第十五話 冒険の幕開け
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「私と一緒にパーティを組んでくれませんかっ!?」
と身長150cm程で黒と白が入り混じった特徴的な髪色をしたツインテールの可愛らしい女の子が突然と頭を下げて、パーティを組んで欲しいと急に二人に頼み込んできた。
「「え…、え?」」
予期せぬ第三者が突然と現れ、二人はどのように接すればいいのかと困り顔になる。
「あの…。その…」
「今日限りでいいのでお願いします!!」
「ええと、ちょっと…?」
「足手まといにはならないと約束しますので!お願いします!」
これ以上一方的に女の子から話をされても不味いと思ったユウトは
「…とりあえず自己紹介からしませんか?パーティについてはそれからで…」
と女の子に提案を求める。
「…はい!」
女の子は快くユウトの提案に乗ってくれたので、三人は一旦依頼掲示板を離れることにした。
「…先程は突然すみません。私は『フルハ・ヒューディアン』と言います」
フルハは礼儀正しく頭を下げて二人に自己紹介をする。
「俺はユウト・ブレイス。よろしく」
「私はマナ・サタン。よろしくね」
簡単な自己紹介を二人は済ませると、マナはパーティについての話を再開させる。
「…ところで、ヒューディアンさんはどうして私たちとパーティを組みたいと思ったの?」
「…私ここで冒険業をしていて、そろそろ誰かとパーティを組んで冒険しようとして、パーティメンバーになってくれる方を探していたらお二人の姿が目に入って…。良く分からないんですけど…、私はお二人の姿が目に入った時、『絶対にこのお二人とパーティを組みたい』とそういう運命のようなものを強く感じたんです」
「「…。」」
二人は今まであれば運命などあり得るはずがない、絶対に信じようともしないと思っていた。
((でも…))
運命が変わるその瞬間を体験した二人は、フルハの言葉に信憑性を感じていた。
「…へ、変ですよね。運命なんかあるかないか分からないのに…」
「…いや、変じゃない」
「…え?」
「丁度私たちも分からないことがあって、誰かに助けて欲しいと思っていた所だったの」
「ヒューディアンさん。俺たちはまだここに登録したばかりで、まだ分からないことがいっぱいあります。分からないことがあったら、色々と聞くかもしれないけれど、そんな俺たちでもいいですか?」
「…はい!もちろんです!!」
フルハは二人の返事を聞いて嬉しそうに笑った。
「じゃあとりあえず、依頼掲示板に移動しましょうか!」
こうしてフルハとパーティを組んだ三人は、もう一度依頼掲示板の元へと向かった。
「ところでヒューディアンさん、この中に初めてでも大丈夫なクエストはあるんですか?」
「そうですねー…。っとその前に」
二人の方へとフルハは振り返ると
「私のことは気軽にフルハって呼んでくれませんか」
と頼んできた。
「…じゃあ、俺もユウトで構わない」
「私もマナでいいわ。よろしくね、フルハ」
「はい!ユウトさん・マナさん、改めましてよろしくお願い致します!」
「それでさっきの続きだけど、初めてでも大丈夫なクエストって何?」
「あ、それですか。丁度見つかったので、取りに行ってきますね」
そう言ってフルハは、一枚のクエストペーパーを手早く依頼掲示板から取って戻ってきた。
「これです!【ファウザ・モームンの討伐】です!」
「「…【ファウザ・モームン】?」」
「大きな白い毛玉みたいな身体に、可愛らしい目と鼻が付いたちょっと獰猛なモンスターです」
「でも、どうして最初にファウザ・モームンを討伐するがオススメなの?」
「ファウザ・モームンはこれといった弱点を持っていませんが、こちら側の物理や魔法の攻撃は全て効くんです。それにファウザ・モームンは結構身体が大きいので、攻撃を当てやすいというメリットがあるからです」
