30 おむつ
〇前回のあらすじです。
『【パンドラ】がユノとフローラの仲裁にはいる』
「ハル」
フローラはハルモニアの瞳をのぞきこんだ。しっかりと両手で彼女を抱っこして。青い双眸で。
「あなたがそーゆー媚びた顔するってことは、てめえがやらかしたってわけね」
竜はとたんに「けえっ!」と姉からそっぽをむく。つばのかわりに火を吐きながら。
「ねえフローラ。【ハルモニア】って……」
「ええ。そうよ。この娘が私のいもうとのハルモニア。すんごいかわいーでしょー。あげないわよ」
ぎゅうっと抱きしめてふてくされた仏頂面をする小竜にフローラは頬ずりする。
ユノはうらぎられた気持ちでわめいた。……うらぎるもなにも、ユノが勝手に思い込んでいたことなのだが。
「そんな……ッ。じゃあッ、これが【神さま】なの!? こんな……だって。おむつ穿いてるんだよ!?」
「そりゃあ神さまだっておむつくらいするわよ。ユノさあ。あんた『神は下着つけない』とかへんな願望持ってんじゃないでしょうね」
「うわあ……。ユノさん。それは気もちわるすぎるよ」
白い目をむけてくるフローラとパンドラに、ユノは頭をかかえてしゃにむに地団駄を踏みたくなった。ボクの感覚がおかしいのか?
「だって……。『パンツ』と『おむつ』はちがうじゃないか」
「はいはい。そーね。わかった。わかってる」
ぜったいに誤解したままのわけ知り顔でユノをなだめつつ、フローラは強引にこの話題を打ち切った。ユノは不承不承、彼女の調子に合わせる。