 自身に身体強化魔法をかけて魔法有効範囲までアークに近づく 


「《浮遊レビテーション》! 」 


 俺の魔法が落下するアークを包み込み、

 その身体を空中でピタリと静止させる。


「アスノ!?」

「そのまま動くな!」


「ガアアアアアアアアアアアッ??」


 オーガが苛立ち紛れに地面を叩きつける。


 ゴガァッ!!  


 その衝撃で、ミーナとエミルの立つ崖の岩盤が限界を迎えた。


「キャァァァッ!」

「エミルッ、ミーナッ!!」


 足場が崩落し、二人の体が土砂と共に奈落へと投げ出される。


「くそっ!!」


 俺は空中で体勢を反転させ、再び魔法を発動する。


「ミーナ!!」


 俺は落下し始めたミーナにも浮遊魔法をかけ、アークの近くの空中へと固定する。

 だが、エミルは。  エミルは崩落した岩石に巻き込まれ、さらに下へ、暗闇の底へと落ちていく。


「エミルッ!!」


 遠い。魔法の射程外だ。

 俺は限界まで魔力を絞り出し、重力以上の速度で急降下する。


 風圧で顔が歪む。


 視界が滲む。  

 

 エミルが、


 俺に手を伸ばしている。




「アスノ……くん……ッ!」




 指先が触れる。  あと少し。  地面はもう、すぐそこまで迫っていた。


「間に合ええええええええッ!!」


 俺は叫びと共に手を伸ばし、エミルの手をガシッと掴んだ。  


 そのまま彼女の身体を引き寄せ、強く抱きすくめる。  直後─



 ズドォォォォォォンッ!!



 世界が揺れるほどの衝撃。俺たちは地面に激突した。

 俺は自分の背中と魔力障壁バリアをクッションにし、エミルへの衝撃を全て受け止める。

 骨が軋み、肺の空気が強制的に吐き出される。


「が、はっ……!」


 土煙が晴れていく。  クレーターの中心で、俺はエミルを抱いたまま仰向けに倒れていた。

 腕の中のエミルが、恐る恐る顔を上げる。


「アスノ、君……?」


 彼女に怪我はない。  よかった、守れた。

 俺は安堵の息を吐き、身体を起こそうとして激痛に顔をしかめた。


 エミルの顔色がサァッと青ざめる。


 彼女の視線が、俺の左肩に向けられていた。

 地面に叩きつけられた衝撃で障壁バリアごと肉が裂けたのだろう。

 俺の左肩からは、鮮血が止めどなく流れ出していた。








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