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あくまでも神つき  作者: 枚方かんじ
プロローグ
3/27

プロローグ3

 落ちる・・・。

 落ちる――・・・。

 落ちる――――ッ⁉⁉


 なにが起こったのか脳が処理しきれない内に、気付けば周囲は真っ暗闇(まっくらやみ)

 空も地面もなくなって、ただただ自由落下する。

 悪夢だったら地面に激突する直前で目を覚ませるはずだけど、生憎と地面なんてものは見えそうもない。

 手を広げても、足を延ばしても、空気抵抗でどうにかなる感じもしない。

 お腹の辺りに感じる不快感。内臓が押し上げられるようなあの感覚だけが、生を実感させた。


 いや待て。

 このタイプの悪夢も見たことがあっただろう。

 そうだ。どうせ途中で夢であることを自覚して、自発的に目を覚ませる――なんて、楽観的に諦めてみたところで。


『おい! しっかりしろ‼ このままじゃ地獄行きだぞ⁉⁉』


 声が響く。

 聞こえるというよりは、耳鳴りみたいに反響する。


「えっ⁉ 誰が⁉ どこにッ⁉」

『自己紹介なんか後だ‼ 身体を浮かせろ‼』

「身体を浮かせるって―――⁉⁉」


 そんなことを言われましてもっ⁉⁉

 心の中で叫ぶ。

 人間に羽はないし、俺はスーパーな人じゃない。

 浮けと言われて浮き上がることはできないし、うけと言われたら先に受けを連想するぐらいの小市民だ。

 せめてもの抵抗に手足をバタつかせては見るものの、


『なにやってんだよ⁉ まじめにやれ‼‼』


 またしても怒られた。

 そして、この瞬間に気付いた。

 この声はさっきの・・・・・・。


 もう1度、周囲を見回してみるも、やっぱり誰も居ない。

 ゾッとする状況なのだが、それどころでもない!


「まじめにやってこれなんだよ‼ 受けって言われてもそんな機能はないんだよ‼ せめて周りの空気くらい、用意してから浮けって言えよ‼‼」


 仕方がないから怒鳴り返す。

 それぐらいしか、できることがなかったから。

 こうしろ! って言うんなら、もっと詳細に説明して欲しい。

 特に普通はできそうにないことを言うなら尚のこと‼


『なんだよ! 周りの空気って‼ そんなこと――って⁉ まずいッ‼‼』


 水掛け論が始まるかと思いきや、声が緊張感を込めて固まる。

 不思議となにを見てそう言ったのかが直ぐにわかった。


 自動で動いた視線の先。

 赤か、黄色か、オレンジ。

 (あか)りだ。


 周囲が真っ暗なせいか、凄く目を引く。

 だけど、おかしなことを理解する。

 俺はその灯りに向かって落ちていってる・・・。

 つまり、地面が近付いてるってこと。


「確かにこれはまずいかも‼‼」


 アニメよろしく、空中をかき分けての平泳ぎを披露(ひろう)してみる。

 そんなことしても価値なんてない。

 知っていたけど、意味はあったようで。


 グンッッ‼‼‼‼ と脇の下に力が掛かる。

 衝撃で肩が外れるかと思ったけど、意外と頑丈だったのか、痛みもない。


「ちょっと‼ 暴れないでよっ‼」

「回収完了。引き上げに移行」


 見れば、両脇を抱える女の子の姿が。

 継続していた空中泳法が恥ずかしさで中断される。

 情けないところを見られたという感情で一杯になりながら、ありのままを受け入れるしかなくて。

 しばらくはクレーンゲームの景品の気持ちを味わった。

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