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竜王殺しはヒトでなし!  作者: 五五五
第五章「竜を討つ剣士と真実に触れる娘」
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回想「ある男の嘆き」

「姉様!! しっかりしてください、ねえさまぁっ! どうして、こんな……わたしをかばって! どうしてっ!」

 男は目の前の景色を受け入れることができなかった。少女の腹部には大きな穴が空き、血まみれになっている。少女の妹は、ただ姉の傷を必死で押さえながら声をかけ続ける。

だが、流れ出る赤は、決して土を染めていくばかりだ。

「ミー……シャ? そこに、いるの? あの人も……いる?」

「いるっ! いるよ! 私も……アイツもちゃんといるからっ! だから!」

 少女の視線は定まっていない。おそらく、目が見えていないのだろう。だが、かろうじて妹の声は届いているようだった。

 男は駆け寄ろうと思った。すぐにでも、少女の体を抱え上げようと。

 だが、足が動かない。

 彼女の血に触れれば、冷たくなる肌に触れれば、無理やり全てを受け入れさせられる気がした。

「ごめん……ね? あしで……まとい、私……役に立てない、で。けっきょ、く……口、ばっか、で」

 少女の手が、何かを探すように動き回る。

 トンッと、背中を押される。

振り返ると、白髪混じりの大男が、一度だけ大きく頷いてみせた。

 男はようやく立ち尽くすのを止めた。少女の傍らに駆け寄り、すぐに手を握る。

「足手まとい……? ああ、本当に……お前は足手まといだ! それが嫌なら、こんなところで寝てんじゃねぇよ……眠るんじゃねぇ!」

「あ、あの……ね。わたし、嘘……ついてた、んだ。みんなに……ほんと、に……ごめん、な……さい……」

 男は少女の手が重たくなったのを感じた。まるで、地面に張り付こうとしているように、鉛になったように。

「なんだよ、お前……何言ってんだよ……わっかんねぇよ。お前の言うことは、いっつもわらねぇっ! なぁっ! 目を開けろよ、寝てんじゃねぇよっ!! なぁおい!」

 目を閉じた少女の顔を、男はゆっくりと覗き込む。

 ポタリと落ちる雫が一つ。それを見て始めて、男は自らの胸にこみ上げる感情を理解する。

「ステラーーーーーーーァァァァァァァッッ!!」

 咆哮はただ、虚空に響き、そして消えていった。


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