プロローグ4
ゆらりゆられながら、遠ざかる灯りと黒塗りの空間を他所に。
脇に掠める指の感覚をくすぐったく思い、だけども身をよじるのも憚れる奇妙な時間を耐え忍ぶ。
代り映えしなくなった背景には次第に興味を引かれなくなり、結果として両脇を支える女の子達を窺ってしまう。
暗闇に眩しいほどの白を纏う少女達。
その白は薄布であり、テルマエあるいはロマエが頭に踊る。
肉付きのいい体は四肢以外でも強く主張していて。
最早、誰なのかという疑問すらもどうでもよくなってしまうほど、擦れる腕や脚や腰やが気になって仕方がなかった。
1人で悶々と煩悩を抑え込もうと若さの衝動と格闘していると、パッ! と景色に色が射す。
一面の青と白。
少女達の服が溶けてしまったかのように感じ、咄嗟に肌へ視線を奪われるのはきっと、煩悩のせいではなかったはずだ。
そんな言い訳を思い浮かべる間に、ドサッと膝が地面を叩く。
「対象の引き上げ成功! コレで加点がもらえるわね!」
「そうだね。でも次からは私以外が担当できるといいな・・・」
「なんでよ⁉ 私のことが嫌いなの⁉」
「ちがう。面倒なだけ」
そう! ならいいわ! と片方の少女が髪を大きくたなびかせる。
釣られて、上に固定されていた首が水平を取り戻すと。
奥にはどこか見慣れたような風景から、見慣れるはずもない爆弾が2つ。
「ゴメンなさいね! 急にお願いしちゃって!」
「いえ! 私達は当然のことをしただけですから!」
「次は他の人で・・・お願いします」
駆けつけてきた女性は、明らかに両隣で立つ少女らよりも成熟していて。
話し方からも上下関係にあるのが察せられた。
ただ漠然と情報を受け入れ、ただ漫然と目を開いていただけなのだが――果たしてこの光景は見ていてもいいのか、不意に胸に去来する疑惑。
なぜなら、この女性も布切れ1枚を纏ったような格好をしていて、尚且つ胸に爆弾を2つ搭載。さらには、つい先ほどまでそれを遊ばれておられたのだから、男が目にしていいものかどうか。
今の時代、その手のことには異常に厳しい。
見ただけでセクハラだとか、だったらそんな恰好をするなよ‼ と言っても無駄なんだ。
そのことを思い出して固まってしまう。
そのせいで見た目がなにも変わらず、弁明の余地もない状況となってしまうことに気付くのは、先に話しかけられてからだった。
「大丈夫だった?」
前屈みになったことで一際強調された胸元を持つ女性に、親し気な雰囲気で話しかけられる。
あまりにもない経験に、声の出し方すら忘れてしまいそうになるものの、どうにか掠れ声を喉奥から絞り出す。
「あ、ダイ、ジョブ――ッス・・・・・・」
不自然極まりない返答。
しかし頑張ったと褒めて欲しい。
そんな男子学生の心が、羞恥の色に染まり始めた頃。
「良かった! 安心したわあ」
上品な花のように綻ぶ顔に息を呑むほど引き寄せられた。
人生にはこんなことがあってもいいのかと、感銘を受けるくらいには感動していた。
それほどの美人さんだった。
けれど人生という単語が思い出させる。
今ってどういう扱いなんだろう?
そういえば、トラックに轢かれたんじゃなかったっけ―――・・・と。




