6話 女神から一転
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「助かった、ありがとう!」
「女神様!」
「本当にありがとうございます!!」
兵士達が口々に言う。
女神とかそれはさすがに言い過ぎじゃない?
すごく恥ずかしいがもちろんいやなわけではない。誰かに感謝されるのは気持ちがよかった。私の手で救った命があるという事実を実感することも悪いわけではない。むしろうれしい。
前の世界ではなかった光景が、今この世界にはある。
私のおかげで助かった人たちがここには何人もいる。
素晴らしいじゃないか。
私は人間が嫌いだったし、自分のことも嫌いだった。だがこの世界ではどちらも好きになれるような気がしてきた。
まあ、人によるけどね。
おっと、この世界に来て初めてであった人間達(変態共)を忘れてはいけない。
よい人間がいれば、それだけ悪い人間もいるのだ。ちゃんと見極めていかなければ。
なにやら後ろが騒がしい。
何かあったのではないかとアドルフは心配する。
「ちょっと後ろを見てくるから、誰か指揮を代わってくれなーー」
「アドルフ騎士団長!女神です!女神様が現れました!」
部下に隊の指揮を変わってもっらおうとした時、アドルフの声は誰かの声で遮られた。
その声の主はレックだった。
「レック、帰ってきたのか。まったくお前はいったい何を言っているんだ?やっぱりお前も相当疲れがたまっていたのか?」
「そうではありません。俺はピンピンしてます!そんなことよりも女神が現れて、次々と兵士達の傷を治しているんですよ!」
レックはことの有様を説明した。
しかしアドルフはあまり信じられなかった。無理もない。体にある全ての傷を治すだけでなく、体の状態異常までも完治させるなんて魔法はとうてい信じられるようなものではなかったからである。
この国で一番の魔術師は宮廷魔術師であるフェール・ハルプスであり、その彼でさえあまりにも大きな傷を負った者を治すことは難しい。限度がある。ましてや体の状態異常までも完治させるなんてそんなことは出来ないのだ。
「ちょっと見てくる...。誰か隊の指揮を代わってくれ。レック、案内しろ。」
「了解です!」
アドルフはレックと共にその「女神」とやらに会いに行くのであった。
あと何人いるんだろう。
もう100人はとうに越えている気がする。でも成果はあった。人一人を治したときの魂の使用量である。
その人の状態によって違うが、だいたい二人分ぐらい使う。人の魂はエネルギーが少ないと女神様が言っていたから、死にかけの人間を治すとしたら10人分かそれ以上の量の魂が必要になると思っていたが、そうでもなかった。重傷でこれだから、安心である。
「ルーナ様、次はこっちをお願いします!」
また呼ばれちゃった。まあこっちには大量のストックがあるんだし、何の問題もないけど、ちょっと忙しすぎて疲れてきたな-。
だいぶ治したはずだから、後もう少しだといいんだけど...。
でも重症者がほとんどいなくなったから、だいぶ楽になってきた。
治癒には少し精神力がいる。あんなけがを何度も見せられていたら精神が疲れてくるのは当然のことだ。
ほんと、スプラッタは苦手なんだけどね...。
グロい映画は嫌いだったし、学校の貧血検査で自分の血を見るのもあまり好きではなかった。でもなぜかこの世界では少しそれがましになっている気がした。
女神様がメンタルの方もなんかしてくれたのかも。
その可能性はあった。私があの戦場で死んだ兵士達を見てもあまりなんとも思わなかった。
まあ、人の魂を生きる糧とするソウルイーターである。人の死になれなければ仕事がつとまらないしね。
アドルフは目の前の光景に自分の目を疑った。
雪のように真っ白な肌と髪をし、赤い目を持った14,5歳ぐらいの少女が腕を失った兵士に触れる。
するとなんとことだろうか...!兵士の腕が新しく生えたのであった。血を失い青ざめていた兵士の顔も赤みをおびていった。
「何なんだ、アレは...!」
アレは女神なんてそんなものじゃない。アレは危険だ。関わってはいけないものだ!
今までの経験のすべてがアドルフに警戒をならした。
目の前にいる少女はこの世で一番の恐ろしいもの。人々の最大の畏怖の対象といっても過言ではないような強大な何かだ。
他の兵士達は少女をまるで女神のようにあがめている。自分をずっと尊敬してくれていたレックもそうであった。この中で少女の正体に気がついた者はアドルフただ一人であった。
しかしいつまでも怖じ気づいてはいられない。アドルフは勇気を出して少女に話しかけることにした。
「お初にお目にかかる。私はアドルフ・バーナー。国王騎士団長に任命されている王国軍の兵士だ。貴殿は何者か?」
なんかゴリマッチョな渋いおっさんが話しかけてきた。
........。ていうか、顔コワ!もしかして極道さん?!
こんな怖い顔をしたでかいおっさんに急に話しかけられたら、誰だってびびるはずである。
「ああ、怖がらなくても大丈夫よ!この人はこう見えてすごい優しいから!」
負傷した兵士達のもとに私を案内してくれていたエヴァか言った。
といっても本当に怖いンだけどこの人。でも誰かにすごく似ている気がする。
ああ!シ〇ワちゃんだ!間違いなくTなんとかだ!