「「なるほど…」」
「それに今なら報酬金額が上乗せされて、依頼を達成すれば8,000リルクも報酬としてもらえるんです!報酬が上乗せされることなんか滅多にありませんし、三人いれば上手くいく確率も上がるのでいいと思うんですがどうですかね?」
二人は特にやりたいクエストのリクエストも無かったので、
「「それでいいよ」」
とすぐに了承の言葉をフルハに返した。
「じゃあ、すぐに受付に行きましょうか!」
フルハは嬉しそうな顔をしたまま、二人と共に受付に向かった。
「…いらっしゃいませ。ようこそ、冒険者ギルドへ」
受付の列に並んで三人に順番が来ると、先ほどユウトとマナを登録してくれた三白眼の受付嬢が再び丁寧に出迎えてくれた。
「こちらのクエストお願いします!」
「…クエストは【ファウザ・モームンの討伐】ですね。それではパーティメンバー皆様の冒険者カードを確認しますので、こちらに一度お渡し下さい」
受付嬢の言う通りに、三人は冒険者ライセンスを取り出して受付嬢に渡した。
「確認した所、特にランク等に問題はありませんでしたので、クエスト受理を許可します。…ではファウザ・モームンをお一人につき十体討伐した場合、それぞれに報酬として8,000リルクをお渡し致します」
「ちょっと…。えぇ!?」
何か予想外のことが起きたらしく、フルハは顔に強い驚きを見せる。
「普通ならファウザ・モームンを五体くらい倒せばいいはずなのに、何で今日は十体も倒さないといけないんですか!?」
受付嬢に食い気味になって迫るフルハを無視して、受付嬢は冷静にフルハの疑問に答える。
「お客様の言う通り本来であればファウザ・モームンを五体程討伐すれば良かったのですが、最近では数が増えてきてこのままだとファウザ・モームンが生態系を少し崩す可能性があると危惧された為、報酬を倍以上に上乗せする代わりに討伐数を上げたということです。それに三人のパーティならこの程度のクエストはあまり問題は無いと思われますが、このクエストの受理は無しということでよろしいでしょうか?」
「…うぐぐ」
しばらく複雑そうな顔をしていたフルハだったが
「…クエストは、…受理します」
とガックリした様子でクエストを受理することを了承した。
「では、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
ガックリしたフルハのことを気にすることなく、受付嬢は三人を見送って仕事に戻っていった。
「…すいません。私が報酬額ばかり気にしてたせいで…」
「気にしないで、勇…、ユウトは結構戦えるし、私も結構自信あるから」
「まぁ、そうだな。…でクエストを受けたのはいいけど、目的地まではどうやって行けばいいんだ?」
「…それならいいものがありますよ」
得意げそうな顔をすると、フルハは二人を連れて大きな白い円の中に『3』と書かれている看板の元へとやってきた。
「「ここは…?」」
「まぁ、ものは試しです。さ!白い線の内側に入って下さい!」
グイグイと背中をフルハに強く押されながら、三人は線の内側へと入って行った。
「さて行きますよ!」
「「…?」」
「Nolus!」
『Nolus』と大きくフルハが呼ぶと、線の内側からキラキラと青白い光が三人を包み込んだ。
「「…!!」」
突然と周りが青白く光始めたことに二人は少し驚いていたが
『目的地はどちらになりますか?』
と突然と女性の声が聞こえてきて、さらに二人の驚きは強くなった。
((…誰が!?))
何処から声がしたのかと少し声の主を探る二人を差し置いたまま
「野原へ!」
とフルハは目的地をNolusに伝えた。
『了承しました。野原へ転送致します』
フルハの目的地を了承した女性の声がすると、青白い光は更に強くなって三人を包み込んだ。
((…光が!))
