68 憶測
〇まえの回のあらすじです。
『ユノとフローラの会話。ながいね。ごめんね』
ユノの啖呵を聞き終えて、フローラはしばし黙考した。
なにも言わないかのじょに対して、ユノもまた、これ以上は開陳することもなく、ただただ反応を待つ。
「ことがうまくはこぶのなら――」
洞の部屋のなかで、ゆっくりとフローラが姿勢を変えた。とはいっても、床几にもたれさせていたからだを起こしただけだが。
「あんたはべつに、セレンを弑するってことはしないのね」
「うまくいけばね」
ユノはフローラに言いふくめた。内心では「うまくいくことはない」と思いながら。
おそらくそれは、フローラもおなじ気持ちだろう。セレンは現時点では「金の竜を人間界にかえさない」としているが、自分のねらいがはずれたとなれば、どうするのか。
「ユノ」
すこしのあいだ目を閉じて、フローラがたしかめるように言った。
「あなたがわたしに聞かせたいことってのは、それだけね?」
「うん」
「わたしがこれを里の連中にでもバラしたら、せっかくの妙案が頓挫するとか思わないわけ」
「きみは言わないよ」
ユノは確信をもって、どこかしら警句めいたフローラの憂慮を一蹴した。
「黙っている、ってことはあったとしてもね。セレンさんに対してはもちろん、……ボクに対しても」
かすかに聞こえた「ふん」という鼻を鳴らす音は、同意と取れた。
「これだけは親切心で言っておくけど、」
ひくい肘かけにほおづえをつきなおして、ふてくされたカオでフローラはひとさし指を立てた。
「仮にセレンが崩御したら、あなただってどうなるか知れないわよ。あなたを呼んだのはセレンだもの。かのじょとのくびきが消えたとたんに、どことも知れない宇宙の果てにほっぽり出されるってこともあるかもなんだからね」
「そう……」
リスクは承知のうえだった。それでもユノは、
(ボクの憶測が当たっているのなら――)
この『妖精の世界』という領域を、未来永劫、人間とかかわりのないように切りはなしてしまいたかった。
『神』とまつりあげられている存在とともに。




