第十四話 二人で挑戦を
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「「…。」」
昼食を終えた後二人は簡単な準備を済ませ、ララカに案内されて街の中を歩いていた。
「そういえば、お二人は街の風景はどこまで見られたのですか?」
「い、色々と驚くことが多かったりしてほとんど見てなくて…」
「そうなんですか。ここは本当にいい街ですよ。色々と見ておかないと損しちゃいますよ」
「…ララカさんのオススメの場所は何ですか?」
「オススメですか…。そうですねぇ…。あっ!あそこですね!!」
ララカが指を指した先には【WAMUCO】と書かれた看板が大きく飾られた十階建ての建物があった。
「あの【WAMUCO】は私がよく利用している百貨店で、おいしいスイーツや可愛い服を扱っているんです。私にはうってつけな場所になっているので毎日行きたいほどなんですよ」
「へぇ…」
「今度お二人も一緒に行ってみませんか?」
「「いいんですか?」」
「もちろんですよ!あ、あとあの建物がですね…」
こうしたララカの街の施設紹介を聞きながら歩いていると、三人は大きなビルのような建物の前にたどり着いていた。
「「ここは…」」
「ここは【冒険者ギルド】!入ってみたら、どんな場所か何となく分かると思いますよ!」
ララカの後を付いて行き、初めての自動ドアに驚きながらも二人は冒険者ギルドの中に入って行く。
「「…!!」」
そこにはユウトのように剣を腰に装備した人・弓矢を担ぐ人・武装用のグローブを身に着けた人・魔法の杖を持った人が、男女問わずに冒険者ギルドの中にはたくさんいた。
「ここってまさか、依頼掲示板に貼ってある依頼書からモンスターとかの討伐依頼とかを達成させて、その報酬を受け取る場所ですか…?」
「そうです!剣や魔法を使えるお二人にとっては最適な場所ではないかと思いましたが、どうでしょうか?」
「「まぁ、確かに…」」
「良かったです。それじゃあ突然ですがお二人だけで、冒険者ギルドへの登録と簡単な依頼をこなしてみて下さい!!」
「「えぇ!?」」
簡単なように見えてかなりキツい提案をいきなりされて、二人は顔に焦りを見せる。
「でも…、文字がまだ…!」
「文字に関しては名前入力だけですので、ほとんど問題はありません。それにお二人にはここの人たちとコミュニケーションを取って欲しいんですよ」
「「コミュニケーション…?」」
「簡単に言えば、ここの人たちとお話をしてきて欲しいのですよ。それに私にも分からないことはたくさんありますし、私はいつまでもお二人をサポートできる訳ではありませんからね」
「「う…」」
ララカのもっともな発言に二人は何も言えなくなってしまった。
「まぁ、ここにいる人は基本優しい人たちですから。万が一お二人が悪い人に絡まれてしまってもいろんな人たちが絶対に助けに来てくれますから安心してください」
「「はい…」」
「その意気です。じゃあ、すみませんが後ろを見てもらっていいですか?」
「「後ろ?」」
ララカに言われるがままに二人は後ろを振り返る。
「あそこに『13:00』って書かれてる数字が見えますよね?」
「「そうですけど…。」」
「あれが『17:00』という数字になったら私がここに迎えに来ますので、それまでに冒険を済ませてくださいね!」
「「分かりました…」」
「じゃ!頑張ってくださいねー!!」
そう言ったララカは速足で冒険者ギルドを後にしてしまった。
「行っちゃった…」
「どうやらもうやるしかなさそうだな…」
「でも冒険をするって言ったって、勇者は剣を…」
「あぁ、それなんだが…。剣は元通りになってたよ」
「え…?」
「ロキに壊されたなと剣を見てたら、柄の部分にこんなのが貼ってあったんだ」
不思議に思いながらも剣の柄に貼られていたという紙をユウトから受け取り、マナはそれに目を通した。
ユウトくんへ
やっほー!二人の純粋な愛を応援する悪戯の神さま、ロキだよーっ!!
あの戦いの際に戦意を喪失させるためにわざとユウトくんの剣を折っちゃいました!全財産叩いて、有名な鍛冶職人に打ってもらった大切な剣なのに本当にごめんね!!