あまりの眩しさに二人は目を瞑る。
「………さぁ!着きましたよ!!」
「「え…?」」
どういうことなのか分からないまま、二人はゆっくりと目を開ける。
「「…!!」」
すると先程まで冒険者ギルドの中にいたはずなのに、目を開けた先には雲一つない青空と暖かく優しい風が草木を揺らしている野原が一面に広がっていた。
「ふっふっふっ。驚きましたか?」
驚く二人を見て、フルハは満足そうにドヤ顔をして笑った。
「ああ…」
「…凄いけど、あの間に一体何があったの?」
「まぁ簡単に言えば、冒険者ギルドにあった転送装置を使ったんです」
「「転送装置?」」
「はい。結構使い方も簡単で場所は限定されてしまいますが、先程の音声である『Nolus』を呼んで行きたい場所を伝えれば、今みたいに誰でも簡単に遠く離れた場所に瞬間移動できるんですよ」
「「へぇ…」」
「そろそろ行きましょう。ファウザ・モームンが見つからなきゃクエスト自体が始まりませんからね」
【Nolus】がどういうものなのか二人は少し気になったが、フルハと共にファウザ・モームンを探すことにした。
(白くて…)
(大きい毛玉のような身体…)
フルハに教えてもらったファウザ・モームンの特徴を思い出しながら、二人はしばらく周りを隈なく探していると
「…!」
突然とフルハは顔つきを鋭いものに変えてその場に立ち止まった。
「フルハ?」
「こっちに来てください…!ファウザ・モームンがいます!」
「「!!」」
フルハは小声で二人を誘導すると、近くにあった茂みにそれぞれ身を隠した。
「…あれです」
フルハが指を示した先を見ると
「モー…」
モコモコと可愛らしく跳ねるファウザ・モームンが十体程数m先にいた。
「あれがファウザ・モームンか…」
「本当に可愛らしい容姿をしてるのね…」
「油断しないで下さい。今集団で襲い掛かられたら、私たちは一溜りもありません。ゆっくり近づいて先手を取りましょう」
フルハの言葉に二人は無言で頷き、ゆっくりと近づいて先手を打とうとする。
「…わっ!?」
だがその時、フルハの足元にあった少し長い草が足首に絡まり、フルハはバランスを崩して足元に落ちていた木の枝を『バキッ』と音が鳴る程に思いっきり踏んでしまった。
「モッ!?」
『バキッ』という突然の音にファウザ・モームンは驚きを見せる。
「「「…。」」」
三人は顔に焦りを見せながら、ゆっくりとファウザ・モームンがいる場所へ振り向く。
「モー!モーッ!!」
群れにいるファウザ・モームンの一体が突然と大きく叫ぶと、周りにいたファウザ・モームンもそれに感化されて大きく叫びだした。
「モー!」
「モーッ!!」
目つきを鋭くしたファウザ・モームンは、全速力で三人のいる方向へと向かってきた。
「…不味い!バレた!!」
慌てながらも三人は茂みの中から姿を現す。
「モーッ!」
(…まずは分散を!!)
素早く杖を構え、狙いをつけたフルハは
「【ファイア】ッ!!」
一番先頭にいるファウザ・モームンに炎の魔法を唱えた。
「モッ!?」
一番先頭にいたファウザ・モームンがダメージを受けたことに、群れ全体が僅かに驚きを見せる。
「…こっちだ!毛玉!!」
群れが驚きを見せた時、ユウトが素早く群れの近くまで近づき、ファウザ・モームンを上手く挑発した。
「モモーッ!!」
そのうちの二体ほどがユウトの挑発に乗り、ユウトへと向かっていく。
「モー!」
だがそれでもまだ分散させたとは言えず、八体程のファウザ・モームンはフルハを目標に一直線に向かってくる。
「…【サンダー】」
だが移動していたマナが群れの中心部に向けて小さな落雷を落とす。
「モモッ!?」
落雷を落としたのは誰かとファウザ・モームンは周りを見渡す。
「…。」
そして周りを見渡す中に少しだけニヤリと笑い、手招きをするマナの姿がファウザ・モームンの目に映った。
「モモモッ!!」
挑発されたことに怒った群れの一部が、マナに向かって分かれていった。
(目で確認できるのは五体…。キツいけどやるしかない…!!)
ユウトとマナの身を優先して、目の前の五体を倒そうとフルハは連続で魔法を唱えていく。
「…【アイス】ッ!【ウォーター】ッ!!【ウィンド】ッ!!」
一部の魔法は当たらなかったものの、ファウザ・モームンたちは着々とダメージを受けていく。
「モモッ!」
だがそれでも倒すまではいかず、ファウザ・モームンはフルハに突進攻撃を仕掛けていく。
「…!」
間一髪のところで避けるも厳しい状況は変わることなくフルハに襲い掛かろうとする。
「ハアアアアァァァァァッ!!」
必ず打ち倒すという意志の元に、フルハは戦いを続けていく。
「モー!」
一方でマナとユウトはというと
「「…。」」
