新たな敵、新たな力2!
彼女の後を追って小道を進む。
すき間なく生い茂っていると思われた草むらは、しかしまっすぐに一本道がその真ん中を通っていて、やはりリンの言うようにこれを隠していたのだろう。
だが、だとして誰が?何のために?そしてそんなことが可能なのか?
俺には魔法は使えない。だが、話に聞く限りでは道を隠し景色を偽装する魔法など存在しないはずだ。
「なあ、この結界って……」
「……恐らくかなりハイレベルな魔力が必要になるはずだ。それが出来る相手だ」
リンはそう答えながら、しかしその足は全く恐れを感じていないかのように正面に見える遺跡へと一直線に進む。
やがて到着したそこは、背後にある寺院とは異なり、より殺風景で、ただの部屋と言った方が適切に思える。
入口は本来扉で封じられていたようだが、おそらく結界に任せてあるのだろう、今ではぽっかりと口を開けている。
「この中か……」
「ああ。まず間違いない。気配はこの中から出ている」
そっとその扉の向こうをのぞき込む。どうやら下に降りる階段があるようで、暗闇の中に等間隔の石段が続いているのが見える。
「例の鍛冶屋もこの中に……?」
「分からない。けど、遺跡に出かけたきり姿を消したとなれば、ここにいたとしても不思議じゃないだろうね」
何故結界を張った何者かが鍛冶屋を狙ったのかは分からないけれど――そう付け足すと、リンは掌の上に光の玉を生み出した。
ファイアボルトと同じような大きさだが、発射するのではなくただ明るく輝くだけの光球。ファイアボルトの応用なのか、或いは全く別の魔法なのかは分からないが、この先の暗闇でもしっかりと照らし出してくれそうな光量はある。
「よし、行こう」
なら覚悟を決めるしかない。
彼女の光を頼りに階段を下りていく。
ひんやりとした空気が奥から吹き上がって俺たちを出迎え、その中にコツコツと、俺たちの足と石段が立てた音だけが響く。
「意外と長いな……」
外から見ただけでは分からないが、かなり地下深くまで掘られているようだ。
一体何がここにあったのか、寺院のように入口に看板があった訳でもないところを見ると、まだ調査されていないのかもしれない。
その階段を降り立った先。突然現れる広い空間。
地下に出来たこの巨大な空洞を支えるためなのか、巨大な石造りの柱が等間隔で並んでいる。
柱同士はその頂上付近で――経年劣化故かひどくボロボロの――太い鎖のようなものでつながっており、どこも同じような垂れ下がり具合であるのを見るに、おそらく初めからそう計算されて設計されているのだろう。
視線をそこから下へ。詳しくは分からないが、恐らくここはカタコンベのようなものなのだろう。それぞれの柱には、それを囲むようにぐるりと沢山の寝台のようなものが並んでいて、その上に古い棺と思われるものが安置されている。
「恐らく墓のようだね……」
リンも同じ考えに至ったのだろう。
だが、その視線はそうした沢山の死者より更に奥を見据えている。
「だけど、だとしてあれほどの明かりは必要ないはずだ」
彼女がそう言って示す先=柱の向こうにゆらゆらと揺らめく沢山の火。
まるで人魂のようなそれは、青白い光で柱の向こうをぼんやりと照らしている。
「……それに、どうやらただの火じゃなさそうだ。あっちから強い気配を感じる」
「成程な……」
その言葉に、俺は腰のものを抜いた。
「気を付けて、何があるか分からない」
その言葉を聞きながら、奥へと一歩ずつ進んでいく。
柱の間を抜け、他の柱からこちらを見ていたり飛び出してくる者がいないか、常に意識を向け続ける。
距離にすれば、およそ20~30メートル程度だろうか。幸いにも襲撃するものはなにもいなかったが、リンの言う気配というものが分からない俺にも、この空間の雰囲気は非常に居心地が悪く感じる。
いわゆる心霊スポットと呼ばれるものも、実際に行ってみたらこんな感じなのだろうか。
奥に行くほど柱の状態が悪化しており、途中でなくなっているものや、完全に倒壊しているものが増えてくるのも、また居心地の悪さに一役買っているような気がした。
リンが不意に声を上げたのは、その居心地の悪い空間を奥へ奥へと進んでいくところでだった。
「ッ!!?ねえ、あれ!!」
彼女の指さす先=正面の途中で折れた柱の向こう。おそらくここの一番奥なのだろう、やや高くなった祭壇のようなもの前に、人が倒れている。
「あれ、鍛冶屋さんじゃ……!?」
「きっとそうだ!行こう!」
正面の柱と柱の間を抜けて一直線。
沢山の人魂のような光が照らし出しているその壊れかけた柱は、柱同士を繋ぐ鎖によって吊られるような形で、二つの柱の間に浮いている。
落ちて来るかも――咄嗟にそんな考えが頭をよぎるが、目の間に人が倒れているという状況で、悠長に回り道など出来ない。
「急げ!急げ!」
一気にその柱の間の通路を駆け抜ける――その判断を下した体が走り出した瞬間、ガチンという嫌な金属音が頭上から響いた。
「ッ!?」
後悔先に立たず――そんな言葉の意味を俺は二重で理解した。
この道を選んでしまったことと、音がした時に反射的に足を止めて上を見上げてしまったことで。
「あっ――」
その声が出たのがどのタイミングかは分からない。
薄暗い中で見上げた目が最期に見たのは、鎖による支えを失って一直線に落ちてくる、俺の何倍もある石柱だった。
(つづく)
今日はここまで
続きは明日に




