第五十八話
夜の山道、そこに一つの影が動いていた。
それは 、数日前まで寝ていたシグルドだ。
『シグルドさん、本当によかったんですか?』
「なんのことだ?」
『レイナさんのことですよ。黙って出てきてよかったんですか?』
「あぁ、問題ない」
『絶対問題アリです!レイナさんが朝起きてシグルドさんがいないのがわかったらどうなると思いますか?』
「......喜び、その勢いあまってタンスの角に小指をぶつけてうずくまる」
『......なんででしょう。喜ぶのは想像できませんが、タンスの角に小指をぶつけてうずくまるのはなんとなく想像できます......って、じゃなくて!間違いなく悲しむでしょう!』
「大丈夫だ。あいつは強い。強くなった。俺がいたんじゃあいつの成長の妨げになる」
『それでも今の彼女にはあなたが必要でしょう』
クサナギの言葉にシグルドは足を止める。
「クサナギ、勘違いするなよ」
『なにがです?』
「俺があいつから離れたのには明確な理由がある。お前ならわかってるだろ?」
『......ロイさんと本気で戦うため、ですよね?』
「まぁ、そんなとこだ」
シグルドは軽くほほえみ、空を見上げた。
「きれいな満月だ」
『.....ですね』
「そういやお前、どうやってみてんの?目があるわけでもないし、刀身が目かと思ってたが鞘に納まってるし」
シグルドは腰にさしたクサナギを見下ろしながら言った。
『細かいことをきにしちゃダメですよ』
「まぁいい。さてと、これからどうしますかね」
『そうですね、この辺の街を適当に回ります?』
「うーん、とりあえずそうするか。暇だし。レイナに追いかけてこられても面倒だし」
『よーし!張りきっていきましょう!』
「......山道には杖が必要だな」
『ま、待ってください!僕を杖がわりにしないでください!秘刀ですよ!秘刀!......あ、マジすみませんでした!謝るんで許してください!』
夜の山道にクサナギの声が虚しく響いた。
ーーー翌朝ーーー
タンスの角に小指をぶつけてうずくまるレイナがいたとか、いないとか......