とてもつまらなそうにファウザ・モームンの突進攻撃を避けていた。
「モー!モモー!!」
二人はここが異世界であるため、戦力差が大きく出ている可能性をみていた。だが二人は元々の世界では世界最強の勇者と魔王である為、いくら数がいようがファウザ・モームンはただのザコに過ぎなかった。
「モモモーッ!!」
((もういいか…))
戦力差は元いた世界とほとんど変わらないと理解した二人は、向かってきたファウザ・モームンたちを特に強力な技や魔法を使うこと無く、余裕を持ったまま全てのファウザ・モームンを返り討ちにした。
「…ハァ。……ゼェ」
こうして別の方向からファウザ・モームンの乱入があったものの、三人はファウザ・モームンをそれぞれ十体ずつ討伐することに成功した。
「…凄いですね。お二人は全く息が上がっていないなんて…」
「「ハハハ…」」
フルハは全力で戦っていたのに、自分たちは余裕のまま戦っていたことに二人は少し罪悪感をもってしまった。
「じゃあ討伐もしたし、冒険者ギルドに戻ろうか」
「…そうですね。…でももうちょっとだけこの辺りを見て回りませんか?」
「フルハ結構苦しそうだけど、本当にいいの?」
「…魔力もまだ残ってますので、…ちょっとだけ待ってもらえますか?」
フルハの息が整うのを待ち、息が整ったフルハは二人を連れて野原を再び歩き出した。
「…ここの辺りは、近づいてはいけない場所とかはあるのか?」
「まぁ、特には無いですね。ここは初心者である冒険者も安心して歩けるような場所ですから。でも一つだけ気を付けなきゃいけないことがあるんです」
「気を付けないといけないこと?」
「稀にですが、とても厄介なモンスターがこの野原に出て来ることがあるんですよ」
「…それは、どんなモンスターなの?」
「えっと、あそこに見える【キャスター・ケルベロル】ですかね」
とフルハが指を示した先には十数m先から、こちらを強く睨んでいる体長7m程の三つ首の猛獣がいた。
「Grrrrrrrrr...」
「「「…。」」」
キャスター・ケルベロルに強く睨みつけられていると理解して、フルハの顔は真っ青になる。
「「遭遇した場合は…?」」
「逃げるんですよ!早くっ!!」
二人の手を引いて、フルハはその場から全速力で逃げ出していく。
「Aaaaaaaaaaaa!!」
だがキャスター・ケルベロスは三人を逃すはずもなく、全速力で三人の元へと向かってくる。
「ハァ…。ハァッ…!!」
先程の疲れもあってか、フルハの全速力のスピードはどんどん落ちていく。
((…。))
ユウトとマナは全力を出せばキャスター・ケルベロスから逃れることは余裕ではあるが、フルハを置いていくことは出来ず、手を引かれているのもあり二人は全力を出すことが出来ずにいた。
「…あっ!」
しかし全速力で逃げていたフルハは足元を崩してしまい、二人の手を離して大きく地面に倒れこんでしまった。
「うぅ…」
「「フルハッ!!」」
フルハは何としてでも逃げようと起き上がろうとする。
「…【Tri・attack】」
だがキャスター・ケルベロスはそれよりも早く自分の頭上に炎・雷・氷の魔法を融合させた球体を瞬時に作り上げ、その球体を三人に向けて放ってきた。
「…!」
「「クッ!!」」
フルハを守るために、二人は今出来る最大の抵抗を球体に仕掛ける。
「…!」
とてつもない轟音と共に強力な攻撃を直接受けた二人は、白い煙に包まれて姿が見えなくなった。
「…ユウトさん。…マナさん」
自分のせいでユウトとマナは死んでしまったと、フルハが深い悲しみに堕ちようとした時
「…なるほど。これがキャスター・ケルベロスの一撃か」
「この程度の威力なら、問題は無いわね」
白い煙の中から余裕の表情をして、ユウトとマナが無傷のまま姿を現した。
「「!?」」
あれほどの攻撃を直接喰らって無傷でいることに、キャスター・ケルベロスとフルハは強い驚きを見せていた。
「フルハはそこで休んでいてくれ」
「後は私たちに任せて」
キャスター・ケルベロスに戦いを挑もうと二人はそれぞれ構えを取る。
「…待って下さい!流石に二人では…!!」
二人の実力は計り知れないと理解はしたが、それでも危険だとフルハは二人を引き止めようとする。
「大丈夫だ。俺たちは必ず生きてここに戻る」
「私たちをどうか信じて」
「…はい」
二人優しくも強い言葉に、フルハは二人を止めようとする気持ちと不安な気持ちがいつの間にか不思議と消えていた。
(あの二人は…、一体…)
二人が一体何者なのかとフルハは気になったものの、
「…さて。後衛は任せたぞ、魔王」
「無論だ。前線は任せるぞ、勇者」
怯えることなくキャスター・ケルベロスに立ち向かっていく二人の姿を強く信じて見守るのであった。




