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・前回のあらすじです。
『ユノが【パペルの塔】にいくために、まちでやすむことにする』
〇
つぎの日の朝に、ユノはバーライルの町を出た。パペルの塔をのぞむ山まで、街道をひとりであるいていく。
魔王なきあと、人間の世界にとどまったモンスターたちが、くさむらや廃墟となった小屋のかげから飛びだしてきた。だが、もはやたいていの魔物はユノの敵ではない。
この世界に来てすぐのころに、【冒険者ギルド】から支給され、いちどだけ代がえした【バングル】は、装着者の【つよさ】を、輪っかの中心にはめた【石】にうつしだす。
ユノの左手首に輝く腕輪の数字は、もはや三桁を刻み、冒険者として上位を誇ってもいい腕まえに達していた。
街道ぞいの草原から、牙をむいて襲いかかってくる毒ヘビの魔物――【ナーガ】を、鋼鉄の長剣、ブロード・ソードでユノは斬りはらう。紫のウロコでおおわれた、全長が百七十センチはあろう胴体が、まっぷたつにわかれた。
四匹の群れでユノに挑みかかってきた、コブラに似たかたちのヘビたちは、反撃のひまもなく、ひるがえる一閃一閃に、黄色い体液を散らして、なすすべもなくさばかれていく。
戦闘を終えた草地に、倒した怪物とおなじ数の【魔石】がころがる。死した肉体は、あっというまもなく灰になり、周辺の、澄んだ空気にとけこんだ。
ユノは剣を腰の鞘におさめた。かがみこんで、戦利品をひろいあつめる。肩にかけたかばんに、つめこんでいく。
「そろそろどこかで換金するか……――つかわないとな」
かばんからは、色とりどりの宝石があふれんばかりになっていた。すべて、旅の道中で得た魔物たちの『核』だ。
念をこめれば、【魔法使い】や【魔族】でなくても、おのおのの石に固有の能力を発揮する便利なアイテム・【魔石】だが、ユノはそれを、気軽につかうことに抵抗があった。
旅の資金を得るために、【ギルド】で換金することもあるが、こちらもひつよう以上に換えたためしがない。金に興味がないのではなく、また、ジェムをコレクションしたいのでもない。ユノの個人的な都合であり、あまりゆずりたくない類の、こだわりでもあった。
(……あの山を越えたら、たしか、荒野に出るんだよな)
かつては三人ですすんだ不毛の大地を、峻厳な連山の向うに想いながら、ユノは知らずしらずのうちに、じぶんの脚にちからをこめた。