なら優しい一面もあって当然である。子供を守っていたしね!
「こんにちは。私はルーナと言います。実はこの森で迷ってしまいまして、どうしたものかと困っていたところこの軍隊に出会い、街まで連れて行ってほしいとお願いしたのです。」
「道に迷っただと?ということは王国のものではないな。このあたりの獣道は冒険者や王国軍だけではなく村人も薬草を摘みに利用する道だ。もっと森の深いところではわからないがこのあたりで道に迷うということは少なくとも王国のものではない。どこから来た?」
しまった!こうなるなんて全く考えてなかった!
さてどうしたものか。
「団長!こいつはけが人を治してくれました。悪いやつではないはずです!」
「しかしレック。どこから来たかもわからないような者を我が国の街に入れるわけにはいかん。」
「ルーナさんならば大丈夫ですよ!まったく敵意は感じられませんでしたし。」
レックとエヴァが私の弁護をする。そういえばこの2人の他にもう1人背の高い男がいたような...。
どこいった?
アドルフとレックとエヴァの3人が話している。どうやらアドルフは私を信用していないらしい。
レックとエヴァは結構ずかずかとアドルフにものを言う。
もしかして押しに弱い人?
いやそうじゃなかった。どうやら彼はとても信頼されているようだ。
そして私が人間じゃないほかの何かだってことにこの軍の中で唯一気づいているようだった。
こういう人は対処が難しい。悪い人ではなさそうだけど私の正体に気づいていることは危険だ。
でも殺すのはちょっとなー。
どうしようかと悩んでいたら、いなくなっていたリースとかいう男が戻ってきた。
「アドルフ団長殿!周囲の警戒に当たらせていた兵士が帝国軍の兵士の姿態を森の中で見つけました。その死体が妙でして...。」
「何?どうしたんだ?」
帝国軍兵士の死体...。もしかして...。
「あの-、すみません。」
「ああ、どうした?」
私はその会話に割って入った。
「もしかしてその死体の数は5つでひとりはおなかが破裂して死んでて、他の4人は横一線に周りの木々と一緒にまとめて切られて死んでいたのではないでしょうか?」
「ああ、そうだが...どうしてそれを知っている?」
周囲の兵士達が少しざわつく。
「私がやったからですよ。」
私はそう素直に答えた。
「は?...お前がやったっていうのか...?」
レックが言った。
「ええ、私がその人達を殺しました。その人達は私のことを襲ったもので。何か問題でも?」
周囲の兵士達が私を警戒し始めたのがわかる。
「正当防衛ですよ。何かまずいことがありますか?」
「...お前はいったい何なんだ?」
ああ、めんどくさくなってきた。でも、私は王国軍の兵士達を救った。だからちゃんと対価はもらわないとね。
「人間ですよ?どっからどう見ても。エルフでもないしドワーフでもありませんよ。」
「お前はエルフとかドワーフなんてそんなものじゃない。魔族?.........いや、もっと違うものだ。もっとやばい感じがする。」
このアドルフとかいう男鋭いな。さてどうしたものか。
「安心してください。私は自分に危害与えるものをただ排除するだけ。あなた達にその気がないなら何もしませんよ。」
「ああ、わかった。それを聞いて安心した。みんな武器を下ろせ!」
せっかく助けてあげたのに武器を向けるとはね。
やっぱり荀子は正しかった!人間の本性は悪なのだ!
なんてね。
「すまないが、ここで我々と別れてはもらえないだろうか?我々はお前に敵対する気はない。だから---」
「それは出来ません。」
私はきっぱり言った。
「私はあなたの部下達の命をたくさん救いました。ということはそれに見合う対価をもらうことは当たり前のことです。」
私はそのまま続けた。
「まず、あなた達が今向かっている街までの案内。次に少しばかりのお金。私は一銭も持っていないので。せめて一ヶ月分の宿代と食費を要求します。相場はどれくらいですか?」
アドルフはしばらく考えた後、言った。
「......わかった。私の部下達の命を救ってくれたんだ。当然だな。」
「あともう一つ。」
「...何だ?」
「まったく、そんなに警戒しないでくださいよ。要求はもう一つだけ。私のことを誰にも言わないこと。」
アドルフは黙った。
「今この場にいる全員を殺すことも出来るんですよ?あなたに私が倒せますか?さあ、どうします?」
アドルフは考える。この化け物に自分ではかなうはずがないことははっきりとわかっている。
「わかった。お前のことは誰にも言わない。全員聞いたか?!わかったな!」
「まあ、私のことが少しでも噂になったら王宮に攻め入りますからそのつもりで。」
「.......!ああ、肝に命じておく...。だが一つお前に聞きたいことがある。」
「何です?」
アドルフは一呼吸置いてから言った。
「お前は人に危害を加えるつもりは本当にないんだな?」
「私に危害を加えない限り私はそんなことはしません。これは本当です。女神に誓ってもいいですよ?」
「フッ...女神か...。」
「どうしました?」
アドルフは少し微笑むと言った。
「お前が女神じゃなくて安心したよ。お前は女神と言うよりは悪魔に近い...。」
「......褒め言葉として受け取っておきます。」
いろいろあったが、私は街まで案内してもらえることになった。
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