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創作雑感 Revised 1  作者: 宮沢弘
番外編
38/38

φ−4: ディストピアとはなにか?

 「ディストピア」という言葉が、「ユートピア」という言葉をもととして作られたものであることは、説明する必要はないだろうと思う。だが、その上で、では「ディストピア」とはどういう意味、あるいは世界観であるのかを考えてみたい。


 まず、「ユートピア」だが、トマス・モアによる「ユートピア」においては、二つの綴りが使い分けられている。一つは、“U-topia”であり、もう一つは“EU-topia”だ(ハイフンは私による)。“U-topia”は、「存在しない場所」という意味であり、“EU-topia”は、おおむね「理想の場所」という意味でかまわない。非常におおまかな話ではあるが、両方を含んだ「ユートピア」とは「理想ではあるが、存在しない場所」、あるいは「理想ではあるが、存在しえない場所」という意味だと思えば、すくなくとも間違ってはいないだろう。トマス・モアは、“U-topia”と“EU-topia”の使い分けによって、その意図を示そうとしたのかもしれない。現代であれば、“U/EU-topia”であるとか、“E/U-topia”という書き方でそれを示すという方法もあるだろう。


 では、それに対して「ディストピア」とはどういう意味なのか。“dis-”には、「批判する」とか「侮辱する」というような意味もあるが、ここでは否定の意味であると考えよう。そうするとどうなるか。

 単純に書くなら、“not E/U-topia”と書ける。では、この”not E/U-topia”とはどういう意味なのか。「理想郷ではない場所」であり、同時に「存在しない場所ではない場所」という意味になる。


 ここで、「われら」、「すばらしい新世界」、「1984年」を振り返ってみよう。そもそも的に考えるなら、「1984年」ははずしてもかまわないだろうと思うが。

 いずれも、著者の目の前で起こりつつあったことに対する風刺であった。

 それを踏まえて「ディストピア」とはどういう意味なのかを考えてみよう。

 つまり、「ディストピア」とは「存在する場所」であり、「現実」のことだ。基本に風刺があるのだから、幾分なりとも歪められた「現実」ではあるが。

 これは、わかるように、たんにいわゆる「反ユートピア」という意味ではない。仮にいわゆる「反ユートピア」の要素を持っていることによって、ある作品の世界を「ディストピア」と呼ぶのは、誤用であり、あるいは濫用であるに過ぎない。

 「ディストピア」とは、結局、現実への風刺でなければならないのだ。あるいは、現実への風刺でしかないものでなければならないのだ。すくなくとも、言葉としてはそういう意味だ。


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