58 ようすを見る
〇まえの回のあらすじです。
『ユノたちが、たかい木のうえに避難する』
『ブウルるウウ……』
突進の衝撃でできた荒れ地で、大イノシシは首を振るう。
林木へのずつき攻撃時にダメージを受けたのか。
『ブる……』
きょろきょろ。
イノシシはなにかをさがすように、あたりを見まわしている。
「チャーンス。なんだけど」
イノシシのようすを、ほかの木のたかいところから観察して、フローラが言った。
「なにをしているのかしら?」
「んっと……」
ユノは木の枝にしゃがんで、まごまごしているモンスターをのぞきこんだ。
「子どもたちをさがしてるんじゃないかな」
「なーる」
ほど。
を省略して、フローラは左手をおさらにして右手を打った。
(そういえば、)
ハルモニアもいなくなっていることにユノは気づく。
黒い大イノシシ、【キングボア】のうろついているあたりには、仔イノシシたちはおろか、金色の竜のすがたもない。
フローラが「はんっ」と肩をゆらす。
「おおかた、いきおいあまってペシャンコにしちゃったんじゃないの」
「ハルモニアもろとも?」
「あんですって?」
とフローラが殺気立ったとき、
「ぎゃあ~」
抗議するようなガラガラ声が、ふたりのすぐうしろからあがる。