お詫びと言っては何だけど、ユウトくんの剣はほぼ新品同様の状態に戻しておきました!!
これで愛するマナちゃんをいっぱい守ってあげてね!!
そして二人のプロポーズを早く僕たちに目一杯に見せてね!!
悪戯の神 ロキより
「ナニコレ…」
紙を読み終えたマナは複雑そうな表情をして顔を少し赤くした。
「とりあえず、俺の剣はロキが元通りにしたということでいいんじゃないのかな…」
「そ、そうね…」
二人は何故か気まずくなり、顔を合わせられなくなる。
(何とかしないと…)
ユウトがどうしようかと思った時、自分のそばを通ろうとする人がいることに気が付く。
(…よし)
状況改変も兼ねて、本来の目的を達成するためにユウトは自分のそばを通ろうとする人に話しかける。
「あのっ…!」
「あ…?」
しかしユウトが話しかけた人物は目元に多くの傷を負ったいかつい顔の男性だった。
「何の用だ?」
「え、えっと…」
低い声に威圧されるような感覚がユウトを襲うも、勇気を出して話を続ける。
「…冒険者ギルドへの登録がしたいんですけど、どうすればいいですか?」
「……お前、数字は読めるか?」
「…は、はい!」
「いいか…。あそこの看板の大きな白い円の中に『1』って数字が書いてあるのが見えるだろ」
「はい…」
男性が指を指した先には、確かに大きな白い円の中に『1』と書かれた看板があった。
「そしてそこの受付にいる受付嬢に『冒険者ギルドへの登録がしたい』と言えば、すぐに登録への手配をしてくれる。そしてもしも疑問に思ったことが他に出てきたならこれからは受付嬢に聞くといい。俺たち冒険者よりも詳しく丁寧に説明してくれるからな」
「…分かりました。ありがとうございます」
「おう。じゃあ冒険頑張れよ、新米ヤロー」
男性は少し優しく笑うと、手を振ってユウトの元を去って行った。
(本当にここには、優しい人が沢山いるんだな…)
見た目と威圧感で判断してしまったと、ユウトは自分が少し恥ずかしくなった。
「…魔王。さっきの話は聞いていたか?」
「え、えぇ」
「行こう。…登録しないと何も始まらないからな」
「…うん」
二人はその場を離れて冒険者ギルドに登録する為に、受付へ向かった。
「…いらっしゃいませ。ようこそ、冒険者ギルドへ」
列に並んで二人に順番が来ると、オレンジの髪色で大きなお団子ヘアーが特徴の三白眼の受付嬢は丁寧にお辞儀をして二人を迎え入れた。
「あの、冒険者ギルドに登録をしたいのですが」
「そちらにおられるお客様も冒険者ギルドへの登録をご希望でしょうか?」
「は、はい」
「では、お二人同時に登録させて頂きます」
受付嬢はそう言うと、カウンターテーブルの一部を『トントン』と指で叩いて、二人の目の前に小さなテレビ画面のようなものを映し出す。
「「!?」」
「こちらの画面に触れて、自分の名前を入力してください」
突如と現れた画面に二人は驚くも、受付嬢はこういうことに慣れているのか、二人を気にすることなく登録手順を説明する。
((えっと…))
画面に恐る恐る触れながらも、二人は先ほど覚えた自分の名前を何とか思い出しながら画面に入力していく。
「「…終わりました」」
「ありがとうございます。では確認致します」
受付嬢はカウンターテーブルの一部をもう一度『トントン』と指で叩き、二人の目の前から画面を消して、自分の目の前に移動させる。
「…男性のお客様が『Yuto Braice』様、女性のお客様が『Mana Satan』様でよろしいでしょうか?」
「「はい」」
「では、続いて顔写真を撮影します。お二人は写真を撮られた経験はございますか?」
「「あります」」
「ではまずはブレイス様から写真を撮らせて頂きます。サタン様は少し横に寄って下さい」
そういって受付嬢はマナに寄ってもらうと、画面を左にスワイプさせてカメラアプリのようなものを起動させる。
「ではそのままで目を瞑らないで下さい」
そう言って受付嬢は画面の右にある白い丸を押してユウトの顔を撮影をする。
「…では次にサタン様を撮影させて頂きます。ブレイス様は少し横に移動して下さい」
ユウトの顔写真を確認して、受付嬢はユウトに横に寄ってもらうとマナの顔写真を撮った。
「では、最後にここに手を少しの間乗せてください」
そう言うと受付嬢はカウンター下から少し大きめの黒い板を2枚ほど出した。
((…。))
言われた通り、二人は黒い板にしばらく手を乗せる。
「…もう手を放しても大丈夫ですよ。残りの作業はこちらで行いますので、そのまま少しお待ちください」
二人が黒い板から手を離した事を確認すると、受付嬢は素早く黒い板をしまって、画面の入力作業を始める。
「…えっ!?」
だが入力作業中に受付嬢は突然と驚いた顔で声を上げ、入力作業を中断してしまう。
「な、何かまずい事でもあったんですか?」
何かあったのかとユウトは慌てて受付嬢に聞いた。
「い、いえ。登録自体は問題なく進んでおります。不安にさせてしまってすみません」
二人に謝罪をすると受付嬢は、入力作業を再開させる。
「…終わりました。ではこちらが当ギルドの【冒険者カード】となります」
入力作業を終えた受付嬢は、カウンター下から二人の顔写真が入った免許書ほどの大きさのカードを2つ取り出して二人に手渡した。
「では当ギルドについて色々と簡単に説明致します。よろしいでしょうか?」
「「はい」」
「当ギルドではクエストや依頼を受理する場合は、先程手渡した【冒険者カード】とあちらの大きな白い円の中に『2』と書かれている看板の下にある依頼掲示板から特定の【クエストペーパー】を取ってここに来て下さい。そして簡単な手続きをこちらで行えば、そのクエストや依頼を行えるようになります」
「でもクエストを受ける際に、何かの制限等があったりするんですよね?」
「その通りでございます。特定のクエストを受けるには、一定以上の【冒険者ランク】が必要になります」
「「…【冒険者ランク】?」」
「簡単に言いますと、冒険者を格付けしたものです。因みにランクは上から『SSS』・『SS』・『S』・『A』・『B』・『C』・『D』・『E』・『F』の九段階となっております」
「…じゃあ特定のクエストを受けるには、そのクエストに見合ったランクが無ければ受けることは出来ないということですね」
「はい。なおお二人はまだギルドに登録されたばかりになので、現在受理出来るクエストと依頼は冒険者カードに大きく書かれた最低ランクの『F』のみとなります」
そう言われて二人は冒険者カードを確認すると確かに『F』という文字が大きく冒険者カードに書かれていた。
「もしこれからクエストを受理したいのであれば、『F』と大きく書かれたクエストペーパーからお好きなものを選んでここに持ってきてみて下さい。…では、他に質問等はございますか?」
「「いえ、大丈夫です」」
「説明は以上となります。ご利用ありがとうございました」
受付嬢から丁寧なお辞儀を受けて、二人は受付を後にして依頼掲示板へ向かった。
(…しかし。……あの二人の力は普通じゃない!!数値が異様な程に飛び抜けている…!!…あの二人は一体何者なのっ!?)
二人の異様な力にしばらく驚いたまま、受付嬢は仕事に戻っていった。
((…。))
依頼掲示板にたどり着いた二人は、受付嬢の言う通りに『F』と書かれたクエストペーパーを複数発見する。しかし、依頼の内容が全く読めずにどのクエストペーパーを取ればいいのかと深く悩んでいた。
「…仕方ない。他の人に聞いてみるか」
「そうね…。私が聞いてくるから勇者はそこで待ってて」
マナが他の人たちにどんな依頼を受ければいいのか聞きに行こうとしたその時
「…あのっ!」
後ろから二人に話しかけてくる声がした。
「「はい?」」
その声に反応して二人が後ろを振り返った時
「…私と一緒にパーティを組んでくれませんかっ!?」
と一人の可愛らしい女の子が突然と頭を下げて二人にパーティを組んで欲しいと頼み込んできた。




